新型コロナウイルス-パンデミックと米中関係

国際・海外

新型コロナウイルスの世界的流行(パンデミック)は、国際関係にも大きなインパクトを与えた。両大国である米国と中国は共に傷を負いながら、対立はさらに深まっている。新しい世界秩序の姿は、米国の一国覇権から、米中のG2、あるいはG0へ向かうのだろうか。

過去と異なる未来像

ではこれからの世界をどのように見通せばいいのか。米中が何らかの形で手を携え、協調もしくは協力する関係を構築するのは無理なのであろうか。もちろん両国とも全面的な対決は避けるという意向は強い。何よりも世界の GDP の 約40%を占め、両国とも最大の貿易相手国同士という現実は、自らの経済復興、再浮上において欠かすことのできない国となる。その意味ではある程度の協調関係が復活される可能性はある。

しかし2013年に習近平国家主席が提唱したような「21世紀の新しい創造的な大国関係」の構築はほぼ不可能であろう。中国は強い意志を持って米国にチャレンジし続けるだろう。他方米国も、米中関係を「ツキディデスの罠」に例えた米政治学者グレアム・アリソンの主張に見られるように、挑戦者としての中国を強く警戒し、これまで築いてきた世界のリーダーとしての地位を懸命に堅持しようとするだろう。この抗争は経済のみならず軍事安全保障、さらには政治体制のあり方をめぐって一段と鮮明化していくのではないだろうか。安易な予測が許されるとするならば、それはこれから、20~30年は続くのではないか。

もっとも、今回の新型コロナパンデミックの世界的なインパクトを真剣に再考するならば、コロナは容易に国境を越えた。環境汚染もすでに国境を越えている。国境を強化することに躍起になっているのは人間だけかもしれない。米中の関係からだけでなく、もう少し異なった観点から世界の未来を想像し、異なった選択肢を志向しても良いかもしれない。

バナー写真=新型コロナウイルスによる肺炎拡大で、中国武漢から帰国した米国人らが2週間の隔離措置を終え、記者会見を行う米国疾病対策センター(CDC)の関係者ら(AP / アフロ)

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