「政治とカネ」 国民は飽き飽きーコント集団「ザ・ニュースペーパー」の福本ヒデ氏
政治・外交 社会 エンタメ- English
- 日本語
- 简体字
- 繁體字
- Français
- Español
- العربية
- Русский
争点は物価高、社会保障…
自民党派閥による政治資金パーティーを巡る裏金事件が問題になりましたが、「政治とカネ」の話は昔からあります。過去にも逮捕者が出ては政治資金規正法を改正し、政治家はその抜け穴を見つけ出すということを繰り返してきました。
「政治にお金がかかる」ことはずっと言われ続けていて、庶民の肌感覚で言えば、国民はもう慣れてしまっている。心の底から腹を立てて、国会の前に座り込んだりする熱はない。国民は冷めているという印象です。
テレビの世論調査の結果を見ると、今回の総選挙の争点として国民が挙げているのは、物価高、社会保障の充実が上位でした。街中でも「物が高い」との声があちこちで聞かれます。皆さん現実路線で、裏金問題を争点として挙げる人は少ないようです。
各党の党首は「裏金問題」について言及していますが、すでに時機を失した感があります。問題が発覚した頃の選挙なら、「国民の審判」としての意味もあったでしょうが、すでにそんな雰囲気ではないと思います。メディアが盛んに言う「政治とカネ」は、本当に総選挙の争点なのかと感じます。
舞台でウケないネタに
冷めた感じは、舞台を見に来てくれる観客からも伝わってきます。私が所属するコント集団「ザ・ニュースペーパー」は、これまでいろいろな形で「政治とカネ」をテーマに取り上げてきました。今回の裏金問題も「キックバック」「もみ消し」といったキーワードでコントに仕立てました。
でも、もう大きな笑いが取れるネタではなくなっています。みんなが飽きているのをひしひしと感じます。同じ「政治とカネ」の話でも、逆に昔の事件の方がウケが良かったりします。
ここまで国民を「慣らしてしまった」のは、ある意味で大変なことです。ただ、問題は自民党だけではなく、多かれ少なかれ、野党も同様の問題を秘めている可能性があるのではないでしょうか。国民はそのことも感じ取っています。裏金事件を追及する野党も、身内から同じ不祥事が出たらどうするのでしょうか。政治は、「クリーンvs. ダーティー」と単純に割り切れないものだと思います。
国民はしっかり見ている
とはいえ、政治家の感覚が庶民とかけ離れていることは否めません。庶民感覚からすると、「政治活動にはカネがかかる」といくら説明されてもさっぱり分かりません。
昔の話ですが、「庶民派」を売りにするリベラル派の議員さんが高級車に乗り込むところを目撃しました。イメージとの違いに驚き、「何だかなあ~」という気がしました。国会議員はほんの近くへの移動にも、多くの人は高級車を使います。そうした姿、行動を国民は見ているから、「カネがかかる」と言われても納得しかねます。
国会議員は、国民が暮らしやすくなるために法律をつくることが仕事です。それにどうして多くのお金がかかるのか、使い道はどうなっているのか、そういったことを学校で教えるようにしてはどうでしょうか。「政治は難しい」「政治家は隠し事をしている」といった声が減り、投票率も上がるのではないかと思います。
父親と一緒にコントを見に来てくれた少年が、「お父さんたちが笑っていたのに、僕はなぜ笑ったのか分からなくて悔しかった。政治について勉強してまた来ます」と話してくれました。とても頼もしく思いました。
「政治に興味がない若者が多い」ともいわれるので、私たちのコントで笑ってもらい、関心の扉を開いてもらえるとうれしいですね。
聞き手:nippon.com編集部・住井亨介
バナー写真:福本ヒデ氏が演じる石破茂首相(左)と野田佳彦元首相(TNPカンパニー提供)