日本一有名な断崖絶壁! 福井「東尋坊」:荒波と柱状節理が生み出した奇岩の景勝地
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高さ25メートルの崖から見下ろす絶景
福井県北部の坂井市にある「東尋坊」は、日本で一番有名な断崖絶壁といえるだろう。最大で高さ25メートルにもなる柱状節理の崖は、ロケ地として映画やドラマにたびたび登場し、殺人や身投げの現場になったり、刑事が犯人を追い詰めたりする。そそり立つ岩肌に日本海の荒波が打ち付ける風景は、不穏な気持ちを抱かせ、訪れたことがない人の心にも刻まれているのだ。
柱状節理は火山から噴き出した溶岩が冷えていく際、収縮して固まることで形成される多角形をした柱状の割れ目。東尋坊は約1300万年前の溶岩を荒波が削り、複雑で美しい景観を生み出した。
国の名勝、天然記念物で、越前加賀海岸国定公園の特別保護地区にも指定されている。自然景観や眺望への配慮からフェンスなどはなく、絶壁の縁まで行くことが可能。足はすくむが、その迫力ある絶景は一見の価値がある。
「千畳敷」という波打ち際の岩場までは階段が続いており、複雑な柱状節理の造形を側面からじっくりと観察しながら散策できる。ちなみにドラマの中では、死体が打ち上げられるシーンで登場することが多い場所だ。
遊覧船から眺める奇勝・奇岩
東尋坊は、海上から見上げるのもおすすめ。最も高い絶壁がある入り江「大池」のすぐ横から東尋坊観光遊覧船が運航しており、北へ約1.5キロの雄島(おしま)までを30分間で周遊する。船上からしか見られない絶景ポイントや奇岩が盛りだくさんなので、旅程に組み込んでみてはどうだろう。
雄島は越前海岸沿いで最も大きい島で、古くから「神の島」としてあがめられてきた。無人島だが、7世紀半ばの創建と伝わる大湊神社や雄島灯台がある。
同じく柱状節理が観察でき、斜め45度に傾いた「波型岩」や、柱が岩にぶら下がったような「ハチの巣岩」など、東尋坊とは一味違う神秘的な情景を織りなしている。
悪僧の名を冠した夕日の名所
海から見える奇岩にはそれぞれ名称が付いており、船頭さんが教えてくれる。「ライオン岩」や「ろうそく岩」、「六枚屏風(びょうぶ)岩」などに加え、最近見つかったのが隠れ恐竜の愛称「ティラ坊」だ。恐竜化石の発掘で日本一を誇り、「恐竜王国」を名乗る福井県が推す新名所で、発見から4年ほどで東尋坊の注目スポットとなった。
遊覧船は波の穏やかな日には、大池の奥まで入って行くので、巨大な柱状節理を間近に眺められる。
東尋坊は、かつて平泉寺(福井県勝山市)にいた僧の名に由来すると伝わる。悪事を繰り返す、怪力の乱暴者だったという。ある時、東尋坊と恋敵になった僧が海辺見物に誘い出し、眺望の良い崖の上で酒盛りを催す。どんどん酒をすすめられた東尋坊は寝込んでしまい、海に突き落とされたのだった。現代のサスペンスドラマさながらの事件で殺された悪僧の名が、北陸屈指の景勝地として知れ渡っているのは複雑である。
北陸新幹線は金沢-敦賀間の延伸で、東尋坊行きのバスがある「芦原(あわら)温泉」駅にも停車するようになった。東尋坊は夕陽百選にも入る名所なので、日没前に訪れて絶景を眺め、夜は温泉宿で海の幸や湯を堪能する人が増えそうだ。
東尋坊
- 所在地:福井県坂井市三国町安島64-1
- アクセス:JR「芦原温泉」駅から京福バス「東尋坊行き」で約45分、えちぜん鉄道「三国」駅から京福バス「東尋坊行き」で約15分、北陸自動車道金津ICから車で約15分
- 東尋坊観光遊覧船:営業時間=午前9時~午後4時、冬季(11月~3月)は午前9時~午後3時30分 定休日=水曜日 料金=中学生以上1800円、小学生900円
取材・文・写真=ニッポンドットコム編集部
バナー写真:夕日を浴びる東尋坊の断崖