福島「東日本大震災・原子力災害伝承館」:現在進行形の複合災害を発信し、未来につなぐ
Guideto Japan
防災 旅- English
- 日本語
- 简体字
- 繁體字
- Français
- Español
- العربية
- Русский
2011年3月11日の東日本大震災から9年半が過ぎ、東北各地には慰霊のためのメモリアルパークや、震災に関する資料と記録を展示し、防災の大切さを伝える施設が続々と整備されている。
福島県が20年9月20日にオープンするのが「東日本大震災・原子力災害伝承館」(双葉町)。太平洋に面する東部「浜通り」を中心に、福島県では地震と津波に加え、東京電力福島第1原子力発電所(大熊町・双葉町)の事故でも甚大な被害を受けた。未曽有の複合災害の記憶を風化させず、そこから得た教訓や復興に向かう姿を国内外に発信することが目的だ。
複合災害を“自分ごと化”する展示
最初に足を踏み入れるのは、床面も含めて7つのスクリーンを持つ導入シアター。地震と津波、原発事故の恐怖がリアルに再現され、住民避難の様子や復興へ向けた取り組みなども映し出される。
シアターを出て、2階の展示室へと向かうらせん状のスロープでは、震災と事故の状況を伝える写真を時系列で展示・解説している。来館者に災害を「自分にも起こりうるもの」として捉えてもらうのが狙いだという。
2階は、「災害の始まり」「原子力発電所事故直後の対応」「県民の想い」「長期化する原子力災害の影響」「復興への挑戦」の5つのゾーンで構成。原発が立地していたが故に課された複合災害の過酷な状況を、当事者の証言や各種データと組み合わせ、多彩な映像やグラフィックなどを駆使して展示する。
中でも目を引くのが、地震発生時刻で止まった時計やがれきの中から見つかった品々、避難所で使われた設備など、県が収集した貴重な資料。全24万点の収蔵品から約150点を展示しており、企画内容によって入れ替えを行う予定だ。
地元で被災した案内スタッフも常駐し、展示の解説に加えて、当時の心境や自らの経験も伝えていくという。
被災地を巡り、防災の大切さを学ぶ拠点に
浜通りでは、震災から9年半を経た現在も被害は進行形だ。伝承館がある双葉町も大部分が帰宅困難区域のままで、JR常磐線「双葉駅」周辺と北東の一部地域が2020年3月4日に避難指示解除されたばかり。福島第1原発の廃炉作業には最長40年かかるとされ、風評被害も払拭できていない。
県の担当者は「震災を知らない世代も増えてくるし、海外の方にも複合災害を自分ごと化してもらい、防災意識を高めてほしい」とし、資料の保存・展示に加え、震災遺構などを巡りながら災害について考える「学びの拠点」としても伝承館を活用していきたいと言う。
同じ敷地内には、「双葉町産業交流センター(略称:F-BICC)」も10月1日に開所し、復興整備の関連事業者や地元企業などが利用すると共に、フードコートやレストランなども入居する。伝承館来訪者の利用も見込まれ、両施設が町の産業復興や観光交流の中心地となることが期待される。
東日本大震災・原子力災害伝承館
- 住所:福島県双葉郡双葉町大字中野字高田39
- 開館時間:午前9時~午後5時(最終入館は30分前)
- 休館日:火曜日、12月29日~1月3日 ※火曜日が祝日または振替休日の場合は開館し、次の平日に休館
- 入館料:大人600円、小中高生300円 ※団体割引など有り
- アクセス:JR常磐線「双葉」駅から車で約5分 ※シャトルバスが運行予定
取材・文・写真=ニッポンドットコム編集部
バナー写真:海側から見た東日本大震災・原子力災害伝承館
観光 防災 福島 博物館 東日本大震災 原発 3.11 放射能 被災地 福島第1原発 原発事故 震災 浪江町 防災対策 双葉町 伝承館