個性的な温泉宿がそろう岩手・花巻で“はしご湯”を楽しむ

花巻市西部の奥羽山脈の渓谷沿いにある、12の温泉街で構成される岩手県最大級の温泉エリア「花巻温泉郷」。リゾートホテルが並ぶ花巻温泉と、昔ながらの湯小屋のたたずまいを残す大沢温泉と鉛温泉を紹介する。

「花巻温泉」で3つのホテルの湯を巡る

東北新幹線「新花巻」駅から送迎バスに揺られて約30分、自然豊かな山々を見渡せる「花巻温泉」に到着する。広いエリアに温泉地が点在する花巻温泉郷の中で、設備の充実した宿がそろう近代的なリゾート地だ。5000坪という広大な「花巻温泉バラ園」に面して、東から「ホテル千秋閣」「ホテル花巻」「ホテル紅葉館」が並んでいる。3館は連絡通路で結ばれ、宿泊客は全てのホテルの温泉に入浴できる。

「花巻温泉バラ園」には450種類6000株を超えるバラが植えられている。左から千秋閣、ホテル花巻、紅葉館  写真提供:花巻温泉株式会社
「花巻温泉バラ園」には450種類6000株を超えるバラが植えられている。左から千秋閣、ホテル花巻、紅葉館  写真提供:花巻温泉株式会社

千秋閣の名物は、女性専用の「バラ風呂」。浴槽に浮かべられたバラの香りと温泉のダブル効果で、疲労やストレスを一気に和らげてくれる。さらに、ヒノキをふんだんに使った露天風呂からの景観が見事なホテル花巻、野趣あふれる露天岩風呂でくつろげる紅葉館と、各館自慢の大浴場をはしごできるのは魅力だ。

3館からは少し離れた「佳松園」は落ち着いた雰囲気で、美肌効果の高い「とろとろの湯」を大浴場やヒノキの露天風呂で堪能できると人気。宮沢賢治設計の日時計花壇があるバラ園では、約450種が四季折々に花を咲かせ、1番の見頃を迎える6月上旬から7月上旬頃には「バラまつり」も開催されている。

鮮やかな色彩のバラ風呂の香りにはリラックス効果がある 写真提供:花巻温泉株式会社
鮮やかな色彩のバラ風呂の香りにはリラックス効果がある 写真提供:花巻温泉株式会社

見晴らしの良いヒノキ露天風呂が人気のホテル花巻 写真提供:花巻温泉株式会社
見晴らしの良いヒノキ露天風呂が人気のホテル花巻 写真提供:花巻温泉株式会社

紅葉館の露天風呂は、夜にはライトアップされて幻想的な空間となる 写真提供:花巻温泉株式会社
紅葉館の露天風呂は、夜にはライトアップされて幻想的な空間となる 写真提供:花巻温泉株式会社

●DATA

  • 住所:岩手県花巻市湯本1-125
  • アクセス:JR新花巻駅から送迎バスで約30分
  • TEL:0193-37-2111
  • 料金:1泊2食付 1万200円~
  • 多言語対応 :HP・パンフレット・案内表示=英語/中国語(簡体・繁体)/韓国語/

渓谷沿いに湯煙を上げる名湯「大沢温泉」

平安時代に坂上田村麻呂が発見したと伝えられ、宮沢賢治や詩人で彫刻家の高村光太郎も通ったという「大沢温泉」。豊沢川沿いの一軒宿だが、敷地内にはモダンな和風建築の「山水閣」、かやぶき屋根の別館「菊水舘」、そして200年以上前に築造された「湯治屋」という趣の異なる3つの建物がある。露天風呂や内湯は6カ所あり、渓流の涼やかな景色を眺めながら湯巡りができる。

湯治屋にある名物露天風呂「大沢の湯」は、川に寄り沿うように造られた浴槽に源泉掛け流しの湯をたたえている。混浴だが女性限定の時間が設けられており、女性用露天風呂「かわべの湯」も渓流沿いにある。レトロなタイル張りの内風呂「薬師の湯」は常連客に人気。湯治屋には共同炊事場やコインランドリーがあり、長期滞在者にはありがたい。

名物の川沿いにある露天風呂「大沢の湯」 写真提供:大沢温泉
名物の川沿いにある露天風呂「大沢の湯」 写真提供:大沢温泉

アルカリ性単純温泉の泉質で肌がしっとりすべすべになる 写真提供:大沢温泉
アルカリ性単純温泉の泉質で肌がしっとりすべすべになる 写真提供:大沢温泉

●DATA

  • 住所:岩手県花巻市湯口字大沢181
  • アクセス:JR新花巻駅から花巻南温泉峡無料シャトルバスで約40分
  • TEL:0198-25-2021
  • 料金:1泊2食付 1万5120円~(山水閣)
  • 多言語対応 :HP・パンフレット・案内表示=英語/中国語(簡体・繁体)/韓国語

立ってつかる岩風呂が名物の「鉛温泉 藤三旅館」

立ったまま入浴する混浴で、女性専用時間もある 写真提供:鉛温泉 藤三旅館
立ったまま入浴する混浴で、女性専用時間もある 写真提供:鉛温泉 藤三旅館

大沢温泉から豊沢川を上流へ向かうと、木造3階建ての「鉛温泉 藤三旅館(ふじさんりょかん)」がたたずむ。600年ほど前、1匹の白猿が湧き出る湯で傷を癒しているのを見て、湯小屋を建てたのが鉛温泉の始まりと伝わる。この伝説にちなんで、名物の立ってつかる温泉は「白猿の湯」と名付けられている。

白猿の湯は天井が高く、日中は広い窓から自然光が入り、開放感たっぷりの浴室だ。その中央にある天然の岩をくりぬいてつくった湯船の深さは、なんと平均1.25メートル。立ったまま入浴することで湯圧が全身に満遍なくかかり、循環器が整い、血行促進にも良いとされる。さらに源泉は、湯船の底からポコポコと湧き出てくる掛け流しだ。

渓流沿いの露天風呂や滝を望む半露天風呂、貸し切り風呂もあり、豊かな自然を眺めながら温泉を堪能できる。日帰り入浴では、大沢温泉とのお得な共通券(800円)もあるので、2つの温泉地をはしごしてみてはどうだろうか。

ハイカラな雰囲気の木造3階建ての旅館 写真提供:鉛温泉 藤三旅館
ハイカラな雰囲気の木造3階建ての旅館 写真提供:鉛温泉 藤三旅館

●DATA

  • 住所:岩手県花巻市鉛字中平75-1
  • アクセス:JR新花巻駅から花巻南温泉峡無料シャトルバスで約1時間20分
  • TEL:0198-25-2311
  • 料金:1泊2食付 8619円~
  • 多言語対応 :HP・パンフレット・案内表示=英語/中国語(簡体・繁体)/韓国語

●周辺情報

南部杜氏伝承館・酒匠館

直径約2メートルの仕込み用おけなどが展示される館内 写真提供:岩手県観光協会
直径約2メートルの仕込み用おけなどが展示される館内 写真提供:岩手県観光協会

江戸時代、岩手県北部から青森県東部は南部氏が治めており、その地域に伝わる日本酒醸造技術を継承する職人を「南部杜氏(とうじ)」と呼ぶ。南部流酒造りの中心地であった花巻市北部の石鳥谷(いしどりや)地区は「南部杜氏の里」として知られ、道の駅には「南部杜氏伝承館」がある。古くから伝わる酒蔵を解体復元した貴重な建物で、巨大な仕込み用の桶や時代を重ねた酒器などを展示、南部杜氏の技術や歴史を詳しく知ることができる。

隣接する「酒匠館(さかしょうかん)」には、岩手県産を中心に約100種類の日本酒を取りそろえているほか、県内の土産物、オリジナルの酒ジェラートなどを販売している。試飲コーナーもあり、日本酒好きに外せない場所だ。

●DATA

  • 住所:岩手県花巻市石鳥谷町中寺林7-17-2 道の駅石鳥谷内
  • アクセス:JR石鳥谷駅から車で約5分
  • TEL:0198-45-6880
  • 営業時間:午前8時30分~午後4時30分
  • 定休日:無休
  • 料金:400円
  • 多言語対応 :酒蔵館の案内表示=英語/中国語/韓国語

取材・文=シュープレス
(バナー写真=鉛温泉「白猿の湯」)

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