これでいいのか拡大BRICS:新成長センターはVIIPs
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そもそも南ア加入に違和感
BRICsは、21世紀の冒頭に生まれた新語だ。ゴールドマン・サックスのエコノミスト、ジム・オニールが、2001年のリポート「Building Better Global Economic BRICs」で、ブラジル(B)、ロシア(R)、インド(I)、中国(C)をまとめて名付けた。
リポートは、①2000年末時点で世界に占めるBRICsの国内総生産(GDP)は8%だが、購買力平価ベースのGDPでは23.3%になる②今後10年間で世界GDPに占めるBRICsの比重が高まり影響力を増す③世界の経済政策づくりの場の再構成が必要で、先進7カ国(G7)はBRICs代表も取り込むべきだ―などと指摘した。
「BRICs」は国家グループとして独り歩きする。09年には定例の首脳会議が始まった。11年に複数を表す小文字のsが大文字になり、南アフリカを加えたBRICS首脳会議に拡大。人口が億単位のグループに、たまたま頭文字がSの人口5000万人台の国の加入は、違和感があった。
“問題児”だらけの裏に中国の影
そして8月の南ア・ヨハネスブルグでの首脳会議で、アルゼンチン、エジプト、エチオピア、イラン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)の6カ国が24年に加盟することが決まった。5カ国が中東とアフリカの国々だ。
この選択にBRICsの名付け親、オニール氏は「なぜインドネシアが入らず、メキシコではなくアルゼンチン、ナイジェリアではなくエチオピアなのか」と疑問を呈した。イスラム・シーア派原理主義を掲げるイランや、経済危機が常態化するアルゼンチンの加盟承認には首を傾げたくなる。「グローバルサウス」を代弁するには、ウクライナに侵攻した原加盟国ロシアも含め、メンバーに”問題児”が多すぎる。
加盟国拡大に熱心なのは中国だ。中国包囲網を意識して、米国とその友好国をけん制するグループ形成の意図が見え見えで、極めて政治的な選択だ。
経済に焦点を絞ったBRICsの原点に戻ろう。21世紀冒頭の時点で、メンバー4カ国は、億単位の人口を有する「有望な」経済大国候補だった。筆頭の中国にしても、GDPがイタリアを少し上回る程度だった。
4カ国が、足並みをそろえて成長できたわけではない。オニール氏も「2010年以降のブラジルとロシアは期待外れだった」と認めている。
そして中国経済も、バブル崩壊で失速しそうだ。世界2位の経済大国に変わりはないが、「中所得国の罠(わな)」に落ちた可能性が大きい。「有望」ではなくなったのだ。BRCが脱落し、Iだけが残った。インドとともに「有望」な新興経済大国候補になれる国は?
有望国はインド+ASEAN
長く「世界の成長センター」だった「東アジア」に陰りが生じている。中国、韓国、台湾などに共通するのは人口減少だ。昨年の韓国の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子どもの数)は0.78人、中国は1.09人で、人口が増えも減りもしない人口置換水準(2.1人)に遠く及ばない。
東アジアに取って代わる「成長センター」の有力候補は、インドと東南アジア諸国連合(ASEAN)だろう。中国から撤退相次ぐ外資の生産拠点の移転先の過半が東南アジアとインド。「世界の工場」の引っ越しだ。この地域で、人口が1億人級以上のベトナム(V)、インド(I)、インドネシア(I)、フィリピン(P)の4カ国をBRICsに代わる次世代の新興経済大国候補「VIIPs」と呼んではどうだろう。
悩ましいのは隣接するバングラデシュの処遇。北海道2個分足らずの国土に1.7億人が住む人口過密国だが、近年、成長率が高まり最貧国を脱した。ただ、国土の半分が低地で、洪水など災害に弱い。地球温暖化による海面上昇のリスクなども考慮し、選抜を見送った。
バナー写真:南ア・ヨハネスブルクで開催されたBRICS首脳会議で集合写真に納まる(左から)ルラ・ブラジル大統領、習近平・中国国家主席、ラマポーザ・南ア大統領、モディ・インド首相、ラブロフ・ロシア外相=2023年8月23日(新華社=共同)