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遠い、福島県の漁業復興 : 水揚げ震災前の2割以下

社会

漁港などハード面の復興は進んだが、原発事故による風評被害の影響は続き、福島県の漁業の完全復活にはまだ遠い。

茨城県から福島県の沿岸部は親潮と黒潮がぶつかり合う絶好の漁場だ。この海域で取れた水産物は、古い地名の常陸国・磐城国にちなんで「常磐もの」と呼ばれ、プロの料理人や築地市場の目利きたちからも一目置かれていた。しかし、東日本大震災の津波被害で漁港は軒並み破壊され、さらに、福島県域の漁業は原発事故の風評被害によって深刻な打撃を受けた。

福島県海面漁業漁獲高統計によると、震災前の2010年に3万8600トンだった水揚げは、2011年に激減。その後、漁港などハード面の復興が進んでも水揚げ量は足踏みが続き、2018年は約5900トンと震災前の約15%の水準にとどまっている。金額ベースでも、2010年の109億5900万円に対して、18年は7億9600万円と7.3%水準だ。(2019年の集計値は20年3月頃公表される予定)

原発事故後、福島県の漁業者は1年ほど漁を全面自粛。2012年6月に「試験操業」として漁を再開した。第1原発から半径10キロ圏内の海域では今も、操業自粛を継続、それ以外の海域での漁獲に関しては、県の放射性物質検査に加えて、漁協独自の検査も実施し、安全性確保に最大限の努力をしている。県の検査結果は4年以上にわたって基準値超えはゼロだが、風評被害は根強く、本格的な漁業の復活には至っていない。

バナー画像:時事

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