【漁港巡り】本州最北端のマグロの町、青森「大間」:最高峰ブランドの大トロを銀座の半額以下で味わう
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豊洲初競りで知られる最高峰ブランド「大間マグロ」
東京・豊洲市場(江東区)の2024年の初競りで、1億1424万円(238キロ)の超高値が付いた「大間マグロ」。新春の一番マグロに輝くのは13年連続で、19年には歴代最高の1本3億3360万円(278キロ)で競り落とされ、国内外で大きな話題を呼んだ。
いまや世界にとどろくマグロ産地「大間」は本州最北端、青森・下北半島の先っぽにある人口5000人ほどの小さな町だ。
最寄り駅のJR下北駅(むつ市)から車で1時間強、青森市からは約3時間を要し、観光地としてはアクセスに恵まれないが、極上のマグロを求めて足を運ぶ美食家も多い。一獲千金を狙う大間漁師に長年密着するドキュメンタリー番組のファンが、現地を訪れるケースも増えているようだ。
最近では、津軽海峡フェリーで1時間半ほどの函館を経由するルートも人気。函館でカニやイクラ、ウニを頰張り、海を渡って大間でマグロまで堪能すれば、この上ないぜいたくな旅となるだろう。
本州最北端の地「大間崎」、グルメも土産物も充実
大間観光で外せないのは、眼前に津軽海峡が広がり、「こヽ本州最北端の地」の石碑が立つ大間崎。その傍らには、かつて大間漁港で水揚げされた440キロもある巨大マグロのモニュメントがあり、絶好の記念撮影スポットとなっている。
津軽海峡は太平洋と日本海をつなぎ、大間の太平洋側では暖流の黒潮と寒流の千島海流(親潮)が混ざり合い、そこに対馬海流(津軽暖流)が流れ込む。プランクトンなど栄養素が豊富な海域で、マグロの餌となる小魚やイカが数多く生息する。
大間沖にマグロが来遊するのは晩夏から冬にかけて。魚は海水温の低下とともに脂を蓄えるので、青魚やイカをたっぷりと食べた冬の大間マグロは、大トロや中トロなどの質が格別なのだ。
大間崎の対岸には、函館市東部の山並みが見える。その途中に浮かぶ弁天島には「日本の灯台50選」に選出される大間埼灯台が立つ。白と黒のツートンカラーで、真っ赤な弁天神社本殿とのコントラストが美しい。
この灯台ができる前、歌人・石川啄木が大間崎から弁天島を眺め、名歌「東海の小島の磯の白砂にわれ泣きぬれて蟹とたはむる」を詠んだとされる。その歌碑を目当てに訪れる、啄木ファンもいるようだ。
大間崎近辺には、土産物店や飲食店が並んでいる。「大間観光土産センター」には水産加工品に加え、「大間まぐろ」シールやぬいぐるみなど、ご当地グッズも豊富。特に大間町観光協会が発行する「本州最北端大間崎到着証明書」は、旅の思い出にぜひ。
「漁師の店 魚喰いの大間んぞく」では、マグロ丼や刺し身のほか、値段が手ごろな「まぐ唐定食」(税込み1320円)が人気。ボリューム満点だが、柔らかく、味もあっさりとしていて箸が進む。
大間漁港近くで、マグロのにぎりに舌鼓
マグロの来遊時期には、運が良ければ大間漁港で水揚げの瞬間を目撃できる。作業の邪魔にならないようにすれば、漁協前の岸壁などで見学や写真撮影が可能。大間の漁法は1本釣りと、浮きを付けた長いロープから多数の釣り糸を垂らす「はえ縄」が主流。網漁と違って魚体に傷が付きづらいので、市場での評価がさらに高まるという。
港にある倉庫「旧冷蔵庫(キュウレイ)」では、お盆時期の「ブルーマリンフェスティバル」や、9~10月の日曜限定イベント「日曜日はマグロだDAY」などでマグロの解体が披露される。それに合わせて旅程を組むのもいいだろう。
大間マグロを味わうなら「やっぱり、にぎりずしで!」という方には、キュウレイ近くの「浜寿司」がおすすめ。看板メニューの「本鮪握り盛り合わせ」は、大トロと中トロ、赤身のにぎりに、鉄火巻きが1本付いて5940円(税込み)とお値打ちだ。
大将の伊藤晶人さんは「東京で出したら倍以上、銀座なら3倍の値が付くかも。『こんなに食べられない』と言う客もいるが、大間のマグロは脂が上質だから、みんなぺろりと食べちゃうよ」と太鼓判を押す。もちろん他のネタも新鮮で、海鮮丼の種類も豊富だ。
足を延ばして仏ヶ浦や下風呂温泉へ
浜寿司のあたりは、昔ながらの漁師町の雰囲気が漂う。スナックや居酒屋が並ぶ路地は「親富幸(おやふこう)通り」と呼ばれ、大間の夜の社交場だ。
少し南に歩くと、大間稲荷神社がある。航海・漁業の守護神として、中国や台湾、東南アジアで信仰を集める道教の「天妃神(天妃媽祖大権現)」を合祀(ごうし)する珍しい神社で、7月の海の日(第3月曜日)に開催する「天妃様行列」は異国情緒あふれるパレードとして有名だ。
旅程に余裕があれば、国の名勝で天然記念物に指定される「仏ヶ浦」(佐井村)や「下風呂(しもふろ)温泉」(風間浦村)などにも足を延ばしたい。
緑白色の巨大な奇岩が極楽浄土を思わせる仏ヶ浦は、4月下旬から10月末まで運行する観光船で、海上から眺めるのが定番。冬場でも展望所から見下ろしたり、遊歩道で岩場に降りたりして絶景を楽しめる。
下風呂温泉郷のある風間浦村は、文豪・井上靖の小説『海峡』の舞台となった。それにちなんだ日帰り温泉施設「海峡の湯」では、“万病に効く”とたたえられる湯を気軽に堪能できる。
取材・文・写真=ニッポンドットコム編集部
バナー写真:本州最北端の地・大間崎にあるマグロのモニュメントと大間埼灯台