6つの国立劇場で「魅せる」「育てる」―各ジャンルに特化した舞台芸術の殿堂
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日本には6つの国立劇場が存在する。その中心拠点は1966年に開場した国立劇場(本館)で、歌舞伎や文楽を中心に、日本舞踊、雅楽などの伝統芸能の公演を行っている。歌舞伎と文楽の主催公演では、イヤホンガイド(日本語版/英語版)の貸し出しも行っており、初心者や外国人にも伝統芸能を楽しめるように工夫をしている。79年には、同じ敷地内に落語や講談など大衆芸能を上演する国立演芸場もオープンした。
83年に国立能楽堂、84年に国立文楽劇場が開場。これらの劇場運営は、伝統芸能の保存・振興を図ることを事業の一つとして設立された独立行政法人「日本芸術文化振興会」が行っている。
さらに97年にオペラやバレエ、現代舞踊を上演する新国立劇場が開場。2004年には、組踊など沖縄の伝統芸能を上演する国立劇場おきなわが開場した。(国立劇場おきなわは公益財団法人「国立劇場おきなわ運営財団」に、新国立劇場は公益財団法人「新国立劇場運営財団」に、日本芸術文化振興会がそれぞれ業務を委託している。)
劇場名 | 主な上演ジャンル |
---|---|
国立劇場(本館) 大劇場/小劇場 | 歌舞伎、文楽、舞踊、邦楽、雅楽、声明、民俗芸能 |
国立演芸場 | 落語、漫才、講談などの大衆芸能 |
国立能楽堂 | 能・狂言 |
国立文楽劇場 | 文楽、上方芸能 |
新国立劇場 | オペラ、バレエ、現代舞踊、演劇 |
国立劇場おきなわ | 組踊など沖縄伝統芸能 |
歌舞伎の名門の家系では、男児が生まれると幼いうちから父の下で芸を仕込まれ、名跡(みょうせき=芸名)を父から息子へと代々引き継いでいくことが習わしとなっている。また、歌舞伎以外の伝統芸能でも、師匠の家に住み込み、生活を共にしながら直接に技芸を学ぶ「弟子入り」が長く行われてきたため、伝統芸能には「特別な人たちが携わる、特殊な世界」というイメージが強い。しかし、国立劇場では1970年から幅広く伝統芸能の継承者を育成するための研修制度を設けている。
背景には、娯楽の多様化などで弟子入りする若者が激減。次世代の担い手不足、芸の継承への危機感があった。
例えば、歌舞伎では俳優と歌舞伎音楽(竹本、鳴物、長唄)の4コース、文楽では太夫、三味線、人形の3コースがある。応募資格は、中学校卒業以上の男子(原則として23歳以下)で、経験は不問。コースによって2〜3年の研修期間を経て、それぞれの伝統芸能の世界に従事する。
制度創設から約半世紀を経て、歌舞伎の舞台では俳優の約3割は研修修了者が占めるようになった。研修制度を経て「名題」と呼ばれる幹部クラスの俳優になっている人も39人いる。また、歌舞伎音楽の竹本に関しては、31人中27人が研修生出身だ。文楽では、技芸員の半数以上を研修制度出身者が占めており、国立劇場は伝統芸能の継承者育成でも、大きな役割を担っている。
写真は全て日本芸術文化振興会提供
バナー写真 : 国立劇場本館の大劇場