【Photos】東京スカイツリー成長絵巻

文化

東京スカイツリーがオープンして、5月22日で満1年を迎えた。今年2月には来場者数が500万人を突破。今や押しも押されもせぬ東京の新名所だ。完成までの4年間のプロセスを写真で追った。

成長プロセスを映し出す

これらの写真は、東京の新しいシンボルとなった東京スカイツリーが完成するまでの過程と、その背景に広がる周辺の街、人々の暮らしを撮影したものだ。

日々変化するスカイツリーと街の表情を捉えるために、機動性の高いデジタルカメラを使用した。そして被写体をより精密に描写するために、複数のカットをつなぎ合わせて1枚の写真を作るという手法をとった。この方法により、ディテールを損なうことなく東京という都市の広がりを捉えることができた。

複数のショットを合成した1枚の写真には、複数の瞬間、複数の焦点が存在している。人間は1つの場面を見ている時も、せわしなく眼球を動かして複数のイメージに焦点を合わせながら、頭の中でそれらを1つのものとして組み合わせている。だからデジタルカメラを使ったこの撮影方法は、むしろ人間の自然なものの見方に少しだけ近くなっているとも言える。

スカイツリー三十六景

スカイツリーを取り巻く街の表情を撮影していくうちに、東京の原型である江戸を描いた浮世絵に関心が向くようになった。その風景の中では、多くの人々がそれぞれに様々なことをしている。細かく描かれた情景を見ていると、多視点的な画面の中を視線は一点に留まることなく、あちこちをさまようことになる。

そのような昔の絵の在り方は、写真家としての自分の想像力をいたく刺激する。特に富士山を借景としながら庶民の暮らしを描いた葛飾北斎(1760-1849)の「富嶽三十六景」には、強い感動を覚える。

東京という都市は、江戸からの歴史、大地震や戦争の記憶などが集積され、その土地に固有の重層的な雰囲気を醸し出している。スカイツリーは、そうした東京の歴史的な文脈にランドマークとしての新たな記憶を加えた。完成して1年。その近未来的な塔は、過去から未来へと続く時間の流れを貫いて静かに屹立(きつりつ)している。

その姿を目の当たりにすると、現在の東京とは異なる別世界に紛れ込んでしまったかのような錯覚に襲われる。

日常の風景を異化してしまうその姿に、めまいを覚えるのは私だけだろうか。

撮影と文=佐藤信太郎

2012年7月28日 墨田区 錦糸からの眺め オープンから約2か月後
2012年7月28日 墨田区 錦糸からの眺め オープンから約2か月後

2008年12月10日 墨田区 押上
2008年12月10日 墨田区 押上

2009年7月25日 墨田区 押上
2009年7月25日 墨田区 押上

2009年8月23日 墨田区 太平
2009年8月23日 墨田区 太平

2009年12月6日 墨田区 押上
2009年12月6日 墨田区 押上

2009年12月7日 墨田区 文花
2009年12月7日 墨田区 文花

2010年4月18日 葛飾区 東四つ木
2010年4月18日 葛飾区 東四つ木

2010年5月16日 台東区 浅草
2010年5月16日 台東区 浅草

2010年7月31日 墨田区 錦糸からの眺め
2010年7月31日 墨田区 錦糸からの眺め

2010年9月26日 葛飾区 東四つ木
2010年9月26日 葛飾区 東四つ木

2010年11月10日 墨田区 押上
2010年11月10日 墨田区 押上

2010年12月24日 墨田区 錦糸からの眺め
2010年12月24日 墨田区 錦糸からの眺め

2010年12月25日 墨田区 業平
2010年12月25日 墨田区 業平

2011年1月2日 台東区 浅草
2011年1月2日 台東区 浅草

2011年1月31日 墨田区 八広
2011年1月31日 墨田区 八広

2011年2月27日 台東区 浅草
2011年2月27日 台東区 浅草

2011年4月10日 台東区 浅草
2011年4月10日 台東区 浅草

2012年5月20日 台東区 浅草 オープンの2日前
2012年5月20日 台東区 浅草 オープンの2日前

2012年8月15日 江戸川区 平井 オープンから約3か月
2012年8月15日 江戸川区 平井 オープンから約3か月

2013年1月28日 江戸川区 平井 オープンから約8か月
2013年1月28日 江戸川区 平井 オープンから約8か月

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