日本の伝統文様
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✻釘抜き(くぎぬき)
「釘を抜く」→「苦を抜く」「九城を抜く=九つの城を攻め落とす」の語呂合わせから、武士が好んだ縁起紋。立身出世の意味合いを持ち、家紋にも広く使われている。ところで、正方形の中に小さな正方形を配した文様がなぜ「釘抜」なのか? 昔は釘を打つ際には、座金を敷いていた。釘を抜く時には、座金に梃子(てこ)を差し込むと簡単に抜けた。釘抜文様は、実は「釘の座金」を連続文様にデザインしたものだ。
✻麻の葉
麻の葉の形を文様化。麻は生命力が強く、手を掛けなくてもまっすぐに大きく育つことから、成長の祈りをこめて赤ちゃんや子どもの着物に多用された。
✻工字繋ぎ(こうじつなぎ)
「工」の文字を組み合わせを繰り返す文様。基本のパターンを繰り返す「繋ぎ」の文様は、途絶えることがない「不断長久」を意味する縁起の良い柄として着物の地紋などにも使われることが多い。
✻鱗(うろこ)
三角形を交互に組み合わせた連続文様。蛇の鱗とも魚の鱗とも言われ諸説あるが、身を守る「魔よけ」「厄よけ」として武家の装束などにも用いられた。
✻矢羽根 / 矢がすり
矢の上部に付けるタカやワシなどの鳥の羽根を意匠化したもの。「的を射る」矢は古くから、縁起の良い柄として使われてきた。江戸時代になると、射た矢は戻ってこないことから、嫁入りの際に矢羽根柄の着物を持たせると「出戻らない」と縁起を担いだ。
1970年代後半に大ヒットした少女漫画「はいからさんが通る」の主人公・紅緒が女学生時代に着ていたことから、矢羽根の着物に海老茶色の袴(はかま)は現代でも卒業式の人気スタイルとなっている。
✻鮫小紋
細かい点で円弧を重ねた模様が、鮫の肌に似ていることから名付けられた。8代将軍の徳川吉宗の生家である紀州徳川家が用いた柄。
✻青海波(せいがいは)
大海原の波を扇形にパターン化。雅楽「青海波」が名前の由来とされ、青海波を舞う人はこの文様の衣装を身に付ける。「源氏物語」には、光源氏が青海波を舞う場面が描かれている。
✻七宝(しっぽう)
円の円周を4分の1ずつ重ねることで、中央部は光る星のように、重なりの部分は花弁のように見える。子孫の繁栄、縁、円満を想起させる縁起柄。
✻亀甲
長寿の象徴である亀の甲羅の形(六角形)に由来する縁起柄。単純に六角形をつなげたものから発展して、六角形を二重にした「子持ち亀甲」、六角形の中に花をあしらった「亀甲花菱」などバリエーションが豊富。
✻毘沙門亀甲 / 三盛亀甲
亀甲(六角形)3つを一組にした毘沙門天の甲冑(かっちゅう)の文様に因んで名付けられた。三盛(みつもり)亀甲とも呼ばれる。陰影や模様を付すことで立体画像のようにも見える。
✻市松
色違いの正方形を交互に並べた柄。西欧のギンガムチェックに類似。織柄として古代から存在していたが、江戸中期の歌舞伎俳優の佐野川市松がこの文様の袴を愛用したことから「市松」の名がついた。いまや、『鬼滅の刃』主人公の竈門炭治郎(かまど・たんじろう)が着ている羽織の柄として子どもにも大人気。東京五輪・パラリンピックのエンブレムは、市松文様をベースにデザインされた。
✻立湧(たちわき/たてわき)
蒸気がゆらゆらと立ち上る様子を2本の線で表している。平安時代には位の高い人の着物の柄として多用された。膨らんだ部分にあしらう文様によって、「雲立湧」「笹立湧」などのバリエーションがある。
✻唐草
シルクロード経由で日本に伝来。蔓(つる)が四方に延びていく様子から、長寿や繁栄の意味合いのある縁起柄だが、なぜか「泥棒は盗んだものを唐草文様の風呂敷に包んで逃げる」イメージが定着している。どの家に盗みに入っても、必ず唐草の風呂敷があったというほどポピュラーな柄だったことの証し。
✻鹿の子(かのこ)
小鹿の背中のまだら模様に似ていることに由来する。絞り染めの技法で作られる文様で、非常に手が掛かるため、総鹿の子絞りの着物はぜいたく品とされている。
✻菱(ひし)
菱は2方向の平行線が交わって生まれる幾何学文様で、縄文時代の土器にも使われるなど、自然発生的に生じた柄と考えられている。4つの菱型を組み合わせた「割菱」、菱型に変形させた花で構成される「花菱」などバリエーション豊富。
✻豆絞り
江戸時代に流行した手ぬぐいの定番柄。丈夫で健康の「まめ」と「豆」を掛けて無病息災の思いを込めた。現在の豆絞りはほとんどが型染めやプリントのため規則的な丸が配列されているが、かつてはその名の通り絞り染めだったため、不規則な水玉だった。
オリジナル記事は2019年6月17日公開、2020年1月24日、2022年5月23日、2023年11月18日更新)