中部国際空港セントレアに直結:フライト・オブ・ドリームズ‎&Aichi Sky Expo

LCC向けの第2ターミナルが開業し、さらに利便性が増した「中部国際空港セントレア」。直結する飛行機テーマパーク「FLIGHT OF DREAMS(フライト・オブ・ドリームズ)」と国際展示場「Aichi Sky Expo」も話題を呼んでいる。

LCC向けの第2ターミナルがオープン

東海地方の空の玄関口となる中部国際空港(愛知県常滑市)、通称「セントレア」は、2019年9月20日に第2ターミナルの供用を開始した。格安空港会社(LCC)専用で、まずジェットスター・ジャパンやエアアジア・ジャパンなど5社が乗り入れる。セントレアでは、2018年度に航空旅客数が1235万人以上と過去最高を記録。訪日観光客の利用が増加している中、さらなるLCC路線の誘致、利用者拡大を目指す。

第2ターミナルの出発ロビー入り口
第2ターミナルの出発ロビー入り口

華美な装飾のないチェックインカウンター。天上板を設置しない開放的な空間だ
華美な装飾のないチェックインカウンター。天上板を設置しない開放的な空間だ

旅客自身が機械でチケットを発券し、手荷物にも自分でラベルを貼って預ける
旅客自身が機械でチケットを発券し、手荷物にも自分でラベルを貼って預ける

第2ターミナルでは、運用コストの管理や施設整備費のカットを徹底している。チェックイン作業を簡略化する手荷物自動預け機、保安検査を複数人が同時にできる「スマートレーン」などを導入して省力化を図った。ロビーや待合室などの設備はシンプルで、免税店や売店も一カ所にコンパクトにまとめている。

一方で、待合室のソファには充電用の電源を用意するなど、利用者のニーズに対応。「動く歩道」を設置しないかわりに、プロジェクションマッピングやカロリー消費量を通路に表示し、長い移動距離を楽しませる工夫を随所にしている。

思い切ったコストカットで、航空会社が払う空港施設使用料、旅客が負担する旅客施設使用料を低く抑えた。利用する側には最高のサービスといえる。セントレアは日本で初めて民間主導で建設、運営される空港で、堅実な経営やユニークな施設で知られる。通常は空港業務と商業施設の運営業務を別会社が行う場合が多いが、セントレアは一つの会社で両方を統括しているため、空港全体で大胆な取り組みができるのだ。

ゲート前のソファも至ってシンプルだが、背もたれの上部に充電用電源やUSBソケットがあるなど利便性は十分
搭乗ゲート前のソファも至ってシンプルだが、背もたれの上部に充電用電源やUSBソケットがあるなど利便性は十分

簡素ともいえる長い通路に、楽しませる工夫がちりばめられている
簡素ともいえる長い通路に、楽しませる工夫がちりばめられている

本物の787が屋内に飾られる「フライト・オブ・ドリームズ」

セントレアは飛行機に乗るだけでなく、空港そのものが「見て楽しい」「いるだけで楽しい」、1日中遊べるレジャー施設として人気だ。滑走路に突き出すようにつくられた展望所「スカイデッキ」に加え、飛行機が間近で飛び立つ絶景を湯船から堪能できる展望風呂「風(フー)の湯」は、航空機ファンに至福の時間を与えてくれる。飲食店やショップが並ぶ「レンガ通り」や「ちょうちん街」は、家族連れやカップルでにぎわう。

ユニークな施設の最たるものといえるのが、中部国際空港駅から第2ターミナルへ向かう際に経由する「FLIGHT OF DREAMS(フライト・オブ・ドリームズ)」だ。第2ターミナルに先駆け、2018年10月12日に始動した飛行機テーマパークである。

フライト・オブ・ドリームズの目玉は、屋内に置かれた「ボーイング787ドリームライナー」の実機。現役バリバリの型式の飛行機が間近に眺められると話題を呼び、開業から約半年で来館者数百万人を突破した。

ボーイング787が描かれた建物がフライト・オブ・ドリームズ。建物の3階を連絡デッキが通過する。右奥に連結するのが第2ターミナル
ボーイング787が描かれた建物がフライト・オブ・ドリームズ。建物の3階を連絡デッキが通過する。右奥に連結するのが第2ターミナル

巨大な787が置かれる建物内部。翼がフードコートの上まで伸びている
巨大な787が置かれる建物内部。翼がフードコートの上まで伸びている

これほど飛行機を間近に見られる場所は珍しい。インスタ映えも間違いなし
これほど飛行機を間近に見られる場所は珍しい。インスタ映えも間違いなし

フライト・オブ・ドリームズ実現のカギを握った、巨大なクジラのような飛行機「DREAM LIFTER」が第2ターミナル近くに駐機していた。世界にたった4機しかないボーイング社の飛行機パーツ専用輸送機が頻繁にセントレアに飛来するのは、愛知県を中心とする中部地域が航空宇宙産業の一大集積地だからだ。

第2ターミナルの搭乗ゲートから撮影したドリームリフター。搭載されたパーツは米国の最終組立工場へと運ばれる
第2ターミナルの搭乗ゲートから撮影したドリームリフター。搭載されたパーツは米国の最終組立工場へと運ばれる

ボーイングの主力中型機787の機体部品は、約35パーセントが愛知県で製造されている。主翼を三菱重工、翼と胴体の結合部をスバル、前部胴体を川崎重工が担当。部品輸送のための中継施設「ドリームリフター・オペレーションズ・センター」はセントレアに置かれる。

こうした深い縁があって、ボーイング社から787の飛行試験を担当した貴重な初号機(ZA001)が寄贈されたのだ。館内の2-3階は、ボーイングが本社を置くシアトルの街の雰囲気を再現した飲食店街「シアトルテラス」となっていて、主翼の下で食事が楽しめる。

1階は、米国以外で世界初出店の「ボーイングストア」があり、かつては米国に行かなければ手に入らなかったオフィシャルグッズがずらりと並ぶ。航空機ファンならずとも、心躍るショップだ。

飛行機の翼の下で飲食できるシアトルテラスは入場無料
飛行機の翼の下で飲食できるシアトルテラスは入場無料

直輸入したボーイングのオフィシャルグッズを中心に、レアな商品が500種類も並ぶ
直輸入したボーイングのオフィシャルグッズを中心に、レアな商品が500種類も並ぶ

搭乗までの時間つぶしではもったいない

有料エリアの「フライトパーク」では、787の機体の真下に行けるなど、通常の空港利用では考えられない至近距離で美しい機体を眺めることができる。革新的なデジタルアートで世界的な人気の「チームラボ」が手掛ける体験型アトラクションは、大人までワクワクするはずだ。

紙飛行機を折って飛ばすと光が反応して変化し、音が響く「奏でる!紙ヒコーキ場」
紙飛行機を折って飛ばすと光が反応して変化し、音が響く「奏でる!紙ヒコーキ場」

クレヨンで描いた飛行機をスキャンすると、ドームの中に映し出されたデジタル空間で操縦できる「お絵かき飛行機」
クレヨンで描いた飛行機をスキャンすると、ドームの中に映し出されたデジタル空間で操縦できる「お絵かき飛行機」も人気

プロジェクションマッピング「フライ ウィズ 787ドリームライナー」では、787の周囲をクジラの群れが悠々と泳いだり、子どもたちが描いた飛行機が並んで飛んだりと幻想的な場面が展開される。シアトルテラスなどの入場無料エリアからも鑑賞することは可能だが、フライトパーク4階の観覧エリアから見下ろすと迫力満点の映像を楽しめる。

「搭乗までの時間つぶしにちょっとのぞいてみるか」ではもったいない。セントレアだから実現した最高のエンターテインメント空間を満喫するには、たっぷりと余裕を持って訪れることをおすすめする。

観覧エリアから見下ろした「フライ ウィズ 787ドリームライナー」。周りをクジラが泳ぐ幻想的なシーン
観覧エリアから見下ろした「フライ ウィズ 787ドリームライナー」。周りをクジラが泳ぐ幻想的なシーン

子どもたちが描いた飛行機が、787と一緒に空を舞う
子どもたちが描いた飛行機が、787と一緒に空を舞う

FLIGHT OF DREAMS(フライト・オブ・ドリームズ)

  • 住所:愛知県常滑市セントレア1-1
  • 営業時間:午前10時~午後10時
  • 休館日:年中無休
  • フライトパーク営業時間:午前10時~午後5時(最終入場は午後4時30分)、土曜日のみ午前10時~19時(最終入場は午後6時30分)
  • フライトパーク入場料:中学生以上1200円、3歳~小学生800円

セントレアをさらに国際化する「Aichi Sky Expo」

フライト・オブ・ドリームズを挟んで第2ターミナルの反対側にも、真新しい巨大な建物が連結する。19年8月にオープンしたばかりの愛知県国際展示場「Aichi Sky Expo(アイチ スカイ エキスポ)」だ。

Aichi Sky Expoは展示ホールに加え、隣接する屋外エリアも広大。スポーツイベントや野外コンサートに利用できる
Aichi Sky Expoは展示ホールに加え、隣接する屋外エリアも広大。スポーツイベントや野外コンサートに利用できる

国際空港に直結する日本初の国際会議・展示場で、国内外からのアクセスは抜群。1万平方メートルのホールが6つと、3400平方メートルの会議スペースを備えている。日本の国際展示場の中では、敷地は最大級、展示スペースは4位の広さだ。

視線を遮る柱が一切ないホールAはエンターテインメント系に最適で、ホールBからFまでを一体化すれば5万平方メートルを利用した巨大イベントも開催できる。海外から持ち込んだ物品でも非課税で展示できる国内唯一の常設「保税展示場」のため、国際的なイベントなどでは重宝されるだろう。

第2ターミナルに加え、併設する2つの施設もセントレアならではのユニークさと国際的な集客力を持つ。中部地方への国内外からの観光客は、今後も順調に伸びていきそうだ。

Aichi Sky Expoのメインエントランス。木材をふんだんに使った落ち着いた雰囲気
Aichi Sky Expoのメインエントランス。木材をふんだんに使った落ち着いた雰囲気

ホールCの内部。右側にあるシャッターを開けば、隣のホールと一体になる
ホールCの内部。右側にあるシャッターを開けば、隣のホールと一体になる

取材・文・写真=ニッポンドットコム編集部
(バナー写真:787が光の中を舞う「フライ ウィズ 787ドリームライナー」)

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