偽りの関税撤廃、米の自由化率は実質6割どまり-日米貿易協定
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実は米国の9割超という自由化率は、今回の協定で関税撤廃に至っていない日本製乗用車などを入れた数値となる。日本の対米輸出の35%を占める自動車・同部品の分を差し引けば、米国の関税撤廃率は実質的に「6割前後」のもよう。一方、日本は牛・豚肉など農産品の関税を撤廃した結果、撤廃率84%と大幅な譲歩が目立つ。
安倍晋三首相は8月と9月、トランプ米大統領と会談。日米貿易協定について基本合意に達したが、日本側が求めていた米国の自動車本体の関税撤廃は見送られることが決まっていた。
米通商代表部(USTR)は今回の協定で「自動車分野の関税は撤廃しない」と明言。しかし、協定には車関税の撤廃の可能性について「さらなる交渉」に委ねる方針を記した。日本側はそれを根拠として車関税分を撤廃率に加算した結果、米国が離脱する前の環太平洋経済連携協定(TPP)の「米国100%、日本95%」に準じる内容となった。
なぜ、このようなかさ上げしたデータが出てきたのか―。焦点となったのは、日米を含む160カ国以上が加盟する世界貿易機関(WTO)のルール。2国間や少数国間の貿易協定に「実質的に全ての貿易」の関税撤廃を求めており、85~90%の撤廃が必要とされる。
日米の交渉担当者はトランプ米大統領が求めた「早期合意」を実現するため、車などの関税撤廃を棚上げしたが、その結果、WTOルールに違反する恐れも濃厚となった。ルール違反を免れるため、肝となる車関税については「撤廃に向けたさらなる交渉」を開く可能性を記して「撤廃対象」に紛れ込ませ、自由化率をかさ上げしたようだ。
しかし、このようなかさ上げ行為に対しては、野党から「国民に対する欺きだ」との批判が出ている。通商専門家も、こうした手法が横行すれば、将来、日本が中国やインドなどと貿易協定を結ぶ際に同様に「偽りの自由化率」を求められ、「将来に禍根を残す」と警告している。
写真:PIXTA