世界最大級の墓「仁徳天皇陵古墳」と百舌鳥古墳群:大阪府堺市

日本最大の古墳で、世界的にも最大級の広さの墓となる仁徳天皇陵古墳(大阪府堺市堺区)。周辺に点在する古墳と形成する百舌鳥(もず)古墳群は、古市古墳群(藤井寺市、羽曳野市)と共にユネスコの世界文化遺産の登録を目指している。

都会の真ん中に鎮座する巨大な古墳

大阪府堺市は、人口80万人を超える政令指定都市で大阪府第2の都市。ビルや住宅がひしめく市街地に、巨大な前方後円墳「仁徳天皇陵古墳(大仙陵古墳)」はある。「方=四角形」と円形を組み合わせた形状で、上空からは鍵穴のように見え、その全長は486メートルに及ぶ。約16万基もの古墳がある日本の中で最長で、世界三大墳墓に共に数えられる中国の「秦の始皇帝陵」が350メートル、エジプトの「クフ王のピラミッド」が230メートルなので世界的にみても最大級となる。

関連記事>ピラミッドに比肩する? 大山古墳(仁徳天皇陵)のプロフィール : 全長約500メートルの前方後円墳大阪・古市古墳群:「百舌鳥・古市古墳群」として世界遺産登録へ

堀が3重になっている仁徳天皇陵。下側(南)に隣接するのが大仙公園
堀が3重になっている仁徳天皇陵。下側(南)に隣接するのが大仙公園

前方後円墳は3重の堀に取り囲まれ、古墳全体の長さは最大840メートル、1周は2.7キロ。出土品や文献などから推測すると築造されたのは5世紀中頃で、誰の墓かは明らかになっていないが、宮内庁が第16代仁徳天皇の陵墓として管理している。

仁徳天皇陵を中心に、周辺には大小44基の古墳が密集して「百舌鳥古墳群」を構成している。堺市の東側にある藤井寺市から羽曳野市にかけては、日本で2番目の大きさの応神天皇陵古墳(誉田御廟山古墳)を含む古市古墳群もあり、「百舌鳥・古市古墳群」として大阪府初となるユネスコの世界文化遺産登録を目指している。

【追記 : ユネスコは2019年7月6日、アゼルバイジャンのバクーで開催した世界遺産委員会で、日本が推薦した「百舌鳥・古市古墳群」の世界文化遺産への登録を決定した】

真ん中が仁徳天皇陵。左奥に隣接する大仙公園で、さらに左奥が履中天皇陵。その左側にはいたすけ古墳や御廟山古墳も見える
真ん中が仁徳天皇陵。左奥に隣接する大仙公園で、さらに左奥が履中天皇陵。その左側にはいたすけ古墳や御廟山古墳も見える

ボランティアガイドとレンタサイクルを活用

百舌鳥古墳群を訪れるなら、まず仁徳天皇陵の南側に隣接する大仙(だいせん)公園に立ち寄りたい。「日本の都市公園100選」や「日本の歴史公園100選」に選ばれ、春には梅や桜の名所となることで知られる美しい公園だ。園内北側にある「大仙公園観光案内所」には、「堺まちあるきマップ」などの冊子が置かれ、観光ボランティアガイドが常駐する。レンタサイクルの貸し出しもしているので、ここで観光ルートを決めてから百舌鳥古墳群を巡ると効率的だ。公園中央にある堺市博物館では、VRコンテンツ「仁徳天皇陵古墳ツアー」によって、古墳群を上空から見下す疑似体験もできる。

梅が美しく咲く大仙公園
梅が美しく咲く大仙公園

仁徳天皇陵には周遊路が整備され、堀沿いの緑あふれる風景を楽しむことができる。ただし、1周2.8キロで徒歩だと約40分かかるので、レンタサイクルの利用をおすすめする。古墳前方(大仙公園側)の中央部には拝所があり、こちらにも黄色の帽子をかぶったボランティアガイドが待機している。ガイドは古墳に関する知識が豊富で、希望すればおすすめの場所を案内してくれるので、気軽に声を掛けてみよう。

仁徳天皇陵古墳拝所。ここからのみ、前方後円墳の一部を直接眺められる
仁徳天皇陵古墳拝所。ここからのみ、前方後円墳の一部を直接眺められる

平均年齢70歳を超える地元の人が、ボランティアガイドとして活躍している。目印は黄色い帽子やウィンドブレーカー
平均年齢70歳を超える地元の人が、ボランティアガイドとして活躍している。目印は黄色い帽子やウィンドブレーカー

大仙公園の南側には、墳墓の全長が365メートルと日本で3番目に大きい履中天皇陵古墳がある。公園は徒歩10~15分で縦断できるので足を運んでみてほしい。仁徳天皇陵の堀は三重なので、一番内側にある墳丘は拝所から一部が見えるのみだが、履中天皇陵は堀が一重なのでさまざまな角度から墳丘を眺めることができる。そこから、仁徳天皇陵の内掘の様子を想像してみるのも面白いだろう。

後方の円形部分が公園から見渡せる履中天皇陵
後方の円形部分が公園から見渡せる履中天皇陵

他にも、反正天皇陵古墳(田出井山古墳)、ニサンザイ古墳、御廟山古墳など全長200メートルを超える古墳や、小さいながらも由緒ある古墳などが徒歩圏内にたくさんある。JR阪和線「百舌鳥」駅近くのパン屋「ロアール」では、前方後円墳をかたどった「御陵あんぱん」や「仁徳メロンパン」が名物なので、古墳巡りのお供にいかがだろう。

大仙公園内にも小さな古墳がいくつかある
大仙公園内にも小さな古墳がいくつかある

パン屋・ロアールの名物「御陵あんぱん」
パン屋・ロアールの名物「御陵あんぱん」

堺市役所の展望ロビーで巨大さを実感

仁徳天皇陵はあまりに巨大なため、付近を観光しても全容を見ることができない。その広大さを感じるためには、北西にある南海高野線「三国ヶ丘」駅の屋上公園「みくにん広場」や永山古墳南側にある陸橋の上から眺めるなど工夫が必要となるが、1番のおすすめのビュースポットは堺市役所にある。

政令指定都市の中枢だけに立派な堺市役所
政令指定都市の中枢だけに立派な堺市役所

南海高野線「堺東」駅の目の前にあるガラス張りのビルで、最上階の21階は無料で入場できる展望ロビーとなっている。360度の眺めが楽しめる回廊式で、エレベーターホールの正面に仁徳天皇陵方面の景色が広がり、周囲の建物との比較で巨大さがよく分かる。しかし、ここでも横からの眺めとなり、空撮写真のような前方後円墳は確認できない。展望ロビーにもボランティアガイドがいるので、いろいろ尋ねながら、鍵穴のような姿を想像してみるといいだろう。

市街地に取り残された巨大な森のように見える仁徳天皇陵
市街地に取り残された巨大な森のように見える仁徳天皇陵

入場無料の展望ロビーで、パネル展示や観光ガイドの解説を楽しもう
入場無料の展望ロビーで、パネル展示や観光ガイドの解説を楽しもう

●アクセス
JR阪和線「百舌鳥駅」下車、徒歩約7分

取材・文=藤井 和幸(96BOX)
写真=黒岩 正和、藤井 和幸(96BOX)
(バナー写真:上空から見た仁徳天皇陵古墳)

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