世界に通じるダテ男、初代仙台藩主・伊達政宗ゆかりの地【瑞鳳殿、寺社編】
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独眼竜が眠る瑞鳳殿
伊達政宗が70歳で生涯を閉じたのは1636(寛永13)年のこと。死期を悟った政宗は、仙台城の東側を流れる広瀬川を挟んで本丸と向かい合う「経ヶ峯(きょうがみね)」に、墓所を造営するよう命じた。そして死去の翌年、遺言どおり政宗を葬った経ヶ峯の地に、2代藩主・忠宗(1600-1658)が造営したのが霊屋「瑞鳳殿(ずいほうでん)」である。
杉並木の中にある石段を登った先に、涅槃門(ねはんもん)が立つ。樹齢数百年の青森ヒバを金箔(きんぱく)や漆で覆った美しい門の奥は、煩悩から解き放たれた神聖な空間となる。
桃山文化を色濃く残す豪華絢爛な霊屋は、昭和初期に国宝となったが、第2次世界大戦の空襲によって焼失。現在の瑞鳳殿は、残っていた資料や写真を基に1979(昭和54)年に再現したものだ。2001(平成13)年の「平成の大改修」で、創建当時の鮮やかな色彩がよみがえった。
本殿を彩る飾り彫刻は、目を奪われるほどあでやか。鳳凰(ほうおう)や天女、獅子など、豪奢かつ繊細な装飾に圧倒される。政宗の遺体は地下3メートルほどの場所に納められているという。敷地内には2代藩主・忠宗の霊屋「感仙殿」や3代藩主・綱宗の「善応殿」の他、9代藩主、11代藩主夫妻の墓所が点在している。
瑞鳳殿
- 住所:宮城県仙台市青葉区霊屋下23-2
- アクセス:JR仙台駅から循環観光バス「るーぷる仙台」で「瑞鳳殿前」下車、徒歩5分
- TEL:022-262-6250
- 営業時間:午前9時~午後4時50分(入館は午後4時30分まで)
- 定休日:無休
- 料金:一般570円
- 多言語対応:HP…英語/韓国語/中国語(簡体・繁体)/タイ語、パンフレット…英語/中国語(簡体・繁体)/韓国語、施設内の案内表示…英語
粋な政宗の好みを色濃く伝える大崎八幡宮
瑞鳳殿から北西に車で15分、八幡(はちまん)地区にある大崎八幡宮は、平安時代の蝦夷征伐を指揮した坂上田村麻呂ゆかりの神社だ。政宗の命によって仙台に移され、豊臣家に仕えていた当代随一の名工を招き、1604(慶長9)年から12年の歳月をかけて造営させた。
赤く巨大な「一之鳥居」から続く参道の奥、石段を登った小高い丘に社殿がある。手前の拝殿、奥の本殿が連結した「権現(ごんげん)造り」の建築としては国内最古のもので、1952(昭和27)年に国宝に指定された。
“伊達者”といえば、しゃれた装い、粋な振る舞いの人を指す。その由来とされる政宗の好みを、大崎八幡宮は色濃く表す建造物といえる。
内外ともに総漆塗りで、精巧かつ華やかな細工が施してあるのだが、柱や板壁は落ち着いた黒漆で統一されている。黒をベースにすることで、花や動植物、神話上の人物などをモチーフにした極彩色の彫刻や、金箔の装飾具の輝きが際立つのだ。映画『スター・ウォーズ』シリーズのダース・ベイダーのデザインに影響を与えたという政宗の甲冑「黒漆五枚胴具足(くろうるしごまいどうぐそく)」も、全身が漆黒なために金色の前立て「弦月(げんげつ)」がより輝いて見える。その美意識は瑞鳳殿にも相通ずるが、造営に直接関わった大崎八幡宮の方がより色濃く感じられる。
大崎八幡宮
- 住所:宮城県仙台市青葉区八幡4-6-1
- アクセス:JR仙台駅から循環観光バス「るーぷる仙台」で「大崎八幡宮前」下車、徒歩1分
- TEL:022-234-3606
- 営業時間:参拝自由
- 多言語対応:HP…英語/韓国語/中国語/スペイン語、パンフレット…英語/中国語(簡体・繁体)/韓国語
杜の都の総鎮守・仙台東照宮
徳川初代将軍・家康(1543-1616)を祀る仙台東照宮は、忠宗によって1654(承応3)年に創建された。政宗の死後、仙台藩は大火や洪水など立て続けに災害に見舞われたが、その際の幕府の援助に対して感謝の意を示すことが目的だったという。5年の歳月と現在の価値で約20億円ともいわれる金2万両、80万人もの労力を費やす大事業であった。
東照宮が鎮座するのは、政宗と家康にゆかりの土地だ。1591(天正19)年、家康が陸奥国中部(現在の宮城県北部~岩手県南部)で発生した葛西大崎一揆の鎮圧から江戸への帰路の途中、政宗の案内で休憩を取った場所だという。仙台城から見ると、鬼門とされる北東に当たり、仙台藩を守護する役割も担っている。
徳川幕府が造営した日光東照宮(栃木・日光市)や久能山東照宮(静岡市)は権現造りだが、仙台東照宮は拝殿と本殿を別々にし、その間に唐門を配置している。唐門と本殿には立ち入ることができないが、拝殿のフェンス越しに、鳳凰や唐獅子、ぼたんの花などの装飾や風格ある建物が眺められる。瑞鳳殿や大崎八幡宮の華やかさとは違う、気品ある荘厳さが印象的だ。
仙台東照宮
- 住所:宮城県仙台市青葉区東照宮1-6-1
- アクセス:JR東照宮駅から徒歩3分
- TEL:022-234-3247
- 営業時間:参拝自由
- 多言語対応:HP…英語/中国語(繁体)
●周辺情報
北山五山
仙台市街地から北に車で15分ほど、JR「北仙台」駅を降りてすぐの北山地区に政宗ゆかりの寺院が並ぶ。
伊達家4代・政依(まさより、1227-1301)が京都五山、鎌倉五山に倣い、福島県伊達郡に創建したのが「伊達五山」と呼ばれた5つの寺院。1601(慶長6)年に仙台藩が開かれたのを機に、政宗は伊達五山の流れをくむ東昌寺、満勝寺、光明寺、覚範寺、資福寺をこの地に移し、「北山五山」と称した。後に満勝寺が移転したため、現在は4つの寺の西隣にある輪王寺を含めて北山五山と呼ぶ場合が多い。
この北山五山と、政宗を祭神とする青葉神社は徒歩15分圏内にある。輪王寺の日本庭園や資福寺の1200株ものアジサイなど、季節ごとの景観を楽しめる散策スポットして市民に愛されている。
取材・文・写真=シュープレス
バナー写真:瑞鳳殿の篇額(へんがく)