健康&筋肉に良い! 練り物が人気:老舗・鈴廣かまぼこはサッカー長友選手と「魚肉たんぱく同盟」結成
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老舗かまぼこ店とトップアスリートの異色コラボ
箱根観光の玄関口・小田原の国道1号沿いにあり、食事や土産物探しのために多くの人が立ち寄る「鈴廣 かまぼこの里」。正月の風物詩・箱根駅伝の中継地点としても知られ、かまぼこの手作り体験ができる博物館は家族連れに人気だ。
メイン売り場・鈴なり市場に最近、ユニークな一角が誕生した。サッカー日本代表・長友佑都選手の写真や動画、サイン入りボールやユニホーム、愛用のスパイクと共に、「魚肉たんぱく同盟 本部」という看板が飾られている。鈴廣かまぼこは、2020年12月に長友選手と魚肉たんぱく同盟を結成。気軽においしく摂取できる練り物で健康的な体づくりをサポートし、世の中に「挑戦する人」を増やしていくというプロジェクトだ。
広報担当者は「当社では魚肉たんぱくのすばらしさを長年アピールしてきたが、なかなか広まらなかった。それがコロナ禍の影響もあって、練り物が良質なたんぱく源として注目を集めている。この機会に、長友選手と一気に認知度を上げていきたい」と意気込む。
練り物に復活の兆し、フィッシュプロテインのロゴでPR
おせち料理に使われるかまぼこや、おでんの具材でおなじみの練り物。魚のすり身に調味料を加えて形を整え、蒸せば板かまぼこやしんじょ、焼けばちくわや笹(ささ)かまぼこ、ゆでればはんぺんやなると、揚げればさつま揚げなどになる。その歴史は長く、かまぼこが登場する最古の文献は平安時代の1115(永久3)年のものだ。
手軽な副菜として、1970年代頃まで食卓の定番だったが、食生活の欧米化とともに次第に出番は減っていった。水産練り製品の生産量は1975年の115万5000トンがピークで、80年代に「カニかま」ブームで一時は上向いたものの、2020年は47万3000トンと最盛期の4割の水準。業界団体の日本かまぼこ協会(東京)には、かつて1000を超える業者が加盟していたが、今は600まで減少したという。
ところがここへきて、高たんぱく・低脂肪の魚肉がクローズアップされ、練り物の人気は急上昇。「生産が追い付かない」とうれしい悲鳴を上げる加工業者もいる。同協会は魚肉たんぱくの働きについて、「体内では合成できない9種類の必須アミノ酸がバランスよく含まれている。筋肉の保持に役立つなど、健康や運動面でのメリットが大きい。消化もよく体内吸収されやすく、脂質が少ないため、間食や夜食にもお薦め」と説明する。
同協会でも「10年ほど前から消費者に向けて魚肉たんぱくをPRしていたが、あまり浸透しなかった」という。それが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い巣ごもり生活が続き、自炊が増え、健康への意識が高まったことで、ようやく日の目を見ることに。この好機を逃すまいと昨年11月から、魚肉たんぱくの含有量が一定水準を超える商品向けに「フィッシュプロテイン」と表記したポップなロゴマークを作成し、水産加工品メーカーへの提供を開始した。
今年は、延期されていた東京五輪・パラリンピックが開催されたこともあり、タレントの田中律子さんの協力を得て、ヨガをベースとした簡単な「フィッシュプロテイン体操」をユーチューブで配信。体力が心配だったり、筋肉を維持したいと感じたりしている人に、運動とともに魚肉を摂取するようアピールしている。
人気となった「挑・蒲鉾」、一般向けにも
フィッシュプロテインは、一線で活躍するスポーツ選手も強い関心を示している。
筋肉系の故障が多かった長友選手が、体質改善のために専属シェフを雇っていることはよく知られている。近年は、糖質を適正に管理しながら良質なたんぱく質と脂質を摂取する「ファットアダプト食事法」を採り入れており、メソッドをまとめた書籍もベストセラーになった。その食事法でカギを握る食材の1つが魚で、昨年からはかまぼこをメニューに使用。「天然素材を極め、化学調味料・保存料不使用で高たんぱくな鈴廣さんのおいしいかまぼこは、練習後の食事に欠かせない僕のパワーの源」と強調する。
魚肉たんぱく同盟では今夏、「フィッシュプロテインバー 挑・蒲鉾(ちょう・かまぼこ)」という商品をクラウドファンディングで開発。味は「タコのガリシア風」「金目鯛のアクアパッツァ風」「ほうれん草とホタテ入りグラタン風」の3種で、長友選手専属の加藤超也シェフがレシピを作り、まるでケーキのような美しい断面のかまぼこに仕上げた。
消化にも優れたこのプロテインバーは、1本で15グラム以上のタンパク質を取ることができる。出資者への限定販売だったが、目標金額100万円のところ830万円以上が集まったことで、一般への商品化も検討中だ。「これまでかまぼこ製品をあまり食べなかった人からも、食べ続けたいという声が届いている。健康志向の人への贈答品としても好評だった」(広報担当者)と、手応えを感じている。
一過性のブームで終わらせない
一方、かまぼこに比較的なじんでいる高齢者層にも、改めて魚肉たんぱくの価値をアピールしていく考えだ。筋力低下による転倒などのけがを避けるためには、良質なたんぱく質を食事で摂取するのが効果的だが、脂質はなるべく抑えたい。練り物は消化がよい上に弾力性もあるため、噛むことで脳に刺激を与え、神経系の活性化も期待できるという。
同社はこのほか、水を加えるだけで本格的な生すり身になる「万能すりみパウダー」をネット販売。自宅でオリジナルの練り物がアレンジできると好評で、スーパーなどの総菜の材料としてプロからの引き合いも多い。広報担当者は「“ピンチはチャンス”と言うが、コロナ禍で観光客向けの売り上げが激減した分、魚肉たんぱくに注目が集まった。既存商品の枠を超えた商品開発を続け、一過性のブームで終わらせないようにしたい」と語る。
「筋肉ちくわ」も好調、練り物復権に期待
ちくわにもフィッシュプロテイン効果を意識した新たな商品が登場している。商品名はズバリ「筋肉ちくわ」。香川県高松市の「矢野商店」が製造・販売する商品で、スケトウダラの魚肉にナッツを原料とする植物性たんぱく質も加えた「Wたんぱく」が売り。9月からネットで販売し、早くも全国に販路が拡大。「多くの注目をいただき、商品の生産が追い付かない状況」(矢野商店)と話している。
コロナ禍で、健康や筋肉への効果が注目され、ようやく消費・生産が上向き始めた魚肉練り製品。日本独自の食文化を象徴する名脇役とも言える食品だが、健康・筋肉の維持、高齢化社会への対応は万国共通の課題。これから海外の需要も含め反転攻勢、人気は上昇し続けるかもしれない。
取材写真=ニッポンドットコム編集部