出雲神話の世界に包まれる松江・八重垣神社で良縁を願う
Guideto Japan
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「八雲立つ 出雲八重垣 妻籠(つまごめ)に 八重垣つくる その八重垣を」
八重垣神社(松江市佐草町)境内の石碑に刻まれた言葉である。素戔嗚尊が詠んだという日本最古の和歌で、古事記や日本書紀にも記されている。
天上の国「高天原(たかまがはら)」から出雲に降り立った素戔嗚尊は、八つの頭と尾を持つ大蛇「八岐大蛇」を退治することになる。その際、いけにえとして差し出されそうだった稲田姫(いなたひめ)(※1)を助けるため、大杉の周りに八重垣を築いて隠した。見事退治した素戔嗚尊は稲田姫をめとり、その喜びを上の歌で表現したという。そして、八重垣の近くに構えたという新居が、現在の八重垣神社の土地であると伝わっている。
「怪談」などで知られるギリシャ生まれの文学者ラフカディオ・ハーンは、一時期、松江で暮らした経験があり、日本名の「小泉八雲」は、出雲国にかかる枕ことば「八雲立つ」にちなむという。
良縁到来の遅速が占える鏡の池
素戔嗚尊と稲田姫を祀(まつ)る八重垣神社は、縁結びの神社として名高い。特に「鏡の池の縁占い」は、女性参拝者を中心に人気を集めている。
拝殿の後方に、奥の院「佐久佐女(さくさめ)の森」がある。八重垣が築かれた場所と伝わり、古杉が生い茂る神秘的な雰囲気は、まさに身を隠すのにうってつけだ。森の入り口から少し進むと、こぢんまりとした鏡の池が姿を見せる。八重垣に身を潜めている間、稲田姫はこの池の水を飲み、水面に姿を映して鏡代わりにしたという。
稲田姫の霊魂が宿った池には不思議な力があり、縁占いができる。社務所で占い用の紙(100円)を購入し、池に浮かべてその上に硬貨をそっと乗せる。紙が15分以内に沈めば「良縁近し」、30分以上かかると「縁遅し」。また、沈む場所が近ければ近くの人と、遠ければ遠方の人と結ばれるという。
恋愛や結婚ばかりでなく、受験や就職、商売などさまざまな「縁」を占おうと、池の周りでは老いも若きも「早く沈んで…」と紙をじっと見つめている。
八重垣神社には、2本の椿が寄り添うように成長し一体となった夫婦椿(めおとつばき)が境内3カ所にあり、夫婦の愛の象徴として神聖視されている。
他にも、国の重要文化財で宝物収蔵庫に展示される壁画「板絵著色神像(いたえちゃくしょくしんぞう)」や、個性的な顔をした来待(きまち)石のこま犬など見どころは多い。
八重垣神社
- 住所:島根県松江市佐草町227
- アクセス:JR「松江」駅から市営バス「八重垣神社行き」で約20分
- 拝観料:宝物収蔵庫=中学生以上200円、小学生100円
古代出雲文化の中心地へ
出雲神話の世界に迷い込んだような八重垣神社を後にしたら、大庭町の神魂(かもす)神社まで続く1.6キロの遊歩道「はにわロード」を散策するのがおすすめだ。東へ進むと、田園風景の奥に古墳群が現れたり、道端には馬や鹿を模した埴輪(はにわ)のレプリカが置かれていたりと、のどかな雰囲気の中で古代出雲へ思いをはせることができる。
神魂神社は、素戔嗚尊の母親である伊邪那岐命(いざなみのみこと)が主祭神。本殿は現存する大社造(たいしゃづくり)の中で最も古く、国宝に指定されている。創建年などは不明だが、天穂日命(あめのほひのみこと)を祖とする出雲国造(くにのみやつこ)家とゆかりが深く、古代出雲文化の中心地であったと考えられる。
神魂神社から北東に広がる大庭地区・竹矢地区には、4~7世紀に築かれた古墳、奈良・平安時代の出雲国府跡や国分寺跡などの史跡が点在する。この一帯で出土した埴輪や大刀(たち)といった重要文化財、『出雲国風土記』の写本などを展示する「八雲立つ風土記の丘」は、神魂神社から東へ徒歩10分ほどなので足を延ばしてみてはどうだろう。展示学習館を中心とするエリア内には、岡田山古墳群や再現された竪穴式住居、風土記植物園などもある。
神魂神社
- 住所:島根県松江市大庭町563
- アクセス:JR「松江」駅から市営バス「かんべの里行き」で約20分の「かんべの里」下車、徒歩3分。JR「松江」駅から一畑バス「八雲行き」で約18分の「風土記の丘入口」下車、徒歩10分。八重垣神社から徒歩20分
八雲立つ風土記の丘
- 住所:島根県松江市大庭町456
- 開館時間:午前9時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
- 休館日:火曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始(12月29日~1月1日)
- 入館料金:一般200円、大学生100円、高校生以下無料 ※外国人、団体割引など有り。企画展期間中は入館料が変更となる
- アクセス:JR「松江」駅から市営バス「かんべの里行き」で約18分の「風土記の丘」下車、徒歩すぐ。JR「松江」駅から一畑バス「八雲行き」で約18分の「風土記の丘入口」下車、徒歩2分
取材・文・写真=ニッポンドットコム編集部
(バナー写真=八重垣神社の拝殿)
(※1) ^ 奇稲田姫・櫛名田比売(くしなだひめ)ともいう