東日本大震災から8年:被災地と復興の現状
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避難生活者は5万4000人に
復興庁が2019年1月にまとめた震災による避難生活者は約5万4000人。この1年で2万人以上減少した。一方で、まだプレハブ型仮設住宅での生活を余儀なくされている被災者が約5000人いる。
福島県は17年3月末をもって、避難指示区域外から全国に避難している「自主避難者」への住宅無償提供を打ち切り。このタイミングで避難先の各市町村が自主避難者の多くを「避難者」に計上しなくなったこともあり、公的な数字としての避難者数は大きく減っている。
震災後の避難生活による体調悪化、自殺などによる「震災関連死」は、この1年で50人余り増えた。
2018 | 2019 | ||
---|---|---|---|
震災死者 | 1万5894人 | 1万5897人 | 警察庁、18年12月10日現在 |
行方不明者 | 2546人 | 2534人 | 同上 |
震災関連死 | 3647人 | 3701人 | 復興庁、18年9月末 |
避難生活者 | 約7万5000人 | 約5万4000人 | 復興庁、18年12月 |
うちプレハブ型仮設住宅入居者数 | 約2万人 | 約5000人 | 復興庁、18年11月 |
住宅再建はおおむね終了
復興庁によると、避難者の住宅の受け皿となる「災害公営住宅」(計画戸数・約3万戸)、高台移転による宅地造成(同約1.8万戸)は、3月末までにほぼ完成する見通し。被災地の住宅再建は終了し、今後は地域の交通対策、医療介護提供体制の整備などが課題となる。
住宅・まちづくり
2014 | 2016 | 2019 | |
---|---|---|---|
災害公営住宅完成戸数 | 9%完成 | 58%完成 | ほぼ100%完成見込み |
支援金を支給されて再建済み、再建中の住宅 | 11.1万件 | 12.7万件 | 約14万件(ほぼ全て) |
高台移転による宅地造成 | 5%完成 | 45%完成 | ほぼ100%完成見込み |
(復興庁、2019年1月)
産業基盤は復旧も、売り上げ回復は業種別にばらつき
被災3県(岩手県、宮城県、福島県)の製造品出荷額等は、震災前の水準まで回復。津波被災農地の89%が営農再開可能となり、被害を受けた水産加工施設のうち96%が業務を再開した。
被災地域の「グループ補助金」交付先企業のうち、震災直前の売上水準まで回復したのは46%。だが順調に売り上げが回復しているかどうかについては、業種別にばらつきがある。
産業
2014 | 2018 | 2019 | |
---|---|---|---|
津波被災農地のうち、営農再開が可能となった面積の割合 | 63% | 84% | 89% |
業務再開した水産加工施設の割合 | 80% | 93% | 96% |
(復興庁、2019年1月)
福島の現状:避難指示区域は徐々に縮小
福島第1原子力発電所事故による放射線物質の放出・拡散により、原発周辺の双葉町、大熊町、浪江町の一部などが現在も避難指示区域に指定されている。
避難指示区域は①放射線量が高く、立ち入り制限のある「帰還困難区域」、②居住制限区域、③住民の帰還に向けた復旧・復興準備を進める「避難指示解除準備区域」の3種類に分けられる。震災直後は11の自治体に及んだが、2014年4月から徐々に縮小し、避難指示が解除された地域では住民が戻る動きも出ている。
福島第1原発の立地自治体で全町避難が続く大熊町(人口約1万人)では、4月にも避難指示の一部が解除される見通し。町西部の大川原地区に町役場の新庁舎が建設中で、震災・原発事故から8年を経て、ようやく一部住民の帰還が実現する。
しかし、長い避難生活を経て、「もう故郷に戻らない、戻れない」元住民も多い。復興庁や福島県、各市町村が15、16年度に行った「住民帰還意向調査」によると、双葉町、大熊町、富岡町、浪江町では元住民の半数以上が「戻らない」と回答した。
福島県によると、19年1月の時点で約4万2000人が避難生活を余儀なくされており、うち約3万2000人が県外で暮らす。県内の住宅、公共施設などの除染はおおむね終了し、空間放射線量は低下傾向にある。
続く廃炉作業:燃料デブリに初接触
東日本大震災で史上最悪の原子力災害を引き起こした東京電力福島第1原発では、廃炉作業が続いている。2017年にはロボットなどを使い、1、2、3号機の格納容器内の調査に着手。19年2月には2号機に装置を入れ、原子炉格納容器内で溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)に初めて接触する調査を実施した。
政府と東電は17年9月、廃炉に至る工程表を2年ぶりに改訂。18年度前半を予定していた①燃料デブリ取り出しの工法決定、②最初に取り出しを着手する号機選定―という目標を断念し、19年度中に先送りした。20年度としていた1、2号機の使用済み核燃料プールからの燃料取り出し開始は、「23年度めど」と、3年遅らせた。廃炉完了まで「30~40年」とする目標は維持した。
集団訴訟で東電・国の敗訴相次ぐ
福島第1原発事故を巡り、避難者らが損害賠償を求めて起こした集団訴訟の一審判決がこの1年で相次ぎ、その多くが東電・国に賠償を命じた。
神奈川県に避難した60世帯、175人が原告となった訴訟では2019年2月20日、横浜地裁が東電と国の責任を認め、原告152人について計4億2000万円を支払うよう命じた。判決は、大震災の前に、大津波が発生した場合に原発が浸水する可能性は予見できたと認定。国や東電が重大事故の対策を怠った責任があるとした。
事故を引き起こしたとして、業務上過失致死傷罪で強制起訴された勝俣恒久・東電元会長ら旧経営陣3人の刑事裁判も東京地裁で進んでいる。検察役を務める指定弁護士は18年12月、3人に禁錮5年を求刑。公判は19年3月に結審する見通し。
バナー写真:被災した岩手県大槌町の旧役場庁舎の外壁から取り外された時計。町は旧庁舎の解体を決めたが、保存を求める住民もおり、町を二分する議論となった=2019年1月15日(時事)