日本三景 天橋立:海の京都で天空を舞う龍を望む
Guideto Japan
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古くから愛される海上に浮かぶ長大な松林
京都府北部の宮津市にある「天橋立(あまのはしだて)」は、若狭湾西端に位置する宮津湾と内海の阿蘇海を南北に隔てる幅20~170メートル、全長約3.6キロの砂州である。「神様が天に上るためのはしごが倒れてできた」など名の由来には諸説あるが、長大な砂浜を覆うように約8000本の松が茂る姿は、まさに天に架かる橋のようである。
天橋立の美しい景観は古くから多くの人に愛され、絵に描かれたり、詩歌に詠まれたりしてきた。京都国立博物館に所蔵される室町時代の水墨画家・雪舟が描いた『天橋立図』は国宝に指定されている。江戸時代前期の儒学者・林鵞峰は『日本国事跡考』の中で、広島の宮島や宮城の松島と並べて称賛し、それが日本三景の始まりとされる。17世紀末に天橋立を訪れた儒学者で本草学者でもあった貝原益軒も、『丹後国天橋立之図』や『己巳紀行(きしきこう)』に記録を残した。後者で「日本の三景の一とするも宜也」と書いていることから、当時から日本三景が広まっていたことがうかがえる。
●京都駅から天橋立駅までのアクセス
「京都駅」からJR山陰線で「福知山駅」まで行き、京都丹後鉄道・宮福線に乗り換えて「宮津駅」、宮豊線に乗り越えて「天橋立駅」へ。特急「はしだて」を利用すれば、乗り換えなしで約2時間
“股のぞき”で望む「飛龍観」と「昇龍観」
天橋立の展望所で代表的なのが、南側の「天橋立ビューランド」と北側の「傘松公園」の2つである。電車でのアクセスが容易な天橋立ビューランドは、天橋立駅からリフト・モノレール乗り場まで徒歩7分程度。リフトに乗れば約5分で、展望台や空中回廊、遊戯施設、レストランなどがある文珠山の山上に行くことができる。
天橋立を眺める時に、ぜひ挑戦して欲しいのが「股のぞき」だ。腰を曲げて自身の股の間から景観を楽しむ方法で、天地が逆になるため、まるで海が空のように感じられる。天橋立ビューランドからの股のぞきの景観は、天を飛ぶ龍のように見えることから「飛龍観」と呼ばれている。
天橋立駅の対岸、海抜130メートルの高台に位置する傘松公園にも股のぞき台がある。こちらの眺望は、龍が天に昇っていくように見えることから「昇龍観」と呼ばれる。園内には、床面が強化ガラスの空中廊下がある「スカイデッキ」やくつろぎながら眺望を楽しむ「スカイテラス」など多彩な展望スペースが設置されている。ケーブルカーの傘松駅近くには冠島沓島遥拝所もあるので、ぜひ立ち寄りたい。
海上からの眺めや「天橋立四大観」制覇もおすすめ
天橋立は徒歩で約1時間、自転車だと15分ほどで縦断することができるが、天橋立観光船を使うのもおすすめだ。天橋立駅から徒歩約4分の天橋立桟橋から対岸の一の宮桟橋まで約12分で結び、海上からの松並木を眺めることで長大さをより実感できるだろう。
車での観光や時間に余裕がある人は、阿蘇海西側の「大内峠一字観公園」や宮津湾東岸の「天橋立雪舟観展望休憩所」にも立ち寄りたい。それぞれの景観は、松並木が横一文字に見えることから「一字観」、水墨画『天橋立図』と構図が似ていることから「雪舟観」と呼ばれ、「飛龍観」「昇龍観」と合わせれば東西南北からの「天橋立四大観」を制覇することができる。また宮津はカニ料理がおいしいことで知られ、希少価値の高さから幻のカニともいわれる「間人(たいざ)ガニ」を提供する宿などもあるので、ぜひ一度味わってみてほしい。
取材・文・写真=黒岩 正和(96BOX)
(バナー写真=傘松公園から桜越しに望む天橋立)