福岡で豚骨ラーメン「一蘭」の聖地を巡る:製造拠点&観光施設「一蘭の森 糸島」で、味とサービスの秘密に迫る

国内外に熱狂的なファンを持つ、福岡発祥の豚骨ラーメン「一蘭」。その製造拠点「一蘭の森 糸島」は観光スポットとして人気を呼んでおり、多くのインバウンドも押し寄せている。

インバウンドに絶大なる人気の「一蘭」発祥の地へ

今や世界中で愛される和食の中で、訪日観光客からすしをしのぐ人気を得ている「ラーメン」。超人気店でチャーシューや煮卵、ネギなどをぜいたくにトッピングしても2000円を超えることはあまりなく、シンプルな中華そばなら500円以下で提供するチェーン店も存在し、日本独自に発展した料理を手軽に楽しめるのが魅力だ。

特に、外国人から圧倒的な支持を得ているのが、豚骨ラーメンの「一蘭」である。コシのある細麺に、濃厚ながら臭みのないスープが絡み、ラーメン通はもちろん、老若男女に愛されている。さらに、非接触型のユニークなサービス形態も人気の秘密。食券を購入し、1席ずつ間仕切りがある「味集中カウンター」に座る。味の好みはオーダー用紙に書き込んで提出。ラーメンやライス、麺のおかわり「替玉」なども簾(すだれ)の下から提供され、店員の姿を見ることはほとんどない。周りを気にせずにラーメンの味に集中することで、その記憶がより深く刻まれるという仕掛けである。

一蘭のラーメンは、真ん中に「赤い秘伝のたれ」が浮いている
一蘭のラーメンは、真ん中に「赤い秘伝のたれ」が浮いている

味の濃さやトッピングの具材などを細かく指示できる「オーダー用紙」。日・英・中・韓の4カ国語に対応している
味の濃さやトッピングの具材について、細かく指示できる「オーダー用紙」。日・英・中・韓の4カ国語に対応している

一度食べるとまた食べたくなる中毒性のある味わいで、福岡での観光や出張のついでに、博多区中洲にある聖地「一蘭本社総本店」を巡礼する人も少なくない。

そして近年、人気となっているのが県西部・糸島半島にある製造拠点「一蘭の森 糸島」。製造所に「とんこつラーメン博物館」や、昭和時代の雰囲気漂う店舗を併設しており、ファンなら一度は訪れたい場所だ。

ちょうちんがビルの最上部までズラリと並ぶ一蘭本社総本店
ちょうちんがビルの最上部までズラリと並ぶ一蘭本社総本店

東京ドーム2個分の巨大施設

海辺のリゾート地としてにぎわう糸島。その人気に火が付く少し前の2014年、一蘭の製造拠点としてオープンしたのが「一蘭の森 糸島」だ。豊かな自然が生み出す清らかな水や空気が、スープや麺の繊細な味に生かされているという。

糸島の人気観光スポット「一蘭の森」の入り口
糸島の人気観光スポット「一蘭の森」の入り口

敷地面積は東京ドーム2個分の9万平方メートル超。竹林に挟まれた清閑な雰囲気の小道を進むと、食欲を刺激する豚骨スープの匂いが漂ってくる。そして視界が開けると、「一蘭」の巨大なロゴマークを掲げる建物が出現する。

「すぐに食べたい!」という気持ちを抑え、景色を楽しみながら敷地の奥まで散策。製造所、博物館を見学してから、食事や土産物探しを楽しむのがおすすめの順路らしい。

一蘭の森の建物。左手前が店舗、その右奥に博物館、製造所がある
一蘭の森の建物。左手前が店舗、その右奥に博物館、製造所がある

案内板の「おすすめの順路」に沿って見学しよう
案内板の「おすすめの順路」に沿って見学しよう

“秘伝”の一部が垣間見える、“こだわり”だらけの展示

まずは、麺やスープを生み出す製造所へ。一蘭は北海道から沖縄まで全国展開し、米国・ニューヨークや香港、台湾にも店舗を持つが、味の決め手となる「赤い秘伝のたれ」とうまみ成分が詰まった「だし」は、全て糸島でつくられている。さらに、この2つのレシピは、一蘭の代表と専属職人3人しか知らないトップシークレットだ。

秘伝の味を守るため、工場内の様子は製麺作業の一部をガラス越しに眺められるだけ。それでも、壁面のパネルで生産工程を詳しく解説してあるので、一蘭ファンなら必見だろう。

厳しい品質チェックで知られる一蘭の製造所。中央のガラス窓から、内部の様子がのぞける
厳しい品質チェックで知られる一蘭の製造所。中央のガラス窓から、内部の様子がのぞける

近年、豚骨ラーメンに唐辛子ベースの赤いたれを浮かべる店が増えているが、一蘭が元祖!
近年、豚骨ラーメンに唐辛子ベースの赤いたれを浮かべる店が増えているが、一蘭が元祖!

次は「とんこつラーメン博物館」へ。福岡発祥のとんこつラーメンの歴史はもちろん、調理工程や提供システム、研究姿勢など、一蘭のこだわりが存分に詰まっている。

一蘭のほとんどの店舗では厨房(ちゅうぼう)での作業が見えないので、調理道具を間近で見られるだけでも貴重な体験。味集中カウンターの展示は、裏側から簾をまくり上げて店員気分を味わえるので、絶好の記念撮影スポットになっている。そして何より、「世界一とんこつラーメンを研究し続ける会社」を自負する数々の取り組みには、“たかがラーメン”と考えていた人でも頭が下がるはずだ。

普段は見ることができない調理過程や道具などを展示する「とんこつラーメン博物館」
普段は見ることができない調理過程や道具などを展示する「とんこつラーメン博物館」

記念撮影が可能な味集中カウンター
記念撮影が可能な味集中カウンター

一蘭の歴史や研究・開発体制などのパネルも読み応えあり
一蘭の歴史や研究・開発体制などのパネルも読み応えあり

製造所に併設する世界唯一の店舗

そして、いよいよ実食タイムへ。「昭和10年代」「昭和20年代」「昭和30年代」の店舗が並び、それぞれに当時の博多の町並み写真が飾られるなどレトロな演出。味集中カウンターのほか、屋台風や家族連れ用のテーブル席などもあるので、いつもと違う雰囲気で絶品のラーメンが味わえる。

店舗が並ぶエリア。一番左にあるのが土産物店
店舗が並ぶエリア。一番左にあるのが土産物店

一蘭おなじみの券売機。おすすめは追加チャーシューやきくらげ、のり、半熟塩ゆでたまごが付いた「ICHIRAN5選」
一蘭おなじみの券売機。おすすめは追加チャーシューやきくらげ、のり、半熟塩ゆでたまごが付いた「ICHIRAN5選」

「昭和30年代」の店内は屋台風
「昭和30年代」の店内は屋台風

赤い秘伝のたれは、唐辛子をベースに30種類以上の材料を調合し、何日も熟成させたもの。その適度な辛みと深いうまみが、くせのない豚骨スープに絶妙のアクセントを加える。世界唯一の製造所の横で、その味を堪能できるのだから、一蘭ファンには最高の体験だ。

スタンダードな「天然とんこつラーメン」と、人気サイドメニューの「煮こみ焼豚皿」と「抹茶杏仁(あんにん)豆腐」
スタンダードな「天然とんこつラーメン」と、人気サイドメニューの「煮こみ焼豚皿」と「抹茶杏仁(あんにん)豆腐」

製造所の横で、絶品のラーメンが味わえるのは「一蘭の森 糸島」だけ
製造所の横で、絶品のラーメンが味わえるのは「一蘭の森 糸島」だけ

一蘭の森や本店を訪れたなら、「那の川店 ~発祥の店~」(福岡市南区)にも立ち寄ってみてほしい。一蘭は1960年の創業以来、伝統の味を守りつつ、味集中カウンターや記入式オーダーなど新しいサービス形態を生み出し、続々と店舗を拡大してきた。その出発点といえる那の川店は、一蘭の聖地を巡る旅には欠かせない場所といえるだろう。

那の川店は、歩道からガラス越しに厨房の様子が見られる珍しい店舗
那の川店は、歩道からガラス越しに厨房の様子が見ることができる珍しい店舗

誇らしげな「一号」の文字が染めぬかれたのれん
誇らしげな「一号」の文字が染めぬかれたのれん

一蘭の森 糸島

  • 住所:福岡県糸島市志摩松隈256-10
  • 営業時間:午前10時~午後4時(ラストオーダーは午後3時45分)
  • 定休日:なし
  • 料金:見学・駐車場は無料

取材・文・写真=ニッポンドットコム編集部

バナー写真:広大な製造拠点「一蘭の森 糸島」

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