
2025大阪・関西万博会場、開幕に向けて工事着々:海外&国内パビリオン、トイレの一部を披露
Guideto Japan
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佳境を迎えた海外&国内パビリオンの外観工事
大阪・関西万博のシンボル「大屋根リング」では、全周2キロの遊歩道部分がほぼ仕上がっていた。植樹作業もだいぶ進み、芝生が生えそろった場所も多い。その内側では海外パビリオンや、開催国・日本のメイン展示となるシグネチャーパビリオン、休憩所やトイレの建設作業が急ピッチに進み、全容が少しずつ明らかになってきた。
コロナ禍の影響もあり、資材や建築事業者の確保が難航し、一時は開幕に間に合わないことが懸念されたが、アイルランド館が海外パビリオン初の外観工事完了を迎えるなど巻き返してきた。主催する日本国際博覧会協会の高科淳副事務総長は、4月13日の開幕を見据えて「万全の状態でお客さまを迎えたい」と気を引き締める。
緑が増えて、より心地よい空間となった大屋根リング。中央右上、木材に囲まれた円柱が3つ重なるのがアイルランドパビリオンで、海外勢初の外観完成となった
リングのエスカレーター下、手前にあるのは若手建築家が手掛けた「ポップアップステージ」で、上部の白い皿状の屋根から雲が発生する。その奥のアイルランド館の左で建造中なのはマレーシアパビリオンで、伝統的織物・ソンケットをイメージしている
“いのちの輝き”を発信するシグネチャーゾーン
日本を代表する8人のプロデューサーが万博テーマ“いのち輝く未来社会のデザイン”を提言する「シグネチャーパビリオン」も、外観工事が完了に近づいていた。すでに足場の取れた「いのち動的平衡館」は、細胞が分解と合成を絶え間なく繰り返し、バランスを保つことで生命が維持される「動的平衡」をキーワードに、“いのちを知る”ことの重要性を発信する。
プロデュースした生物学者・福岡伸一さんは「命とは何かを知るということについて、正面から向き合ってこのパビリオンを作った。(同時に)おそらくこの万博では唯一、死の問題も取り扱っている。生命は有限であるからこそ輝くわけで、生命の必然としてあるということを感じてもらうための展示を考えている。それは、できてからのお楽しみ」と述べた。
出口側から眺める「いのち動的平衡館」(左)。右奥にあるアニメーション監督・河森正治さんの「いのちめぐる冒険」も外観はほぼ完成していた
設計コンセプトを紹介する福島さん(右)と建築家の橋本さん(左)
建物内には柱がなく、外周を囲む鉄骨リングからワイヤやエアチューブを張り巡らせ、膜屋根を支えている。通常の建築物は構造を決めてから柱を立てて軸を決めるが、福岡さんは「生命は細胞同士がバランスを取り合い、いろんな分担をしながら最後に骨を作って全体を整えるみたいに発生する。いわゆる建築思想とは逆のルートだが、柱のない、細胞のような自律的な空間というむちゃな発想がまずあり、それを実現していただいた」と解説する。
建築家の橋本尚樹さんは「弱い材料同士を組み合わせ、少しずつ引っ張っていくと、ポンと均衡を保って強度が生まれる。先生が『発生的』と表現するものですけど、建築的な構造計算としてはチャレンジングで、めちゃくちゃ難しかった」と苦笑いしていた。
建物内部には柱はなく、外周リングがねじれて立ちあがった部分のみで膜屋根の頂点を支えている
展示の目玉は、約32万個のLEDを立体的に配した「クラスラ」。その明滅で生み出す光のショーで、32億年にわたる生命の進化を表現するという © DYNAMIC EQUILIBRIUM OF LIFE / EXPO2025
他のシグネチャーパビリオンも着々と工事が進む。左が放送作家・小山薫堂さんの「EARTH MART」、右奥が映画監督・河瀨直美さんの「Dialogue Theater –いのちのあかし–」
メディアアーティスト・落合陽一さんの「null2」。左奥に小さく見える黒い建物はロボット工学者・石黒浩さんの「いのちの未来」
個性あふれる海外パビリオンも続々誕生
リングから会場を眺めると、ひときわ目を引いたのが外壁に横27メートル、縦10メートルの巨大ディスプレーを設置した韓国館。万博期間中は、K-POPのライブ映像や観光名所の動画などで自国文化をアピールすることを検討中という。
館内でも来場者の声をAI(人工知能)で分析し、オーケストラ音楽に変換して場内に流すなどデジタル技術を駆使。2040年の未来社会を体験してもらうことを目指している。
“いのちをつなぐ”をテーマとする「コネクティングゾーン」にある韓国パビリオン
来場者全員が音楽の要素となる館内ホールのイメージ © KOTRA (Korea Trade-Investment Promotion Agency)
“いのちを救う”をテーマにしたセービングゾーンでは、在大阪オランダ総領事館のマーク・カウパース総領事が出迎えてくれた。
日本が鎖国していた江戸時代、唯一の交易国だっただけに「人工島・出島(長崎県)で培った日本とのコラボレーションが、この新しい人工島(夢洲)につながっている。まさにオランダパビリオンがテーマとする『コモングラウンド(共創の礎)』の精神を象徴しているのではないかと思う」と粋な紹介をした。オランダ館では太陽やクリーンエネルギーを象徴する球体を建物の中心に据え、最新の環境技術などを紹介する予定だ。
球体が美しく輝く夜間のオランダ館 Copyright: AND BV | Plomp
“いのちに力を与える”をテーマとする「エンパワーリングゾーン」を、リング最上部の20メートル地点から見下ろす。中央上にある銀色の鉄骨はフィリピン館で、その左に米国、フランスが並んでいる
休憩所やトイレなど公共スペースでは若手建築家が活躍
70年大阪万博に携わった黒川紀章ら若手建築家は、日本を代表するクリエイターとなり、世界を舞台に活躍。今回の万博でも若い世代にチャンスを与えるため、40歳以下を条件にギャラリーや休憩所、トイレなど公共スペース20カ所の設計を公募した。
その一つ「トイレ2」は、こつ然とストーンサークルが出現したかのような斬新なデザイン。屋根を支えるのは、地元では「残念石」として知られる高さ2.5~3メートルの巨石である。大坂夏の陣(1615年)で焼失した大坂城を再建するため、石垣用の石が各地から集められたが、現地に到着できなかったものが河原などに放置されていたのだ。
黒い大きな天井を支えるのが、大阪城にたどり着けなかった残念石。トイレ2は小林広美さんに加え、大野宏さん、竹村優里佳さんの3人で設計を担当
「トイレ2」に使用したのは、京都府木津川流域に残されていたもので、約400年越しで大阪に到着したことになる。設計を担当した一人・小林広美さんは「この巨大な石を、当時の技術で切り出した人間の力を感じてほしい。そして過去と現在、未来への思いをつなげられる万博になればと思っている」と話す。
「70年の大阪万博では月の石が人気を集めたが、残念石にも注目してほしい」と語る小林さん
いのち動的平衡館の近くにある「トイレ8」は“多様性”がテーマ
年が明ければ開催まで約100日。個性的なパビリオンが次々と完成し、最先端技術や世界中の文化が相互に作用しあうことで、万博に“いのち”が吹き込まれていくのは、生物学者の福岡教授が話す生命発生論に通じる。万博そのものが 一つの生命体として“いのちの輝き”を発信できれば、入場券販売不振の懸念など吹き飛ぶのかもしれない。
万博会場の最寄り駅となる大阪メトロ中央線「夢洲」駅は2025年1月19日に開業
取材・文・撮影=土師野 幸徳(ニッポンドットコム編集部)
バナー写真:生物学者・福岡伸一さんプロデュースの「いのち動的平衡館」