3.11後の日本

創発的破壊が日本を復活させる

政治・外交 社会

今年3月に発生した東日本大震災は、日本に戦後最悪の被害をもたらした。被災地復興と共に、パラダイム・チェンジを迎えた日本。脱原発・脱炭素社会を目指し、新たな日本の創造が試される。

需要削減のイノベーション

需要サイドのイノベーションとは、具体的に言ってスマートグリッド・スマートメーターをベースとしたスマートビルやスマートハウス、さらにはスマートシティの加速的開発・普及のことである。


横浜みなとみらい21区に建築されたスマートハウス実験住宅。(写真提供=積水ハウス株式会社)


パナソニックが神奈川県藤沢市他8社と共同で、同社藤沢工場跡地19ヘクタールに計画しているスマートタウン・プロジェクト「Fujisawa SST」。(写真提供=パナソニック株式会社)


「グリーンファースト」と「ネットワークテクノロジー」を合わせた「観環居」(かんかんきょ)。新しい住まいの快適性と長寿化を検証。(写真提供=積水ハウス株式会社)


栃木県 宇都宮市にある「大谷資料館」。地下採掘跡地の自然冷却機能を生かした、データセンター・サーバー設置の検討が各地で進められている。


犬島アートプロジェクト「精錬所」。銅製錬所の遺構を保存、再生した美術館。既存の煙突やカラミ煉瓦、太陽や地熱などの自然エネルギーを利用している。(写真提供=直島福武美術館財団)
アート:柳幸典
建築:三分一博志
運営:財団法人 直島福武美術館財団
写真:阿野太一

日本のオフィスや家庭における冷暖房効率や照明効率は、センサーにインテリジェント機能を付け加えることでまだまだ改善できる。オフィスの再配置や照明反射板などにおける小さなイノベーションを積み重ねることで比類なき高水準の省エネルギーが達成できる。また、幾何級数的に増大するサーバーの冷却に関しても、きめ細かいセンサーと局所冷房技術などこれまで蓄積された技術を存分に発揮できる分野が残されている。こうしたセンサー技術、局所冷暖房、素材開発などは日本製造業のお家芸である。さらに、巨大サーバー群から形成されるデータセンターは、リスク分散上一極集中しない方がいい。そうなると、北海道や九州・中国地方の地下洞窟の利用や、瀬戸内海の犬島で完成された自然光、自然風力を利用した省エネルギー建築などが今後最大限に活用されることとなる。ここでも、日本のものづくり能力の高さが威力を発揮するだろう。

需要サイドのイノベーションこそは、実は日本人が最も得意とする分野なのである。さらに重要なことは、こうして開発された技術はそのまま新興国をはじめとする世界中に輸出できるということだ。

しかし、古いパラダイムにいる人たちには、「脱原発」という方向性はどうしても理解できないものなのかもしれない。ただ、全国平均して三割程度の原発依存度を、大小さまざまなイノベーションを通じて脱却できないというならば、それはもはや日本に未来がないということだろう。かつて、松下幸之助氏は、「3パーセントのコスト削減は難しいが、30パーセントは可能だ」と言ったといわれるし、実践してきたともいわれる。真意は、3パーセントという課題では現状の延長線上で考え、大きなイノベーションは生まれないが、30パーセントとなると発想の転換をもたらすからである。30パーセントは不可能な数字ではない。

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