“八方正面”の世界遺産「姫路城」:どの角度からも美しい名城の人気ビュースポットを巡る
Guideto Japan
旅 建築- English
- 日本語
- 简体字
- 繁體字
- Français
- Español
- العربية
- Русский
4つの天守が織りなす絶景を多方向からめでる
姫路城は江戸期以前に築かれた12の現存天守の1つ。南東にある大天守に、西と乾(北西の意)、東の3つの小天守がつながる連立式天守閣は、江戸時代初期の1609(慶長14)年に完成。近世城郭建築の最高傑作との呼び声も高く、1931(昭和6)年には国宝に指定された。
4つの天守に加え、数多くの城門や渡櫓(わたりやぐら)、石垣などが複雑に配置されているため、眺める角度によって趣が違う。どの方位から見ても美しいことから「八方正面」とたたえられる。1993(平成5)年にユネスコの世界文化遺産に登録されたのを記念し、市民からの公募によって「世界遺産姫路城十景」を選出するなど、絶景ポイントは数多い。
十景の選定から30年近く経過し、新しい人気ビュースポットも誕生している。姫路城のさまざまな表情を楽しみたい人は、徒歩だと時間が掛かるので、シェアサイクル「姫ちゃり」を利用するのがおすすめ。貸し出しステーションが、駅や姫路城周辺に点在するので便利だ。
■大手前通り(JR姫路駅前) ※世界遺産姫路城十景
姫路駅北口(姫路城口)を出ると、広々とした歩道を含めて幅50メートルもあるメインストリート「大手前通り」が縦に伸びている。その奥に鎮座するのが、姫路城の大天守だ。
迫力ある姿のためにすぐ近くに感じられるが、駅から天守までは直線距離で約1.4キロも離れている。現代の町並みと江戸時代の城が融合した風景は、世界遺産姫路城十景のリストで1番上に記載される。
■キャッスルビュー
大手前通り越しの姫路城が望める場所で近年人気なのが、2013年にオープンした駅直結の眺望デッキ「キャッスルビュー」。2階部分にあるので目線が高く、街路樹が邪魔にならないため、西小天守と乾小天守がよく見える。内部は木材を基調にした居心地の良い空間で、ベンチも設置してあるので、ゆったりと絶景を楽しもう。
■三の丸広場 ※世界遺産姫路城十景
内堀の桜門橋を渡り、大手門をくぐった先にある三の丸広場。ここまで近寄ると、天守を取り囲む渡櫓や門、石垣がよく見え、「難攻不落の城」の印象がより強まる。三の丸広場は入城券の必要ない無料エリアなので、夜のライトアップを間近で眺めたい人にもおすすめだ。
■イーグレひめじ
姫路城の南にある大手前公園に面する「イーグレひめじ」は、城の石垣をモチーフにした複合文化施設。「イーグレ(egret)」は英語でシラサギのことで、姫路城の別称「白鷺城」に由来する。5階部分が入場無料の屋上展望庭園になっており、ここから見る天守は威厳たっぷりだ。
■城見台公園 ※世界遺産姫路城十景
南東にある城見台公園には、石垣のような展望所や大天守の鯱瓦(しゃちがわら)のオブジェが設置してある。鯱瓦の間から望む姫路城は、まるで額縁に収まった絵画のよう。こちらも世界遺産姫路城十景の1つ。
■姫路市立美術館(前庭) ※世界遺産姫路城十景
レトロなれんが造りの姫路市立美術館は、1905(明治38)年に陸軍の兵器庫として建造されたもの。大正時代に増築され、戦後は姫路市役所となっていたが、1983年に美術館へと生まれ変わった。赤れんがの館の背景にそびえる姫路城は、和洋折衷で趣深い。
■シロトピア記念公園 ※世界遺産姫路城十景
姫路城の北側に広がるシロトピア記念公園は、市政100周年記念事業の一環で開催された「’89姫路シロトピア博」の会場跡地。多くの観光客が見逃してしまいがちな天守北面は、大天守と東小天守、乾小天守の下に、美しい曲線を描く多門櫓が重なるため、より威風堂々たるたたずまいだ。
■男山配水池公園 ※世界遺産姫路城十景
姫路城の鎮守社「男山八幡宮(はちまんぐう)」がある男山は、標高57.5メートルの小さな山。頂上の男山配水池公園までの階段はかなりの急こう配だが、連立式天守閣をめでるには最高のポイントなので頑張って登ろう。北西にある乾小天守を中心に、4つの天守全てがばっちりと拝める。
■景福寺公園 ※世界遺産姫路城十景
城の西方向にある景福寺公園からは、小天守の中で最も大きい乾小天守と大天守が並んで見える。西と東の小天守はほぼ同規模だが、東の方がやや小さい。景福寺山は、幕末に姫路城に迫った新政府軍が、大砲を設置したことで知られている。この美しく立派な城を砲撃するというのは、どんな心持ちであったのだろう。
姫路城を借景とする好古園
世界遺産姫路城十景には他に、西の名古山や北の増位山、姫路駅南側の手柄山の3カ所が選ばれているが、徒歩や自転車で観光する人には少し遠い。
城の全貌を望めるわけではないが、大天守や櫓を借景とする「好古園」も見逃せない。市政100周年記念として、城の南西に残る「西御屋敷跡」に造園された約1万坪の日本庭園だ。趣の異なる9つの庭園で構成されており、多くの時代劇映画やドラマのロケ地として知られている。江戸時代にタイムスリップした気分で散策しながら、庭園越しに見える天守や西の丸の櫓群を眺めてみては。
取材・文・写真=ニッポンドットコム編集部