京都の年末年始:風情あふれる冬の伝統行事
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■京都の年末行事
師走を感じさせる祇園「事始め」
毎年12月13日、祇園(東山区)の芸妓(げいこ)や舞妓(まいこ)たちが並んで歩き、日頃世話になっている芸事の師匠やお茶屋などにあいさつに行く風習が「事始め(ことはじめ)」である。芸妓たちは「おことうさんどす」とあいさつを交わす。これは「お事多さん」が語源とされ、「お忙しく、繁盛で何よりです」といった意味だ。
この日から花街では一足早く正月の準備に入り、特に世話になっている先には鏡餅を届けるという。しかし、一般の京都市民にとっては、着物姿であいさつに出向く芸妓たちの姿は、年の瀬の到来を知らせる風物詩。近年では、華やかな様子を撮影しようと、カメラを持った人々が事始めの日の祇園に集まってくる。
多くの人でにぎわう東寺「終い弘法」と北野天満宮「終い天神」
和歌山の高野山、香川の善通寺と並んで弘法大師の三大霊跡に数えられる京都の東寺(南区)。空海の命日にちなんだ21日には、古道具や古美術を扱う露店などが境内に並ぶ「弘法市」が毎月催されるが、12月の市は「終(しま)い弘法」と呼ばれて最も多くの人でにぎわう。五重塔を背景に、骨董(こっとう)品のほか、翌年の干支(えと)をかたどった置物などの正月用品、干し柿やたこ焼きなどを商う露店が1000軒ほどずらりと並ぶ。
菅原道真公を祀(まつ)る北野天満宮(上京区)では毎月25日に「天神市」が行われ、こちらも年内最後は「終い天神」と呼ばれて大盛況となる。正月用品店や植木屋などが並ぶ上に、境内では猿回しなども行われ、人々の歓声や笑い声に包まれる。境内で調製した正月の縁起物「大福梅(おおふくうめ)」は、事始めから終い天神頃まで初穂料700円で授与される。
東本願寺と西本願寺の「お煤払い」
毎年12月20日、午前7時頃から西本願寺(下京区)で、9時頃から東本願寺(同)で行われるのが「お煤払い(おすすはらい)」。お堂にたまった1年間のほこりを払う行事で、浄土真宗の中興の祖・蓮如が活躍した室町時代に始まったといわれる。
集まった門信徒らが竹の棒をしならせて勢いよく畳をたたくと、「ピシッ」と乾いた音と共にほこりが舞い上がり、それを大うちわであおいで外に払い出す。1年を無事に過ごした喜びを表すという意味も含む伝統行事である。
迫力ある知恩院「除夜の鐘 試し撞き」
浄土宗総本山の知恩院(東山区)では、大みそかの除夜の鐘に先立ち、12月27日に本番さながらに試し撞(つ)きが行われる。知恩院の大鐘は日本最大級の大きさを誇り、国の重要文化財に指定されている。高さ約3.3メートル、口径約2.8メートル、重さ約70トンで、東大寺と方広寺(ほうこうじ)の梵鐘(ぼんしょう)と共に日本三大梵鐘と呼ばれている。
その大鐘は、親綱を1人、子綱を16人の僧侶が引き、力を合わせて突く。親綱を持つ僧侶が「えーい、ひとーつ」と掛け声を上げると、子綱を持つ僧侶たちも復唱し、その後「そーれ!」という掛け声とともに、体全体を使って撞木(しゅもく)を引き大鐘を鳴らす。知恩院の大鐘が突かれるのは大みそかと浄土宗の開祖・法然上人の御忌大会、この試し撞きの時だけ。
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■京都の年始行事
平安絵巻のような八坂神社「かるた始め式」
1月3日、八坂神社(東山区)に祀られている素戔嗚尊(すさのをのみこと)が日本で最初に和歌を詠んだとされることにちなんで「かるた始め式」が開催される。境内の能舞台で、平安装束に身を包んだ女性や子どもたちが、かるた(百人一首)の手合わせをする。近年人気の競技かるたのような「払い手」は禁止され、札を押さえる「押し手」で競われることもあり、優雅な雰囲気に包まれる。
健康な1年を祈願する御香宮神社「七種神事(七草粥接待)」
神社での七草粥(がゆ)の振る舞いは、京都の新春の風物詩。「春の七草」を神前に供え、無病息災などを祈願した後、参拝者に七草粥が振る舞われる。
御香宮(ごこうのみや)神社(伏見区)は、もともと御諸(みもろ)神社と呼ばれていた。862年に境内で良い香りの清水が湧き,飲んだ人の病気がたちまち治ったため、清和天皇から「御香宮」の名を賜ったという。その清水「御香水」は、1985年に当時の環境庁が制定した「名水百選」に京都市内で唯一選ばれている。御香宮神社「七種神事」では、御香水で炊き込んだ七草粥が初穂料300円で振る舞われ、無病息災を願う多くの人々が行列を作る。
商売繁盛を祈願する京都ゑびす神社「十日ゑびす大祭」
1月10日の「十日ゑびす大祭(初ゑびす)」を挟んで、8日から12日までの5日間にわたって祭礼が開催される京都ゑびす神社(東山区)。
商売繁盛・家運隆昌(りゅうしょう)を祈願した吉兆笹の授与を中心に、東映太秦映画村の俳優たちによる「宝恵かご社参」、京都水産協会からの「招福まぐろ奉納」など多彩な神事が行われる。神社周辺には露店も並び、商売繁盛を願う人々で連日大いににぎわう。
新成人が晴れ着で弓を引く三十三間堂「大的大会」
三十三間堂(東山区)の長さ約120メートルの軒下で行われる「通し矢」は、鎌倉時代に武士が一昼夜かけて何本の矢を射通せるかを競ったのが起源とされている。
その通し矢にちなみ、毎年1月15日前後の日曜日に全国の弓道上級者や新成人など約2000人が集まり、三十三間堂の本堂西側の射場で開催されるのが「大的(おおまと)大会」。直径1メートルほどの的を約60メートルの距離から競射し、新成人が晴れ着姿で弓を引く華やかな様子が全国的に知られている。
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取材・文=藤井 和幸(96BOX)
写真=黒岩 正和、藤井 和幸(96BOX)
(バナー写真=西本願寺の大煤払い)