大阪名物たこ焼きの体験型テーマパーク「道頓堀くくるコナモンミュージアム」:フワトロ食感生み出す職人技を伝授

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B級グルメの町で生まれたたこ焼き店「たこ家(や)道頓堀くくる」が手掛ける「コナモンミュージアム」。浪速っ子のソウルフードを本場で味わい、おいしい作り方や歴史まで学べるとあって食道楽の訪日客に好評を博している。

たこ焼きの本場で約40年の行列店

お好み焼きや焼きそば、たこ焼きから、豚まん(肉まん)、ギョーザ、うどん、ラーメンまで…。メリケン粉(=小麦粉)を主原料にした料理を“浪速っ子”は「粉もん(粉物)」と呼んでこよなく愛する。中でも筆頭格はたこ焼きだ。半球状のくぼみが並ぶ「たこ焼き器」に小麦粉を溶いた生地を流し込み、ブツ切りのタコを入れて丸く焼き、アツアツで食べる。「大阪でたこ焼き器のない家はない」といわれるほど愛される庶民の味である。

コナモンの聖地・道頓堀(大阪市中央区)エリアには、およそ30のたこ焼き店が密集し、路上でパクッと頰張る人も多い。この街をたこ焼きの本場にした立役者が、目抜き通りの道頓堀商店街で1985年に看板を上げた「たこ家道頓堀くくる」である。巨大なタコが身をよじらせる立体看板のインパクトが強烈だが、店の売りはやはり味わい。外はフワフワ、中はトロリとした生地と、大きくてプリッとしたタコの食感が浪速っ子をとりこにした。評判は全国に広まり、今や52店舗を展開する。

タコ看板が目印のくくる本店(写真上)。裏側の戎橋(えびすばし)横にもタコの姿が(下)
タコ看板が目印のくくる本店(写真上)。裏側の戎橋(えびすばし)横にもタコの姿が(下)

戎橋たもとのグリコサインの前で記念撮影すると、右側にタコがちゃっかり写り込む。実はこれ、くくる本店の裏側。いつも行列の正面側だけでなく、裏でもタコが客寄せしている。

2011年には本店の東100メートル、飲食店の激戦地に旗艦店「道頓堀くくるコナモンミュージアム」をオープンした。食べるだけではなく、プロの指導で本格的なたこ焼きを作れて、粉もんの歴史や文化にも親しめる体験型のフードテーマパークだ。

食べ物の立体看板が並ぶ商店街の中心地に立ち、こちらも行列。店内では粉もん文化をパネル展示で紹介
食べ物の立体看板が並ぶ商店街の中心地に立ち、こちらも行列。店内では粉もん文化をパネル展示で紹介

学んで楽しく、食べておいしいプロの味

ミュージアムは地上3階・地下1階。入り口の実演販売カウンターには、食欲をそそる匂いに誘われた客が列を作る。1階と2階にあるイートインスペースでは、粉もんの豆知識をまとめたパネル展示があり、読めば「粉もん通」になれるかも。

「お好み焼きともんじゃ焼きは別の先祖」など粉もんの豆知識がいっぱい
「お好み焼きともんじゃ焼きは別の先祖」など粉もんの豆知識がいっぱい

店内に掲示している「鉄板コナモン系統図」によると、昭和初期に大阪の屋台で流行した「ラヂオ焼き」がたこ焼きのルーツだという。名前は流行品のラジオにあやかり、牛すじ肉やこんにゃくなどを具にしていた。当時の兵庫県・明石は名産のタコを入れた「玉子焼き(明石焼き)」が定番で、その影響を受けて大阪もタコを具材にしたそうだ。

職人技を対面レクチャー。困ったら手助けしてくれるので初心者も安心だ
職人技を対面レクチャー。困ったら手助けしてくれるので初心者も安心だ

地下の対面型カウンターでは、くくるの職人が作り方を直伝。まずはたこ焼き器の穴ごとに8分目まで生地を流し、タコとお好みの具を満遍なく穴に入れる。続いて残りの生地でヒタヒタにして、薬味を投入する。生地が固まってきたら穴からあふれた部分を縦横に切り、一つ一つ裏返そう。後は穴の中で回して形を丸く整えながら、キツネ色になるのを待つだけだ。

生地は2度に分けて流し、裏返す時に押し込まないのがフンワリと焼き上げるコツ。風味付けに白ワインをかけるのがくくる流だ
生地は2度に分けて流し、裏返す時に押し込まないのがフンワリと焼き上げるコツ。風味付けに白ワインをかけるのがくくる流だ

お店と同じ素材や器具を使って職人気分を味わえる
お店と同じ素材や器具を使って職人気分を味わえる

プロ仕様の銅板たこ焼き器に秘伝の粉、講師のマンツーマン指導でお店と同じフワトロ食感に仕上がるはず。たこ焼き職人認定の証しとしてオリジナルの鉢巻きが授与される。コツを覚えれば我が家のたこ焼きもワンランクアップできるかも⁉

カウンターのノートにはさまざまな言語で「タコがこんなにおいしいとは思わなかった!」「母国に帰っても作りたい」といった感想がつづられていた。中国・韓国・東南アジア、次いで欧米の客が多いそうだ。「作り方を教える時は、身ぶり手ぶりと片言の英語で『ライク・ディス!』ってやれば大概通じるもんです」と講師が言うようにインバウンドも大歓迎だ。

ノートに国際色豊かなメッセージが残る
ノートに国際色豊かなメッセージが残る

3階にあるたこ焼きの食品サンプル制作体験コーナーは、子どもに好評だ。講師は「溶かしたろうを型に流すだけで本物を作るよりも失敗が少ないし、色の組み合わせやトッピングで個性的な仕上がりになる。夏休み時期は自由工作の宿題用にと小学生が詰めかけます」と話す。食品サンプルは日本独自の文化だが、今や海外でも大人気。口コミなどで知った訪日客も数多く訪れるという。

お湯で溶かしたろうを成型。本物そっくりで食べちゃいそう
お湯で溶かしたろうを成型。本物そっくりで食べちゃいそう

デコレーション次第で十人十色の仕上がりに。こちらも完成すると鉢巻きがもらえる
デコレーション次第で十人十色の仕上がりに。こちらも完成すると鉢巻きがもらえる

万博を機にたこ焼き文化を世界へ

店内ではしきりに“た~こやき た~こやき♪”という混声合唱が流れる。きっと誰もが聞き覚えのあるヘンデル作曲「ハレルヤコーラス」の替え歌「たこやきハレルヤ」で、気づけば口ずさんでしまう。くくるが2010年上海万博に出店した際のPRソング。半年で50万食を販売してブームを呼び、同年に中国進出を果たすのに貢献した。

大阪「花の万博」(90年)、愛知「愛・地球博」(05年)に続き、くくる3度目の国際博覧会出店で上海に遠征=2010年10月30日、中国・上海市(時事)
大阪「花の万博」(90年)、愛知「愛・地球博」(05年)に続き、くくる3度目の国際博覧会出店で上海に遠征=2010年10月30日、中国・上海市(時事)

もちろん地元開催の2025年大阪・関西万博にもくくるは出店する。日本の食材と職人技にこだわったおいしい“TAKOYAKI”で、大阪に押し寄せる世界の人をもてなす。

 周辺には道頓堀川に面した宗右衛門町店(上)、御堂筋沿道のミナミ店(下)も。このタコが大阪から世界へと触手を伸ばす⁉
周辺には道頓堀川に面した宗右衛門町店(上)、御堂筋沿道のミナミ店(下)も。このタコが大阪から世界へと触手を伸ばす⁉

詳細は「コナモンミュージアム」公式サイトを参照

取材・文・撮影=ニッポンドットコム編集部

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