2018年の経常黒字、4年ぶり減少 : 「輸出で稼ぐ」から「直接投資」に構造変化
経済・ビジネス
かつては自動車や電機製品の輸出で黒字を稼いでいた日本。2005年以降は、海外での現地法人設立、現地生産など直接投資が日本の黒字の柱となっている。
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財務省が発表した2018年の国際収支状況(速報)によると、海外とのモノやサービスの取引および投資収益の状況を示す経常収支は19兆932億円の黒字となり、黒字額は前年比13.0%減と4年ぶりに前年を下回った。原油高の影響で輸入額が増加し、貿易黒字が大きく減少したことが要因。
2018年(億円) | 前年比増減率(%) | |
---|---|---|
経常収支 | 190932 | ▲13.0 |
貿易収支 | 11877 | ▲76.0 |
輸出 | 812070 | 5.1 |
輸入 | 800193 | 10.6 |
第一次所得収支 | 208102 | 4.9 |
サービス収支 | ▲8986 | 23.8 |
財務省「国際収支状況(速報)」を基に編集部作成
企業が海外投資から得る利子や配当金の受け払いを示す第1次所得収支の黒字は4.9%増の20兆8102億円と、過去2番目に高い水準となった。米国やアジアなど海外での合併・買収(M&A)や現地生産が進展し、海外の子会社からの配当金受け取りや子会社の内部留保など直接投資収益が増加した。
第1次所得収支の黒字は05年に貿易黒字を上回って以来、着実に拡大が続いており、自動車や電機製品などの輸出による貿易黒字ではなく、投資収益が日本の経常黒字をけん引する構図が鮮明になってきている。米中貿易摩擦の影響などで世界の貿易の先行きに不透明感が付きまとう中、投資が経常収支を支える動きが続きそうだ。
貿易収支は1兆1877億円の黒字。16年から3年連続の黒字は維持したが、黒字額は前年より76.0%減った。輸出額は5.1%増の81兆2070億円と過去最大を記録したものの、年後半にアジア向けの半導体製造装置などが失速。一方、輸入額は原油価格が前年より3割強値上がりしたことで10.6%増と、輸出の伸びを大きく上回った。
サービス収支は8986億円の赤字で、赤字幅は2年連続で1兆円を下回った。このうち旅行収支は2兆3139億円の黒字で、過去最高となった。西日本豪雨や地震などの影響があったものの、訪日外国人観光客は初めて3000万人を突破。観光の稼ぎも貿易を超えた。