全身骨格50体! 国内最大の「恐竜博物館」:新幹線延伸で注目高まる福井の人気スポット

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福井県の目玉観光地「恐竜博物館」は北陸新幹線延伸を見越して2023年にリニューアルした。没入感たっぷりの映像空間やリアルな研究体験コーナーも魅力。子どもはもちろん、大人にも驚きと発見がいっぱいだ!

恐竜に“全振り”した観光PR

JR北陸新幹線・福井駅に降り立った観光客は、あまりに恐竜だらけで驚くだろう。改札口では巨大な全身復元骨格がお出迎え。駅前には全長10メートル、高さ6メートルのフクイティタンをはじめ4体のロボットが鳴き声を上げ、首や胴体を揺すって歓迎してくれる。

左:駅1階コンコースのフクイサウルスの骨格模型 右:駅舎西側を飾る“飛び出す恐竜” 下:駅前広場のロボットは2015年に設置したフクイラプトル、フクイサウルス、フクイティタンの3体に加え、24年3月からティラノサウルスも登場
左:駅1階コンコースのフクイサウルスの骨格模型 右:駅舎西側を飾る“飛び出す恐竜” 下:駅前広場のロボットは2015年に設置したフクイラプトル、フクイサウルス、フクイティタンの3体に加え、24年3月からティラノサウルスも登場

福井県が「恐竜王国」となるきっかけは、お隣の石川県で肉食恐竜の歯の化石が発見されたこと。それを受けて同じ地層が広がる勝山市で1989年から本格的な発掘調査を開始。約1億2000万年前(前期白亜紀)の地層が地表に露出している好条件により、これまで30年余で国内最大規模の恐竜化石を発掘してきた。

その勝山市で2000年にオープンしたのが、世界有数の標本数を誇る県立恐竜博物館だ。福井駅から車で1時間ほどかかるが、開業以来、累計1300万人が訪れた人気スポットだ。

上:勝山駅前ではフクイサウルスの親子像が出迎える 左:駅からの道中にもモニュメントや化石の模型が点在して気分が盛り上がる 右:館のキャラクター「恐竜博士」。3代目が玄関前に立ち、フォトスポットに
上:勝山駅前ではフクイサウルスの親子像が出迎える 左:駅からの道中にもモニュメントや化石の模型が点在して気分が盛り上がる 右:館のキャラクター「恐竜博士」。3代目が玄関前に立ち、フォトスポットに

メタリックな卵形が特徴の博物館は黒川紀章の設計。地上3階地下1階の本館(写真中央)に加え、地上3階建ての新館(右)が誕生した
メタリックな卵形が特徴の博物館は黒川紀章の設計。地上3階地下1階の本館(写真中央)に加え、地上3階建ての新館(右)が誕生した

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全身骨格とリアルな復元模型に圧倒される

博物館は2023年夏、施設を約1.5倍にする大規模リニューアルによってさらに魅力をパワーアップ。最大の見所は本館1階「恐竜の世界」ゾーン。本物の化石を使った10体を含む実物大の骨格標本50体は圧巻だ。

同館の「顔」である4分の3スケールのティラノサウルス・ロボット。同じメーカーの実寸大が福井駅前で見られる
同館の「顔」である4分の3スケールのティラノサウルス・ロボット。同じメーカーの実寸大が福井駅前で見られる

「実物の化石を9割使った標本もあります」と事業教育課課長の松下准城(じゅんじょう)さんが教えてくれた。40体は完全なレプリカだが、実物化石から型取りしているので十分にリアルだ。全身骨格の傍らには復元ミニチュアが同じポーズで並び、生きた姿への想像が膨らむ。

復元模型の彩色は模型作家の想像によるもの。本当はどんな色だったのだろう?
復元模型の彩色は模型作家の想像によるもの。本当はどんな色だったのだろう?

実物大の復元模型は、子どもが泣くほどリアル
実物大の復元模型は、子どもが泣くほどリアル

このゾーンで見逃せないのが「福井県の恐竜」コーナー。国産では初の復元であるフクイサウルスの全身骨格をはじめ、2023年9月に国内11例目の新種に認定されたティラノミムス・フクイエンシスなどの恐竜6種に加えて、極めて原始的な鳥類のフクイプテリクスも常設展示している。

県内で発見された新種、フクイサウルスとフクイラプトルがにらみ合う!?
県内で発見された新種、フクイサウルスとフクイラプトルがにらみ合う!?

リニューアルを機に加わった目玉展示が「ブラキロフォサウルスの実物ミイラ化石」。皮膚の模様、筋肉の痕跡など7700万年前の原形を奇跡的にとどめており、保存状態の良い化石としてギネス世界記録に登録されている。

全長7メートルのミイラ化石。米国の博物館からの貸出料は10年間で6000万円!
全長7メートルのミイラ化石。米国の博物館からの貸出料は10年間で6000万円!

絶滅動物に生命の神秘を学ぶ

ここまで見てきて、空や海の恐竜がいないことに気が付く。「いえいえ、恐竜ではないので別のゾーンにいます」と松下さん。恐竜の定義をざっくり言うと「直立歩行に適した骨格を持つ爬虫(はちゅう)類」で、前足の皮膚を翼にして飛ぶ翼竜や、ヒレで泳ぐ海竜などは含まれない。案外、知らない人は多いのではないか。

恐竜研究は日進月歩で、色鮮やかな羽毛を持つ「鳥の先祖」や、自動車並みに足が速い「ダチョウ恐竜」の存在も明らかになってきた。定説の更新は『ジュラシック』シリーズなどの映画にも影響を与えており、博物館ではティラノ・ロボットに唇を付けるなど展示も進歩している。

上:2階の展示。恐竜すら捕食する“海の王者”モササウルス科のティロサウルス(右奥)は人気が高い 下:鳥の進化を示す模型。祖先は翼竜ではなく、陸上を二足歩行していた獣脚類
上:2階の展示。恐竜すら捕食する“海の王者”モササウルス科のティロサウルス(右奥)は人気が高い 下:鳥の進化を示す模型。祖先は翼竜ではなく、陸上を二足歩行していた獣脚類

2階「生命の歴史」ではさまざまな古生物に出会える。約5億年前に出現した三葉虫に始まり、恐竜時代の海竜や翼竜、その絶滅後に陸上を支配した哺乳類と続き、ヒトの骨格標本で締めくくり。不思議な姿の絶滅動物に心を奪われ、生命の神秘に思いをはせられる。

左:古生代の終わり頃に現れた哺乳類の祖先。カバやネズミを思わせる外見だ 右:4本足のクジラの祖先 下:太古のクジラのほか、マンモスやオオツノジカも
左:古生代の終わり頃に現れた哺乳類の祖先。カバやネズミを思わせる外見だ 右:4本足のクジラの祖先 下:太古のクジラのほか、マンモスやオオツノジカも

一大化石産地ならではの体験がめじろ押し

2023年にオープンした新館は“体感する”楽しみが満載。エレベーターホールの中央には学名にフクイと付く県の恐竜5種と鳥類1種のモニュメントが立ち、その先に広がる特別展示室では迫真の映像と音響によって白亜紀へのタイムスリップ気分が味わえる。また通路沿いのガラス張りの収蔵庫は、標本の保管状況など「博物館の裏側」が垣間見えるユニークな趣向だ。

吹き抜けにそびえる「恐竜の塔」
吹き抜けにそびえる「恐竜の塔」

1、2階ぶち抜きの特別展示室。高さ9×幅16メートルの壁3面に恐竜時代の映像を投射する
1、2階ぶち抜きの特別展示室。高さ9×幅16メートルの壁3面に恐竜時代の映像を投射する

日本最大規模の化石発掘地・勝山の真骨頂が、臨場感あふれる体験コーナーの数々。実物を使った化石の分別、実際に現場で使っている専用ツールでのクリーニング、ティラノサウルスの頭骨模型の復元、CT画像での非破壊観察と、気分はすっかり恐竜博士。「春から秋までは、山中にある恐竜化石の発掘現場に行く体験ツアーを毎日実施しているので、ぜひご参加を」と松下さんは呼びかける。当時の土に立てば、白亜紀の光景が心に浮かぶだろう。

恐竜博士を目指す子どもはもちろん、大人も驚きと発見がいっぱいの博物館。時間を忘れて夢中になること間違いなし。

上:「見せる収蔵庫」を案内する松下さん 左:大量の石の中から化石を見つける体験。実物を使っている 右:石に埋まった恐竜の歯を削り出す体験も
上:「見せる収蔵庫」を案内する松下さん 左:大量の石の中から化石を見つける体験。実物を使っている 右:石に埋まった恐竜の歯を削り出す体験も

帰り際には、フィギュアをはじめ恐竜グッズが充実したお土産コーナーへ
帰り際には、フィギュアをはじめ恐竜グッズが充実したお土産コーナーへ

福井県立恐竜博物館

  • 住所:福井県勝山市村岡町寺尾51-11 かつやま恐竜の森内
  • 開館時間:午前9時から午後5時まで(入館は午後4時30分まで)
  • 休館日:第2・4水曜日(祝日の時は翌日が休館、夏休み期間は無休)、年末年始(12月31日・1月1日)
  • 入館料:一般1000円、高校・大学生800円、小・中学生・70歳以上500円、未就学児は無料。団体割引や年間パスポートあり
  • アクセス:JR福井駅前から直行の「恐竜バス」で片道1時間(土日祝日)。えちぜん鉄道福井駅から勝山駅まで1時間弱(冬季を除く土日祝日・夏休みは「恐竜列車」が運行)、勝山駅からバスで12~14分
  • ホームページ:https://www.dinosaur.pref.fukui.jp/ (外部リンク)

取材・文・撮影=ニッポンドットコム編集部

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