
貿易紛争はWTOで解決、日本の勝率9割-韓国問題では守勢も
経済・ビジネス 政治・外交
貿易紛争の解決機能を持つ世界貿易機関(WTO)の発足から約四半世紀。かつては貿易摩擦でたたかれてきた日本は、紛争があればWTO訴訟に持ち込み、ルールで白黒を付けることに力を入れている。
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WTOの紛争解決手続きは裁判に似た仕組み。他国の貿易制度に不満がある国はWTOに提訴し、相手国との2国間協議を登録する。60日以内に解決しなければ、一審に相当する「紛争処理小委員会(パネル)」が設置される。パネルの判断に不服があれば、どちらの国も二審の「上級委員会」に上訴できる。
かつて「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と評された日本は、巨額の貿易黒字を記録。1980年代には自動車や鉄鋼、半導体などの分野で米国と摩擦が絶えず、89~90年には日米構造協議が行われて、輸入を阻む日本の社会構造にメスが入った。しかし、95年のWTO発足で紛争解決の場ができたことから、日本も活用に乗り出し、これまでに26件提訴。訴訟が終わった21件について日本は「19勝」と主張、9割と高い勝率をアピールしている。
日本がWTOに提訴した案件
「勝訴」
| 合計 19件 (1件) (3件) (15件) |
事実上「敗訴」 | 合計 2件 |
係争中の案件 | 合計 5件 |
出典:経済産業省
勝率の高さは「すぐに勝てそうな紛争しか提訴していない」(貿易制度の専門家)ことも背景にあるようだ。米トランプ政権が2018年、「安全保障上の脅威」を理由に発動した鉄鋼・アルミニウム追加関税では、欧州連合(EU)やカナダなどが相次ぎ提訴したが、日本は見送った。
一方、敗訴は「韓国の日本産水産物輸入規制」(19年4月に上級委が一審判断を破棄)など2件。さらに、逆に日本が訴えられる可能性のある案件も急浮上している。日本は元徴用工問題で関係が悪化した韓国に、半導体製造に必要な材料の輸出規制を強化したが、韓国はWTO提訴を検討している。
バナー写真:報道陣の質問に答える世耕弘成経済産業相(時事通信)