兵庫「竹田城跡」観光ガイド【前編】:天空の城を美しく望む
Guideto Japan
・雲海が発生する秋から冬にかけてベストシーズン
・春はソメイヨシノが満開になる
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人気観光スポットに急成長した竹田城
「天空の城」や「日本のマチュピチュ」と呼ばれ、日本国内ではもちろん、訪日観光客の人気も高い竹田城跡。兵庫県朝来(あさご)市の古城山(標高353メートル)の頂に残る石垣は、雲海に包まれると、雲の上に浮かんだ城塞(じょうさい)のように幻想的な景色となる。
竹田城跡は10年ほど前まで、国内でもあまり知られていなかった。2006年に「日本100名城」(日本城郭協会)に選定されたことから、歴史好きの観光客などが徐々に訪れるようになったという。同城跡への来訪者数を見ると、05年は1万2000人だったが、翌年には約2万人へと増えた。その後、メディアに取り上げられる機会が多くなり、12年に公開された高倉健最後の主演映画『あなたへ』や13年末に流れたGoogleのCM、14年のNHK大河ドラマ『軍師官兵衛』のロケーションに使われたことで人気が爆発。14年には58万人を記録した。現在は一段落して、ブーム当時ほどの大混雑ではないが、それでも17年には20万人強が来訪している。
“天空の城”を眺めるには
竹田城跡の見頃は、晩秋に始まる。古城山を包み込む雲海は、見られる時期や時間帯、発生する条件などがあるからだ。雲海は麓を流れる円山川から発生する霧である。日中に温められた川の水が朝の冷気に触れ、水蒸気として立ち上がる。そのため、次のような自然条件が重なった場合に発生する確率が高い。
●雲海が発生する条件
- 時期:9月下旬~12月 ※4月上旬まではまれに発生する
濃い雲海が発生しやすい10月~12月上旬がベストシーズン - 時間:明け方から午前8時頃まで
- 天候:前日の日中と当日の早朝が晴れていること
前日の昼間と当日朝の気温差が大きいこと ※10度以上の差が基準
湿度が高く、風が弱いこと
重要な役割を担った城の歴史
竹田城は、応仁(おうにん)の乱(1467-1477)の西軍総大将として有名な但馬守護の山名宗全(持豊)が、1443年ころに築城したといわれている。竹田の地は但馬(現在の兵庫県北部)と播磨(現在の兵庫県西南部)の国境にあり、播磨の赤松氏との攻防における要として、山名氏配下の太田垣氏が城主を務めた。
1577年に起きた竹田城の戦いで、織田信長軍の羽柴秀長(後の豊臣秀長。秀吉の弟)によって攻め落とされた。その後、秀長から部下の桑山重晴に譲られ、1585年に赤松広秀(斎村政広)が城主となる。広秀は関ケ原の戦い(1600)で西軍に付き、敗れた後に自刃し、竹田城も廃城となった。
昔のままの姿で残る石垣は約400年前、広秀の時代に整備されたといわれる。その石垣を頂く山の形が、遠くから眺めると虎が伏せているように見えることから「虎臥城(とらふすじょう、こがじょう)」と呼ばれることもある。
雲海シーズン以外も魅力たっぷり
竹田城の占有した土地は、南北約400メートル、東西約100メートル。石垣遺構からは、敵の侵入を防ぐための構造などが所々に見受けられるので、戦国時代に思いをはせてしまう。見事な石垣は、自然石をほとんど加工せずに積み上げられたもの。それを築いた石工(いしく)集団・穴太衆(あのうしゅう)には、「石の声を聞き、石の行きたい所へ置け」という教えがあり、400年以上たった今も、職人技で組まれた砦(とりで)は頑強な姿を見せている。
石垣を代表格に、雲海の時季以外にも見どころは十分。城跡には約20本のソメイヨシノが植えられ、円山川沿いには桜並木もあるので、春には満開の桜と竹田城の協演が見られる。夏には青空と濃い緑、秋の紅葉、冬の雪景色と、四季折々に竹田城は彩られる。入城時間は季節によって違い、1月4日~2月末日までは休城となるので、訪れる前にしっかりと確認しよう。
●竹田城跡の季節別の入城時間
- 春:3月1日~5月31日 午前8時~午後6時
- 夏:6月1日~8月31日 午前6時~午後6時
- 秋(雲海シーズン):9月1日~11月30日 午前4時~午後5時
- 冬:12月1日~1月3日 午前10時~午後2時
- 休城期間:1月4日~2月末日
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取材・写真・文=黒岩 正和
(バナー写真=雲海に包まれた竹田城跡)