【漁港巡り】魚のまち「銚子」を満喫:水揚げ量日本一、観光スポットも充実
Guideto Japan
旅 食- English
- 日本語
- 简体字
- 繁體字
- Français
- Español
- العربية
- Русский
江戸時代から栄えた漁師町
日本屈指の港町として知られる千葉県・銚子。東京から直線距離で100キロほどの利根川河口の南に位置し、太平洋に突き出した半島型の地形で、関東最東端の町である。地名の由来は、海に注ぐ直前で利根川の幅が狭くなり、酒器の「銚子」に似た形状をしていることからという説が有力だ。
沖合は親潮と黒潮がぶつかる国内でも有数の漁場で、古くから漁業の盛んな地域だった。江戸時代初期の利根川の改修工事により、大消費地・江戸への水運ルートが確保されたことで活気づき、漁業や築港技術にたけた紀州の漁師が移住してきたことで大きく発展したという。銚子はしょうゆ醸造でも有名で、17世紀前半に現在のヒゲタしょうゆやヤマサ醤油が創業。こちらも利根川水運によって繁盛したことで、明治初頭の銚子は千葉県で最も人口の多い町であった。
現在の銚子漁港は地元漁船だけでなく、北海道から南は沖縄までの船を受け入れる一大漁業基地としての役割を持つ。多種多様な海の幸が1年中水揚げされ、2020年の水揚げ量は27万トンを超え、国内に数千ある漁港の中で、北海道の釧路港や静岡県の焼津港を抑えて10年連続日本一となった。
広大な漁港に多種多様な魚が集まる
JR総武本線の「銚子」駅から北東へ徒歩約20分で、銚子漁港の第1卸売市場に到着する。ただ、卸売市場(水揚げ場)は3カ所に分かれており、第1から第3まで歩くと30分以上もかかってしまうほど漁港エリアは広い。
漁港を運営する銚子市漁業協同組合によると、第1卸売市場では、はえ縄漁船が水揚げする生のクロマグロやメバチマグロ、キハダマグロなどが取引される。通常は予約なしで施設内の見学が可能だが、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、現在は休止中だ。
第2卸売市場では、巻き網漁船のイワシやサバ、アジが主に取引される。銚子名物の脂が乗った「入梅イワシ」は6月から豊漁となり、数千トンが港にあふれる日もあるという。取引は競りではなく入札式で、船から直接トラックの荷台へと、巾着状の網でどさっと魚を移すダイナミックな光景が見られる。
第3卸売市場は、立縄や底引き網漁船などが取ったキンメダイやマタイ、ヒラメ、ヤリイカといった多くの魚種が運び込まれ、買受人に引き取られていく。
漁港を見下ろせるポートタワーやウオッセ21へ
活気ある漁港の周辺で人気観光スポットとなっているのが、第3卸売市場近くの「銚子ポートタワー」。銚子駅からは、ちばこうバスの「川口・ポートセンター行き」に約20分乗車し、終点で降りれば目の前だ。
ツインタワー構造の360度総ガラス張りで、地上47メートルの高さにある展望室では一大パノラマが望める。港を行き交う漁船や水揚げの風景はもちろん、天気の良い日には水平線が広がり、地球の丸さを実感できる。
隣接する「ウオッセ21」には、水産物即売センターがあるので立ち寄ろう。銚子産のキンメダイやマグロのほか、イワシ、サバ、アジなど地魚の加工品が店頭に並び、目移りしてしまう。コロナ禍により現在は休止中だが、毎月第3日曜日に開催するマグロ解体ショーは見物人であふれていたそうだ。
おなかが減ったら、シーフードレストラン「うおっせ」へ。160席という広々した店内では、当日の漁港の水揚げ次第で、さまざまな海の幸が楽しめる。
取材日の「刺身定食」(税込み1870円)は、メバチマグロにネギトロ、カンパチ、メカジキやマカジキ、サーモンのハラス、甘エビなど盛りだくさん。定番の「市場丼」(同1760円)は、ネギトロ、ヒラメやエンガワ、甘エビ、カンパチの上に、イクラが乗った豪華版だった。このほか、刺し身の盛り合わせにカサゴの煮付けを添えた「うおっせ定食」(同2200円)、煮アナゴをトッピングした「海鮮丼」(同1870円)も人気というから、注文時に迷ってしまうことは間違いない。
1日券が便利な銚電でのんびり巡る
ゆったりと銚子観光するなら、ローカル線「銚子電気鉄道(通称:銚電)」を利用するのも楽しい。「銚子」駅-「外川(とかわ)」駅まで片道6.4キロを約20分を運行し、車窓からの風景はのどかで、レトロな内装の「大正ロマン電車」が人気を呼んでいる。
沿線には見どころが多いため、何度も乗り降りできる1日乗車券「弧廻手形(こまわりてがた)」(大人700円)がお薦めだ。銚子ポートタワーやウオッセ21へは、「笠上黒生(かさがみくろはえ)」駅から徒歩20分以上と少し遠いが、銚電とちばこうバスなどが乗り放題になる「銚子1日旅人パス」(大人1000円)もあるので、旅程に合わせて購入しよう。
経営難の銚電は、土産物の「ぬれ煎餅」が大ヒットしたことで、奇跡的に廃線を免れた。そのエピソードが全国的に知られ、食品事業が好調。近年は、経営危機を押し出したユニークな新製品を続々開発している。
有人駅には売店があり、奇跡の「ぬれ煎餅」を筆頭に、「まずい棒(経営状況がまずい)」「鯖威張るカレー(サバイバル・カレー)」「電車にのってほしいも(干し芋)」など、協賛企業や地元名産品とのコラボ商品がズラリ。おいしくて笑いを誘う土産物が、きっと見つかるだろう。
犬吠埼灯台や銚子漁業発祥の地・外川漁港へ
「犬吠」駅から、1874(明治7)年完成の「犬吠埼灯台」までは徒歩7分。三方を海に囲まれた海食台地に、約150年も立ち続ける白亜の塔は、銚子のシンボルだ。2018年末に誕生した「犬吠テラステラス」は、モダンな建物に銚子名産品のセレクトショップや野菜マルシェ、カフェなどが入り、新たな人気スポットとなっている。
千葉県北東部で一番高い愛宕山(標高73.6m)頂上にある「地球の丸く見える丘展望館」へも、犬吠駅から徒歩15分ほどで行くことができる。
終点の外川駅から外川漁港までは坂道が多く、瓦屋根の町家が並ぶ。昭和の香りが漂う漁師町で、カメラ片手に散策する人が多い。外川漁港は、江戸時代に紀州出身の漁師が港を築いたことから始まった「銚子漁業発祥の地」。おいしい魚介を満喫した後に、立ち寄ってみてはどうだろう。
写真=ニッポンドットコム編集部(筆者提供以外)