日本政府のウクライナ支援とロシア制裁の現状:緊急人道支援は計2億ドルに積み増し
政治・外交
ロシアによるウクライナ侵攻から、4月9日で1カ月半(45日)が経過した。日本政府がこれまでに実施、または実施表明したウクライナ支援、ロシア制裁の概要をまとめた。
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【ウクライナへの支援】
<防弾チョッキなど自衛隊装備品の供与>
防弾チョッキや鉄帽(ヘルメット)、防寒服、天幕、カメラなどの自衛隊装備品、また衛生資材や非常用糧食、発電機などの物品をウクライナ政府に贈与(3月8日に林芳正外相が駐日ウクライナ大使と交換公文に署名)。このうち、防弾チョッキは防衛装備移転三原則上の防衛装備に該当するため、政府は運用指針を改正して今回供与できるようにした。
<緊急人道支援>
- 3月11日に1億ドルの支援実施を決定。対象は周辺国に逃れた避難民も含まれる。主な内訳は以下の通り。
- 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)に2560万ドル:シェルターや生活避難民保護など
- 赤十字国際委員会(ICRC)に1510万ドル:保健・医療、生活必需品、水・住宅など
- 国連児童基金(UNICEF)に1420万ドル:子どもの保護、保健・医療、水・衛生、教育など
- 国連世界食糧計画(WFP)に1400万ドル:食料とその運搬など
- 国際移住機関(IOM)に1200万ドル:シェルター、生活必需品、保健・医療など
- 国連人道問題調整事務所(OCHA)に500万ドル
- 日本のNGOに1410万ドル:保健・医療、食料、生活必需品など
- 岸田文雄首相が、追加で1億ドルの支援実施を表明(3月22日)
<避難民受け入れ支援>
- 3月25日に在ポーランド日本大使館とジュシェフ連絡事務所の体制を強化し「ウクライナ避難民支援チーム」を設置
- 4月1日から4日まで、林芳正外相が首相特使としてポーランド訪問。帰国時にウクライナ人の避難民20人が政府専用機に同乗し、5日に羽田空港に到着。
<その他>
- 少なくとも1億ドル規模の円借款を行う(ロシアによる侵攻前の2月15日、岸田首相がゼレンスキー大統領との電話会談で表明)
- ウクライナの首都の呼称を「キエフ」からウクライナ語による読み方に基づく「キーウ」に変更。首都以外の地名についても同様の呼称に変更する(3月31日、外務省が報道発表)
【ロシアへの制裁】
<金融制裁>
- 米国、欧州に続いてSWIFT(国際銀行間通信協会)からのロシアの特定銀行の排除を表明
- ロシア中央銀行の資産凍結、取引制限
- 開発対外経済銀行(VEB)、対外貿易銀行(VTB Bank)など7銀行とその子会社に対し、日本国内にある資産を凍結
<輸出規制>
- 工作機械、高性能の半導体など重要製品の輸出を禁止(ベラルーシも含む)
- ロシア向け石油精製用装置などの輸出禁止
- 軍関連などロシア・ベラルーシの特定団体への輸出を禁止(ロシア国防相やロシアの航空機メーカーなど)
- 「ドネツク人民共和国」「ルハンスク人民共和国」(いずれも自称)への輸出禁止
- ぜいたく品の輸出禁止
主な対象は、紙幣、金貨、金地金、酒類、たばこ製品、乗用車(600万円を超えるもの)、バイク(60万円を超えるもの)、ダイビング用機器、ノートパソコン、宝飾品、美術品・骨董品など
<輸入規制>
- 一部の物品の輸入禁止を実施へ(具体的な品目は今後特定。ウォッカなどが想定されている)
<最恵国待遇の撤回>
- 岸田首相が3月16日に撤回を表明。主要7カ国(G7)と足並みをそろえ、一部のロシア製品の関税率を引き上げる
<政府関係者、「オリガルヒ」の資産凍結など>
- 政府関係者のうち、資産凍結の主な対象者は以下の通り
- プーチン大統領
- ラブロフ外相
- ショイグ国防相
- ゲラシモフ・ロシア連邦軍参謀総長兼国防省第一次官
- バトルシェフ・ロシア連邦安全保障会議書記
- メドベージェフ・ロシア連邦安全保障会議副議長
- カディロフ・ロシア連邦チェチェン共和国首長
- ルカシェンコ・ベラルーシ大統領
- 「オリガルヒ」(プーチン政権に近い超富裕層)のうち、資産凍結の主な対象者は以下の通り
- イーゴリ・セーチン(国営石油会社ロスネフチCEO)
- アルカディ・ローテンベルグ(SGMグループ創設者)
- ユーリー・コヴァリチュク(バンク・ロシア筆頭株主)
- デジタル資産などを用いたロシアによる制裁回避への対応するため、暗号資産交換業者などの協力を経て金融面での制裁を強化する。
取材・文 ニッポンドットコム編集部
バナー写真:ウクライナに供与する防弾チョッキなどの防衛装備品が積み込まれる給油輸送機KC767=2022年3月8日夜、愛知県の航空自衛隊小牧基地(時事)