玉露や柚子、山椒が香る「季の美 京都ドライジン」:伏見の水と地元産ボタニカルが織りなす繊細な味わい

古都で生み出される「季の美 京都ドライジン」は、玉露や柚子が香る和製ジン。日本のクラフトジン・ブームを牽引する京都蒸溜所やブランドハウスを訪れ、その繊細かつ豊かな味と人気の秘密に迫る。

日本のクラフトジン・ブームの先駆け「季の美」

「地酒を飲めば、その土地のことが分かる」と言われるが、今や日本酒に限ったことではない。クラフトビールやクラフトジンなど、地元の水や素材を生かす小規模酒造メーカーが全国各地に増えている。

特にクラフトジンは、地域の風土を色濃く映す。ジンはスピリッツに、果実やハーブ、スパイス、木の皮や根といった「ボタニカル」を投入し、再蒸溜させて味や香りを付けたもの。ボタニカルにはセイヨウネズの実・ジュニパーベリーのみが必須で、通常5~10種類程度を組み合わせ、メーカーごとの独自性を打ち出す。その土地ならではの素材で風味を生み、さらに特産の果実などを使ってカクテルにすることもできるのだ。

日本のクラフトジン・ブームは、近年始まったばかり。それを牽引するのが「京都蒸溜所」だ。玉露や柚子、山椒など地元産のボタニカルを中心に使用した「季の美 京都ドライジン」を2016年から販売。ジン初心者でも飲みやすいクリアなテイストと、古都の香り漂うユニークさで多くのファンを獲得し、クラフトジンの奥深い世界へといざなっている。

ジンはトニックウォーターで割るのが定番だが、クリアで繊細な味わいの「季の美」の個性はソーダ割りで際立つ。「季の美House」にて
ジンはトニックウォーターで割るのが定番だが、クリアで繊細な味わいの「季の美」の個性はソーダ割りで際立つ。「季の美House」にて

京都市役所や京都御苑に程近いブランドハウス「季の美House」
ブランドハウス「季の美House」は、京都市役所や京都御苑に程近い場所にある

京都のクラフトマンシップをジンに込める

京都蒸溜所の創業者は、ジンの本場・英国出身のデービッド・クロールさんと妻の角田紀子・クロールさん、マーチン・ミラーさん。クロール夫妻は東京で1990年代から、シングルモルトウイスキーを中心に扱う輸出入業を始めた。日本に初上陸させたブランドは数多く、その中には英国のクラフトビールやクラフトジンなども含まれる。

2000年には英国・ウイスキーマガジン社の編集長だったマーチンさんと共に、日本語版『ウイスキーマガジン』を発行。そこから親交を深めた3人は、2014年に京都蒸溜所を立ち上げた。最初はウイスキーを手掛けようとしたが、日本にも質の高い小規模蒸溜所があるため、海外ではやり始めていたクラフトジンに目を付けたという。

南区吉祥院嶋野間詰町にある京都蒸溜所。通常は内部非公開
南区吉祥院嶋野間詰町にある京都蒸溜所。通常は内部非公開

アイルランド出身でプロダクト・マネージャーのリアム・モリッシーさんが、蒸溜責任者を務める
アイルランド出身でプロダクト・マネージャーのリアム・モリッシーさんが、蒸溜責任者を務める

古都・京都を選んだのは、歴史あるクラフトマンシップに感銘し、インスピレーションを得たいと考えたから。織物や陶芸から、料理や食材まで、数々の伝統を受け継ぐ町で、「長年愛されるクラフトジンを製造し、伝統の一つになりたい」との思いが込められているという。

地元の素材も大きな魅力だった。京都蒸溜所のある南区は、酒蔵の町・伏見区に隣接する。かつて伏見は「伏水」の字を当てたほど、酒造りに最適な澄んだ伏流水が豊富な地。季の美では、「月の桂」で知られる老舗酒蔵・増田徳兵衛商店の仕込み水を使用する。

ボタニカルにも玉露や柚子、山椒、赤しそと、京都産の逸品を集め、古都らしい風味を生み出す。1879(明治12)年創業の宇治の老舗「堀井七茗園」のてん茶を使用した「季のTEA 京都ドライジン」を主力商品として展開するなど、地元の伝統との融合も実現している。

一番左が伏見の名水のタンクで、真ん中にはベースとなるライススピリッツが入る
一番左が伏見の名水のタンクで、真ん中にはベースとなるライススピリッツが入る

左から「季のTEA 京都ドライジン」「季の美 勢(せい) 京都ドライジン」「季の美 京都ドライジン」。「勢」はアルコール度数が高く、カクテルに最適
左から「季のTEA 京都ドライジン」「季の美 勢(せい) 京都ドライジン」「季の美 京都ドライジン」。「勢」はアルコール度数が高く、カクテルに最適

古都の素材を生かす手間を掛けた製法

季の美のボタニカルは、礎・柑・凛・辛・茶・芳の6つのエレメントで構成。ジュニパーベリーと赤松、オリスをベースに、柚子とレモン、山椒と木の芽、生姜、玉露、赤しそと笹を加え、計11種類の素材を使用する。

(左上)ジュニパーベリーはマケドニア産(右上)京都産の柚子に、国産レモンの皮を加える(左下)山椒も京都産から厳選。実だけでは強く出過ぎるため、葉なども使用する(右下)宇治の老舗が手掛ける玉露
(左上)ジュニパーベリーはマケドニア産(右上)京都産の柚子に、国産レモンの皮を加える(左下)山椒も京都産から厳選。山椒の実だけでは強く出過ぎるため、木の芽も使用する(右下)宇治の老舗が手掛ける玉露

ベーススピリッツは、厳選した国産のライススピリッツ。小麦や大麦、とうもろこしやサトウキビを原料とする通常のニュートラルスピリッツよりも、クリーンでまろやかな味わいを生むという。多くのジンは、スピリッツにボタニカルを一気に投入するが、季の美ではエレメントごとに蒸溜。それぞれの素材に適した時間を掛け、味や香りを最大限に抽出する。その後、6つの原酒と伏見の名水をブレンドし、熟成させるのだ。

京都蒸溜所は2020年、唯一無二の味が認められ、ワインとスピリッツの製造で世界2位を誇るフランスのペルノ・リカール社と資本提携。その世界的な販売網を生かし、現在は英国やオーストラリア、シンガポールなど30カ国に輸出している。

手前に並ぶのがエレメントごとに分けられた原酒のタンク。中央奥に見えるのが、メインで稼働する「ポットスチル(単式蒸溜器)」
手前に並ぶのがエレメントごとに分けられた原酒のタンク。中央奥に見えるのが、メインで稼働する「ポットスチル(単式蒸溜器)」

ブレンド後にウイスキー樽で熟成させ、風味付けをする限定商品「季の美 エディションK」も人気
ブレンド後にウイスキー樽で熟成させ、風味付けをする限定商品「季の美 エディションK」も人気

6つのエレメントの原酒を味わえる空間

京都蒸溜所は一般には非公開だが、京都市役所近くにある築100年以上の町家を改装した「季の美House」で、こだわりの製法を詳しく紹介している。季の美のカクテルや軽食を提供するバーやショップもあり、クラフトジン・ファンに人気のスポットだ。

週末などには、6つのエレメントの原酒が味わえるセミナーを開催。それぞれの風味を楽しむだけでなく、自分でブレンドしてオリジナルジンづくりにも挑戦できる。ただ、広報担当者は「調合した後には、みなさんから『やっぱり、季の美の方がおいしい』と言って頂いています」と笑う。

セミナーでは「季の美 京都ドライジン」「季のTEA 京都ドライジン」「季の美 勢 京都ドライジン」と、6つのエレメントの原酒を試飲できる
セミナーでは「季の美 京都ドライジン」「季のTEA 京都ドライジン」「季の美 勢 京都ドライジン」と、6つのエレメントの原酒を試飲できる

季の美を使用した多彩なカクテルが楽しめるバー空間「季の美の間」
季の美を使用した多彩なカクテルが楽しめるバー空間「季の美の間」

2階の「展示の間」では、ジンの歴史や種類、ボタニカルについての解説のほか、VRで蒸溜所ツアーも楽しめる
2階の「展示の間」では、ジンの歴史や種類、ボタニカルについて解説している

10月からは京都府内限定で、丹後半島「天橋立ワイナリー」のワイン樽で熟成させた「季の美 京都ドライジン 天橋立ワイン樽貯蔵」を販売している。関西を訪れる際には、季の美Houseや京都市内のオーセンティックバーを旅程に組み込み、味わってみてはどうだろう。

現地まで行く機会がないという人には、11月末まで東京と横浜、大阪のバーで実施している “京都に染まる”プロモーションがお薦め。参加店舗に足を運べば、「季の美」のカクテルを通して、京都の風土と伝統が感じられるはずだ。

京都・木屋町の「BAR K6(ケーシックス)」で、「季の美 京都ドライジン 天橋立ワイン樽貯蔵」を使ったカクテルを作ってもらった
京都・木屋町の「BAR K6」で、「季の美 京都ドライジン 天橋立ワイン樽貯蔵」を使ったカクテルを作ってもらった

左がオレンジリキュールとレモンジュースを加え、赤ワイン塩を添えた「天橋立 ホワイト・レディ」、右が「季の美 京都ドライジン」を使った「ジン&トニック~スダチ~」
左がオレンジリキュールとレモンジュースを加え、赤ワイン塩を添えた「天橋立 ホワイト・レディ」、右が「季の美 京都ドライジン」を使った「ジン&トニック~スダチ~」

季の美House

  • 住所:京都市中京区河原町通二条上る清水町358
  • 営業時間:水・木・日=正午~午後9時、金・土=正午~午後10時(ラストオーダーは30分前)
  • 定休日:月曜日・火曜日
  • セミナー:季の美エレメンツテイスティングセミナー=3000円 開催日時は公式HPで確認
  • “京都に染まる”プロモーション:情報は公式インスタグラムで確認
  • アクセス:地下鉄東西線「京都市役所前」駅から徒歩5分

取材・文・写真=ニッポンドットコム編集部

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