3年ぶり貿易赤字、対中輸出が減速か
経済・ビジネス 国際・海外
米国との貿易戦争に巻き込まれた中国経済の減速が日本にも響いてきた。2018年度の貿易収支は対アジア向けの輸出が落ち込み、3年ぶりの赤字となった。
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財務省が4月中旬に発表した18年度の貿易統計(速報値、通関ベース)によると、輸出から輸入を差し引いた貿易収支は1兆5854億円の赤字だった。中国経済の減速で、アジア向け輸出の伸びが鈍化したほか、原油高により輸入額が増加。年度ベースで3年ぶりの赤字となった。
中国経済は昨年夏以降の米国との「貿易戦争」により、減速傾向が強まった。アジア地域の生産、消費の中心である中国の不調は周辺諸国に波及。直近3月の貿易統計を見ると、日本からアジア諸国(中国含む)への輸出額は前年同月比5.5%落ち込み、昨年11月以降5カ月連続のマイナスとなった。
輸出依存度が高い日本経済にとって、この影響は無視できない。経済産業省は4月下旬、3月の鉱工業生産の基調判断を「このところ弱含み」とし、前月の「足踏みをしている」から下方修正した。
今後の貿易環境を左右するのは、トランプ米政権の政策判断となりそうだ。米国と中国は摩擦解消に向けた通商協議を昨年から続けている。だが、協議が最終局面で難航し、米国は中国製品に対する追加関税率の引き上げに踏み切った。そもそも米中は物品の貿易だけではなく、将来のデジタル経済圏形成でも覇権を争う立場にあり、「最終的に折り合うのは極めて難しい」(米経済団体幹部)。
こうした中、日本は4月、米国と貿易協定の締結に向けた交渉を開始した。日本政府は「良い条件で交渉に入った」と強調しているが、米国には、日本車の対米輸出数量制限のほか、円安ドル高をけん制する「為替条項」の導入といった強硬措置を求める声が根強い。来年秋の再選を目指すトランプ大統領が強硬姿勢をあらわにすれば、「最終的に対米輸出環境も悪化するリスクがある」(エコノミスト)との見方がある。
バナー写真:PIXTA