東京駅で爆売れのミルフィーユずし、見た目も味も絶品:築地場外では手軽で“映える”海鮮丼も

川本 大吾 【Profile】

海の幸を堪能したい時、色とりどりのネタが並ぶボリューム感で、にぎりずしをもしのぐ人気なのが「海鮮丼」。年代を問わず爆発的な売れ行きとなっている東京駅の「ミルフィーユずし」に加え、築地場外市場でも新しいタイプの“映える海鮮”が注目を集めている。

上から見ても、横から見ても色鮮やかな海鮮丼

マグロやサーモン、イクラやウニ、ホタテなどが、丼からあふれんばかりに盛られる海鮮丼。シンプルなにぎりずしとは違い、豪華な見た目と食べ応えが売りだが、近年は“カワイイ”を兼ね備えるニューウエーブ海鮮丼が登場し、話題を呼んでいる。

爆発的に売れているのが、海辺の漁港周辺ではなく、東京のど真ん中、大丸東京店のデパ地下一角にある「創作鮨処タキモト」の「ドリームプリティミルフィーユ」(1695円)。少し“盛り過ぎ”なネーミングにも思えるが、透明カップに色とりどりの海鮮をぎっしりと詰め、まさに「海の宝石箱」のよう。

写真下の少し小さいサイズがドリームプリティミルフィーユ。上左が「贅沢(ぜいたく)ミルフィーユ」(税込み2100円)、右は「かに、うに、いくらのプレミアムミルフィーユ」(同2980円)
写真下の少し小さいサイズがドリームプリティミルフィーユ。上左が「贅沢(ぜいたく)ミルフィーユ」(2100円)、右は「かに、うに、いくらのプレミアムミルフィーユ」(2980円)

最上段に並ぶのはアワビやイクラ、カニといった豪華なネタ。その下は、ケーキのミルフィーユ(フランス語で「1000枚の葉」の意)を模して、パイ生地代わりに酢飯、カスタードクリームの代役にサーモンやタラコ、高菜、キクラゲのつくだ煮などを挟み、7層に盛り付けている。

透明な容器を使うことで、その美しい層を横から見えるようにし、「インスタ映え」間違いなしのビジュアルに仕上げた。

高菜とサーモンが織りなす美しい層。底にはガリが敷き詰められている
高菜とサーモンが織りなす美しい層。底にはガリが敷き詰められている

4年連続売り上げトップ、年間6万食

大丸東京店の地下1階の食品フロア「ほっぺタウン」は、東京駅八重洲口に直結。全長約60メートルの“お弁当ストリート”は、列車に乗り込む前の人でいつもにぎわっており、フロア全体で年間およそ1000種の弁当が販売されるという。

そんな駅弁激戦区で、「ドリームプリティミルフィーユ」は4年連続で売り上げトップ(本体価格1000~1600円において)を誇り、24年の販売数は6万食に達した。

店頭に並ぶ様子も美しいミルフィーユずし 写真:筆者提供
店頭に並ぶ様子も美しいミルフィーユずし 写真:筆者提供

タキモト大丸東京店の出口昇店長は、人気の理由を「見た目はもちろん、ご飯やネタそれぞれにしっかりと味付けしているので、食べ応えも十分だと思う」と分析。「見かけ倒しではない」と胸を張る。

同店では2010年頃に「贅沢ミルフィーユ」(税込み2100円)を販売。口コミによって人気が高まってきた約5年前、ひと回り小さいサイズにして、価格を抑えた「ドリームプリティミルフィーユ」を投入すると、SNS世代の若い女性にうけて大ヒット商品となった。長年愛され、リピーターも多いというのだから、単なるはやり物とはいえない。

数の子がドーンとのった「贅沢ミルフィーユ」も根強い人気
数の子がドーンとのった「贅沢ミルフィーユ」も根強い人気

あふれんばかりの具材は、電車の揺れなどでこぼれてしまいそうだが、大丸東京店の広報担当者は「容器のふたを皿代わりにし、ネタを取り分けながら食べるのがおすすめ。ミルフィーユ部分は、最初に混ぜて食べるのもおいしい」と説明。しょう油の小袋が付いてくるものの、十分味付けされているので、使わない人も多いそうだ。

ネタを取り分けたり、しょうゆ皿にしたりと、ふたを有効活用するのがポイント
ネタをいったん避難させたり、しょうゆ皿にしたりと、ふたを有効活用するのがポイント

かわいい刺し身串、寿司パフェも登場

築地場外市場では、まるで原宿・竹下通りにあるクレープ店のようにポップな「Sushi Café KANNO(かん乃 寿司カフェ)」が話題。ドリンクと共に、本マグロの大トロや赤身、サーモンのにぎり2個セットなどが、おやつ代わりに手軽に味わえると人気だ。

築地名物の一つに玉子焼きを串に刺した「串玉」があるが、同店ではマグロやサーモンを並べた「おさしみ串」(500円)が看板商品。カラフルな串を掲げ、スマホで撮影する若者も少なくないという。

築地4丁目交差点のすぐ近く、もんぜき通りの入り口にあるSushi Café KANNO
築地4丁目交差点のすぐ近く、もんぜき通りの入り口にあるSushi Café KANNO

食べ歩きにちょうどいい「おさしみ串」
食べ歩きにちょうどいい「おさしみ串」

そして、同店のイチ押しは「寿司パフェ」。大(1000円)と小(500円)の2種類があり、ハート形の玉子焼きやマグロ、エビ、サーモン、イカなどにイクラがちりばめられている。女性はもちろん、子どもにも人気だ。

築地場外で本格的なすしや海鮮丼を提供する「つきじかんの」の系列店なので、ネタのクオリティにも確固たる自信がある。菅野美穂社長は「既成概念にとらわれず、外国人観光客や若者に、安くておいしい海鮮を楽しんでもらいたくてオープンした」と話す。小サイズでもワンコインとは思えないボリュームで、「採算は度外視」と苦笑いしていた。

おさしみ串と同じ500円の「寿司パフェ(小)」は、お得感が半端ない
おさしみ串と同じ500円の「寿司パフェ(小)」は、お得感が半端ない

遊び心たっぷりのミニチュアすしグッズ

築地場外では時々、ちょっと変わったすしを販売する「築地1935」が店を開き、人だかりができている。ここのにぎりずしは味わうのではなく、身に付けるものだ。

すし好きが高じて、アクセサリーにしてしまったという与風夏子さん。米粒よりもちょっぴり大きい超小型のフィギュアは、ネックレスやピアス、イヤリングのほか、ストラップやボールペンなどのかわいらしいアクセントになっている。

にぎりずしを模したイヤリングとピアス(2200円)
にぎりずしを模したイヤリングとピアス(2200円)

接客しながら、すしの魅力をインバウンドに伝える与風さん
接客しながら、すしの魅力を伝える与風さん

ネタは、マグロやサーモン、エビ、玉子、イクラの軍艦巻きなど、どれもすしの定番で、カラフルな見た目。場外市場でおいしい魚介を楽しんだ観光客が、店頭で足を止めて興味津々。築地土産としてまとめ買いする人も多いという。

若者を中心に魚離れが進んで久しいが、こうした新しいビジュアルの商品に出会ったことで、海鮮好きになることもありそうだ。定番のにぎりやちらしずしだけでなく、「おいしい」に「きれい」や「カラフル」、「カワイイ」を加えた魚料理が続々と登場し、水産物の消費を押し上げてくれることを期待したい。

胸ポケットのかわいいアクセントになると人気のすしペン(1650円)
胸ポケットのかわいいアクセントになると人気のすしペン(1650円)

ストラップやキーホルダーなどの小物は1点1100円だが、5点だと3300円になるので、まとめ買いがお得
ストラップやキーホルダーなどの小物は1点1100円だが、5点だと3300円になるので、まとめ買いがお得

※価格は全て税込み

撮影=ニッポンドットコム編集部

バナー写真:東京駅利用者に大人気のミルフィーユ海鮮丼

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    川本 大吾KAWAMOTO Daigo経歴・執筆一覧を見る

    時事通信社水産部長。1967年東京生まれ。専修大学を卒業後、91年時事通信社に入社。水産部で築地市場、豊洲市場の取引を25年にわたり取材。著書に『ルポ ザ・築地』(時事通信社、2010年)、『美味しいサンマはなぜ消えたのか?』(文藝春秋、2023年12月)。

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