
55万人を「即位の礼」恩赦:罰金刑で資格停止者への「復権」が大半
社会 政治・外交
政府は10月22日の「即位礼正殿の儀」に合わせ、約55万人に恩赦を実施する。対象者の大半は、罰金刑を受け、資格を制限された人への「復権」だ。
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恩赦は裁判で下された刑罰を、政府が消滅・軽減させたり、有罪で停止された公民権(選挙権や被選挙権)などの資格を回復させたりする制度。日本での恩赦は奈良時代から始まったと言われ、伝統的に国、皇室の慶弔に際して実施されてきた。今回は、1993年の皇太子(現天皇陛下)ご結婚の時以来、26年ぶりとなる。
戦後に実施された主な恩赦
時期 | 事由 | 対象人数 |
---|---|---|
1945年10月 | 第二次世界大戦終戦 | 424,425 |
1946年11月 | 日本国憲法公布 | 169,874 |
1952年4月 | サンフランシスコ講和条約発効 | 1,006,628 |
1956年4月 | 国連加盟 | 71,782 |
1959年4月 | 皇太子さま(現上皇)ご結婚 | 48,738 |
1968年11月 | 明治100年記念 | 152,818 |
1972年5月 | 沖縄本土復帰 | 34,503 |
1989年2月 | 昭和天皇大喪の礼 | 10,170,000 |
1990年11月 | 天皇陛下(現上皇)即位の礼 | 2,500,000 |
1993年6月 | 皇太子さま(現天皇)ご結婚 | 1,277 |
2019年10月 | 天皇陛下即位の礼 | 550,000 |
1997年版「犯罪白書」をなど基に編集部作成 / 昭和天皇大喪の礼、現上皇即位の礼、天皇陛下即位の礼に際しての恩赦の人数は概数
今回の恩赦は、交通違反など比較的軽微な事件で罰金刑となり、確定から3年が経過し、再犯していない人に対する復権が行われる。対象者の規模は、戦後最大だった1989年2月の「昭和天皇大喪の礼」約1017万人や、90年11月の「天皇陛下(現上皇さま)即位の礼」約250万人から比べると縮小された。
しかし、恩赦制度は、司法(刑事裁判)で確定した判断を、政府(行政)が変更することになり、三権分立に反するという意見もある。また、平成の恩赦2件には公職選挙法の違反者が相当数含まれており、「選挙違反者の救済」「政治恩赦」などと批判された。今回の恩赦でも選挙違反者が復権対象になっている。
恩赦は内閣が決定し、天皇が憲法第7条6項の「恩赦の認証」規定で国事行為として行う。菅官房長官は、「即位の礼の慶事に当たり、罪を犯した者の改善更生の意欲を高め、社会復帰を促進するため実施した」と述べた。時事通信が9月に実施した世論調査では、今回の恩赦に関し、「反対」が54.2%で、「賛成」20.5%を大きく上回った。
バナー写真 : PIXTA