道の駅で最先端科学に触れる「ひだ宇宙科学館 カミオカラボ」:ノーベル物理学賞2人を輩出した研究&施設を紹介
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「カミオカンデ」の名前の由来は?
かつて鉱山の町として栄えた神岡町。昭和の香り漂うレトロな町並みが残り、近年は人気の散策スポットとなっている。その観光客や中部山岳国立公園へのドライブ客などが立ち寄る「スカイドーム神岡」内には、道の駅とは思えない施設がある。最先端の宇宙物理学に触れることができる「ひだ宇宙科学館 カミオカラボ」だ。
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一風変わった名の研究施設「カミオカンデ」「スーパーカミオカンデ」は、2002年に小柴昌俊氏、15年に梶田隆章氏がノーベル物理学賞に輝いたことで世界中に知れ渡った。所在地の“KAMIOKA”に「核子崩壊実験( Nucleon Decay Experiment)」の頭文字を並べたもので、当初のカミオカンデは“陽子崩壊”を実証することが目的であった。しかし、陽子崩壊は全く観測できず、研究を主導した小柴氏は「ニュートリノ観測」に方向転換。その結果、超新星爆発を捉えてノーベル賞につながったのだ。
梶田氏が「ニュートリノ振動」を発見したのが、後継施設のスーパーカミオカンデ。容積を10倍にしたことで観測データも一気に増えたため、頭に「スーパー」が付き、英語では研究目的に一致する「Super-KAMIOKA Neutrino Detection Experiment(ニュートリノ検出実験)」という意味も持つようになった。
スーパーカミオカンデの仕組みやニュートリノについて、一般人にはなかなか理解が及ばない。稼働中の施設のため、実際に見学したくても期間や定員が限られている。そこで、神岡町が誇る宇宙研究拠点の目的や魅力を、広くやさしく紹介する場として誕生したのがカミオカラボである。
神岡町が支えたノーベル賞に至る研究
ニュートリノは電気を持たない素粒子。太陽などの恒星から常時発生しており、宇宙線が地球の大気と衝突した時にも誕生する。特に、星が寿命を迎えると起こる超新星爆発では大量に放出される。つまり、宇宙はニュートリノだらけなのだ。
電子の100万分の1以下しか質量を持たないニュートリノは、光とほぼ同じ速さで飛び、どんなものでも通り抜けてしまう。実は私たちの体も、毎秒数百兆個のニュートリノが突き抜けている。しかし、ごくごくまれに物質にぶつかり、微弱な光を放つ。それを捕まえるのがスーパーカミオカンデなのだ。
スーパーカミオカンデは、約5万トンの超純水をためた巨大な円柱状の水槽の内側に、1万1129本の光電子増倍管が並べられている。1日に太陽からのニュートリノが約20個、大気中で生まれたもの約10個が水と反応し、発生するチェレンコフ光をとらえることで、飛んできた方向やエネルギーなどを測定する。その結果、宇宙の歴史や現在の状況、星の内部まで知ることができるそうだ。
ニュートリノを観測するには、大気中を飛び交う他の素粒子をなるべく排除するために施設は厚い岩盤の下にある必要がある。山の頂から地下1000メートルにある坑道を再活用でき、きれいな水も調達しやすいことなどから神岡鉱山は抜群の立地であった。
展示順路の最後には小柴氏はじめ著名人のサインが飾られており、梶田氏は「長年に亘って研究をささえていただき、どうもありがとうございました」と神岡町への感謝をつづっている。2027年には、現在の5倍以上となる26万トンの超巨大水槽を持つ「ハイパーカミオカンデ」が完成予定。さらなる大発見が、神岡町から世界中に発信されるかもしれない。
ひだ宇宙科学館 カミオカラボ
- 住所:岐阜県飛騨市神岡町夕陽ヶ丘6
- 開館時間:午前9時~午後5時(最終入館は午後4時30分)
- 休館日:水曜日(祝日の場合は翌平日)、12月29日~1月3日
- 入場料:無料
取材・文・写真=ニッポンドットコム編集部