宮城・石巻:東日本大震災からの復興に向かう港町を訪ねる

・新スポットが完成し、にぎわいを取り戻す石巻
・震災前から続く「マンガ」での町おこし
・三陸沖の新鮮魚介が味わえる

市街地と海を一望するビュースポット「日和山公園」

2011年311日に発生した東日本大震災では、死者15000人以上、行方不明者2500人以上と日本の自然災害史上、未曽有の犠牲者が出た。その主な原因は津波である。東北有数の漁港を持つ宮城県石巻市も、津波によって大きな被害を受けた都市の一つだ。死者は3000人以上を数え、基幹産業の漁業は壊滅的な打撃を受けた。

震災から7年以上がたち、石巻市街の風景は大きく変わった。観光客を受け入れるさまざまな施設やショップが完成し、市街の主要道周辺の整備も進んでいる。そうした復興の状況を見るのに適した場所が、市中心部の高台にある「日和山公園(ひよりやまこうえん)」だ。

日和山公園から旧北上川が流れる市街を望む

日和山公園は、俳聖・松尾芭蕉や詩人で童話作家の宮沢賢治などが訪れたことでも知られる歴史ある公園だ。元々は船を出航させる際に「日和(天候)」を見るための場所でもあったという。

高台にあるため、東日本大震災で津波が市街を襲った時、この公園には多くの人々が避難した。周辺はほとんど津波にのまれ、離れ小島のようになったという。津波が引いた後、すべてが変わり果てた石巻の惨状が広がり、多くの家屋やビルが流されてガレキや土砂に埋もれた光景は衝撃的であった。

現在の日和山公園からの眺望は、新たな建造物が増えた石巻市街の姿とさら地の被災場所とが混在。復興にはまだ時間を要することが、この場所に立つとよく分かる。

避難場所となった日和山公園

震災から約3週間後の石巻(2011年4月1日撮影)

【DATA】

  • 住所:宮城県石巻市日和が丘2丁目地内
  • アクセス:JR石巻駅から徒歩25
  • TEL:0225-95-1111(石巻市観光課)

萬画家・石ノ森章太郎の世界を体感できる「石ノ森萬画館」

旧北上川沿いに建つ円盤形の個性的な施設。石ノ森は、万物を表現できる「万画(よろずが)=萬画」と提唱し、自らも「萬画家」と称していた

石巻市街には旧北上川が流れており、河口近くの中瀬にあるのが「石ノ森萬画館(いしのもりまんがかん)」だ。宮城県出身で石巻市ゆかりのある萬画家の石ノ森章太郎(いしのもりしょうたろう)は、「一人の著者が描いたコミックスの出版作品数が世界で最も多い」としてギネス世界記録にも認定されている巨匠。宇宙船のような未来的な意匠も石ノ森の発案によるもので、館内では代表作『サイボーグ009』や『仮面ライダー』などの貴重な原画を展示紹介している。

東日本大震災では6.5メートル地点まで浸水し、ガラスは破壊され、1階の展示品は津波ですべて流されてしまった。しかし、被災10日後にはスタッフが復興に向けた作業を開始。ボランティアの助けを借りながら、20121117日に再オープンにこぎつけた。現在は、石巻の復興のシンボルともいえる存在となっている。

1階にはオリジナルアニメを上映する映像ホールや、当館でしか手に入らない特製グッズが並ぶ売店などがある。スロープを上った2階はメインフロアとなり、「サイボーグ009の世界」や「仮面ライダーの世界」などで、アトラクションや展示を通じて石ノ森作品を体感できる。

人気漫画・アニメ『サイボーグ009』などの展示が見られる 写真提供:石ノ森萬画館(C)石森プロ(C)石森プロ・東映

3階には、石ノ森を敬愛する多くの漫画家たちから寄せられた色紙を展示。簡単にアニメを描くことができる学習コーナーや6000冊以上のマンガを自由に読めるライブラリーもあり、漫画の世界にどっぷりと浸ることができる。

【DATA】

  • 住所:宮城県石巻市中瀬2-7
  • アクセス:JR石巻駅から徒歩12
  • TEL:0225-96-5055
  • 営業時間:午前9時~午後6時(122月は午後5時まで)
  • 定休日:3火曜(122月は火曜)
  • 料金:大人800円、中・高校生500円、小学生200
  • 多言語対応 :公式HP=英語

石巻の特産品が豊富にそろう新施設「いしのまき元気いちば」

石巻の農産品、鮮魚などが勢ぞろい

「石巻の新たな魅力を届けたい」と食品加工会社や地元飲食店などが協力し、20176月にオープンした施設が「いしのまき元気いちば」。地元産の鮮魚や水産加工品をはじめ、農産物、土産品などが幅広くそろっている。世界三大漁場に数えられる三陸沖を目の前にする石巻ならではの、旬の刺し身や寿司などもリーズナブルに購入できるのがうれしい。

2階のフードコートで味わえる「金華山丼」(3800円)

施設の2階は見晴らしのよいフードコートになっていて、三陸の旬のネタを使った和洋さまざまな料理が味わえる。中でも人気のメニューが、大きな丼に、エビやマグロ、イクラなど10種類以上のネタがたっぷりのった「金華山(きんかさん)丼」。ご飯もたっぷり盛られていて、2人くらいで食べてちょうどよいボリュームである。濃厚な甘みとうまみが楽しめるウニクリームパスタなども好評。河口付近ののどかな眺めを楽しみながら、ゆっくりと食事ができる。

【DATA】

  • 住所:宮城県石巻市中央2-11-11
  • アクセス:JR石巻駅から徒歩12
  • TEL:0225-98-5539
  • 営業時間:午前9時~午後7時、フードコートは午前11時~午後8時(ラストオーダーは午後730分)
  • 定休日:無休

【周辺情報】

シーパルピア女川

女川駅前にできたシーパルピア女川

仙台を拠点に石巻を訪れるのなら、女川まで足を延ばしてみてはどうか。石巻駅からJR石巻線に揺られ、約25分で女川駅にたどり着く。ここも東日本大震災で大きな被害を受けた港町で、復興のシンボルとして建てられたのが、新しい駅舎と駅前に広がる「シーパルピア女川」だ。買い物やグルメスポットが並ぶシーパルピア女川は、レンガ敷きの歩道の先に青い海を望む。そのロケーションは、女川の未来を感じさせる美しい場所だと話題になっている。

【DATA】

  • 住所:宮城県女川町女川浜大原1-4
  • アクセス:JR女川駅から徒歩すぐ
  • TEL:0225-24-8118(女川みらい創造)
  • 営業時間:施設により異なる
  • 定休日:施設により異なる

取材・文・写真=シュープレス
(バナー写真=「日和山公園」から望む石巻市街)

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