世界遺産・日光二荒山神社:縁結びで人気! 日光山信仰の始まりとなった古社
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源頼朝や徳川家の崇敬を受けて栄える
男体山(なんたいさん、標高2486m)を神体山とする日光二荒山神社(栃木県日光市山内)。二荒山は男体山の古称で、観世音菩薩(ぼさつ)の住む「補陀落山(ふだらくせん)」が語源とされ、「二荒」の音読み「にこう」から「日光」の地名が生まれたという。
日光山を開いたのは、奈良時代から平安前期にかけて活動した僧・勝道(しょうどう、735-817)。766(天平神護2)年に華厳の滝から流れる大谷川(だいやがわ)を渡り、日光山内に草庵(そうあん)を結び、紫雲立寺(後の四本龍寺)としたのが始まりと伝わる。翌年には、その傍らに二荒山をまつる祠(ほこら)を築いた。それが現在の別宮・本宮神社で、二荒山神社へとつながった。勝道は782(延暦元)年に二荒山登頂に成功。山上に奥宮、続いて中禅寺湖畔に中宮祠(ちゅうぐうし)を建立した。
山岳信仰の地、修験修行の霊場として信奉を集め、鎌倉時代には源頼朝の保護によって大いに栄えた。戦国時代、豊臣秀吉の小田原攻めの際に、後北条氏の味方をしたことで、領地を没収されるなど一時衰退したが、江戸時代に入ると状況は一変。徳川家康から家光までの3将軍が帰依した僧・天海が日光山の貫主となり、1617(元和3)年には家康をまつる日光東照宮が創建。東照宮の西隣に移転となった二荒山神社にも、豪華な社殿が造営される。以後も天海開山の徳川家菩提寺・上野寛永寺によって管理され、その威光もあって江戸時代を通じて繁栄が続いた。
「日光山」は神仏習合だった江戸時代まで、一帯の寺社群の総称だった。明治維新後の神仏分離令によって、二荒山神社と東照宮、輪王寺に分かれ、日光山は輪王寺の山号となっている。この2社1寺と周辺地域は、1998年に「日光山内」として国の史跡、翌年には「日光の社寺」としてユネスコの世界文化遺産に登録された。
重要文化財の社殿と、縁結びの御利益で人気
二荒山神社の境内は、日光三山(男体山、女峰山、太郎山)を中心に3400ヘクタールにも及び、神域には華厳の滝やいろは坂も含まれる。本社のある日光山内の入り口には、朱塗りの「神橋(しんきょう、別名:蛇橋)」が架かるが、これも二荒山神社が所有する。大谷川の急流に行く手を阻まれた際、勝道が祈りをささげると、2匹の蛇が現れて橋に変化したという。その伝説の地に架かるのが神橋で、世界遺産の登録資産にもなっている。
本社には拝殿や本殿、唐銅鳥居など、国の重要文化財に指定される建造物が10棟もある。拝殿に隠れている八棟造(やつむねづくり)の本殿は、西側の庭園「神苑(しんえん)」に入園すると眺めることができる。神苑内にも、末社の朋友(みとも)神社や日枝神社、大国殿や化燈籠(ばけとうろう)など見どころが多い。
二荒山神社の祭神は、父・大己貴命(おおなむちのみこと)、母・田心姫命(たごりひめのみこと)、子・味耜高彦根命(あじすきたかひこねのみこと)の三柱。大己貴命は、縁結びの神としても知られる大国主神(おおくにぬしのみこと)の別称のため、良縁や家庭円満をもたらすパワースポットとして人気が高い。境内には「縁結びの木」「縁結びの笹」「親子杉」「恋人杉」「良い縁 狛犬(こまいぬ)」など、縁起の良いスポットやお守りがあまたあるので、全てを巡るにはかなりの時間が必要だ。
別宮・滝尾神社や中宮祠にも足を延ばそう
ひそかに人気が高まっているのが、日光を訪れた弘法大師・空海(774-835)が創建したと伝わる別宮・滝尾(たきのお)神社。本社の北方向にあり、行きは上り坂のため、徒歩だと30分近くかかってしまう。それでも、元祖・縁結びの笹や子宝を授かる「子種石」、ご神木の「滝尾三本杉」を目指し、足を延ばす参拝者が増えているという。
山深い滝尾神社の境内は、江戸期以前の風情が残っており、日光がいにしえからの霊場だと実感させてくれる。本殿や楼門などの建造物も趣深く、こちらも世界遺産の登録資産となっている。
中禅寺湖や華厳の滝の観光と併せて、中宮祠にも立ち寄ってほしい。中宮祠は、世界遺産エリアから外れるが、本殿や拝殿、鳥居などは国の重要文化財。そして、二荒山神社最高のパワースポットといえる男体山山頂の奥宮へとつながる唯一の場所だ。男体山の開山期間は4月25日から11月11日まで。山頂までは約4時間かかるというので、しっかりと登山装備をして出掛けよう。
日光二荒山神社
- 住所:本社=栃木県日光市山内2307、中宮祠=栃木県日光市中宮祠2484
- 拝観時間:4月1日-10月31日=午前8時~午後5時、11月1日-3月31日=午前8時~午後4時(受け付けは閉門の30分前まで)
- 神苑入園料:300円
- 定休日:なし
取材・文・写真=ニッポンドットコム編集部
バナー写真:二荒山神社・本社の風景