北海道「知床流氷フェス」:知床の夜を満喫できる幻想的な雪と氷の空間
Guideto Japan
旅 イベント- English
- 日本語
- 简体字
- 繁體字
- Français
- Español
- العربية
- Русский
体験型に生まれ変わった冬の人気イベント
知床観光の玄関口となる斜里町は、地形的に流氷がたまりやすいため、日によっては海岸から水平線まで覆い尽くした光景を見ることができる。例年2月上旬頃から3月上旬までの間に流氷が接岸し、多くの観光客でにぎわう。
流氷の時季、世界自然遺産区域のすぐ手前にあるウトロ地区では、30年間にわたってレーザーショーがメインとなる夜間イベント「知床ファンタジア」を開催していた。2016年に惜しまれながら幕を閉じ、その後を引き継いで始まったのが「知床流氷フェス」だ。冬季は閉鎖されている国設知床野営場を会場として使用。ファンタジアが鑑賞型だったのに対し、知床の自然を満喫できる体験型イベントへと生まれ変わっている。
圧倒的な存在感を放つアイスドーム
知床流氷フェスの開催時間は午後6時30分から9時までで、場内はライトアップされて幻想的な雰囲気を醸し出す。その中でひときわ目を引くのが、造形作家・タケナカヒロヒコさんが手掛けたアイスドームとアイスタワーだ。
地元の漁師などの協力を得て約3週間で製作。タケナカさんいわく「自然とのダンスで生まれる作品」で、あらかじめデザインを決めず、知床の空気や景色などを感じ取りながら造り上げたという。
アイスドームの内部に入ると、氷の洞窟が続き、まるで迷宮のよう。壁やオブジェなどの造形は人工的ではなく、一つ一つが意志を持つかのように五感を刺激してくる。屋外と比べると暖かく、ホットドリンクやオリジナルカクテルが飲める「Bar the Ice」も営業しているので、休憩を取りながらゆっくりと鑑賞してほしい。
ゆるやかな時間が流れる会場で自然を楽しむ
会場内には至る所にたき火コーナーがあり、ハンモックや空中テントなどのアウトドア用品も設置されている。たき火は暖を取るだけでなく、鮭とば、マシュマロ、チーズ、ソーセージなどを炙(あぶ)って食べることができる。知床は星空が美しいことで知られるので、雲の少ない日はハンモックに寝ころびながら見上げてみよう。
他にも、土日限定のツリーイング体験では珍しい夜の木登りに挑戦でき、大型テントでは知床の自然を知り尽くしたネイチャーガイドのトークショーが楽しめる。
野営場の一角にある夕陽台展望台までの道には、人に反応して多彩なパターンでイルミネーションが点灯する「Electrical River」が仕掛けられている。展望台からは、世界初ともいわれる流氷のライトアップが眺められるので、ぜひ足を延ばしてほしい。
会場内の人気グルメは、鮭の漁獲量日本一の斜里町ならではの「知床チェプ饅(まん)」(鮭のちゃんちゃん焼きが入った中華まん)。氷のかまくら内にある「特別珈琲コーナー」では、自家焙煎(ばいせん)豆を使用したオリジナルブレンド「知床流氷珈琲」が提供される。どれも野外で冷えた体に染み渡るようなおいしさだ。
冬の知床は魅力が満載
夜に知床流氷フェスを楽しんだら、昼には斜里町の観光名所を回りたい。この時期は何と言っても流氷が一番の目玉で、浜辺に打ち上げられた流氷に乗ったり触れたりするのも楽しい。近年のウトロでは、浮力のあるドライスーツを着用して流氷の上を歩く、「流氷ウォーク」というガイドツアーが大人気となっている。
流氷を眺めるなら、ウトロから近い世界自然遺産区域にあり、斜里町側を一望できるプユニ岬がおすすめ。そのすぐ先のフレペの滝では、流氷によって削り取られた知床半島の断崖絶壁や野生のエゾシカも見ることができる。また、夕陽台展望台から眺める流氷と夕日の組み合わせも美しい。
冬季の知床は、夏季と比べると行ける場所は限られてくるが、非日常的な感覚をより深く味わえともいえる。日暮れ後に知床流氷フェスが開催されるタイミングに訪れれば、さらに自然の魅力を満喫できるだろう。
第3回 知床流氷フェス2019
- 開催期間:2019年1月30日(水)~2月28日(木)
- 時間:午後6時30分~9時 ※野外イベントのため悪天候等の理由により予告なしに中止する場合あり
- 場所:国設知床野営場 北海道斜里郡斜里町ウトロ香川
- 料金:500円(知床流氷フェス限定知床トコさん缶バッジ、1ドリンク付き)
取材・文=laufen
写真=克(laufen)
(バナー写真=知床流氷フェスのシンボル・アイスドーム ©2019HirohikoTakenaka)