徳島・上勝町「ゼロ・ウェイスト運動」後編:世界に提言する「ゼロ・ウェイスト認証制度」とは?
Guideto Japan
・リユースのショップや工房を運営
・「ゼロ・ウェイスト認証制度」で町外にも活動の輪を広げる
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<前編:リサイクル率81%を達成した小さな町の大きな挑戦> はこちらから
リサイクルだけではごみをゼロにはできない
「これまでは、ごみとして出たものを“リサイクル”する努力を重ねてきましたが、今は“リユース”“リデュース”という、より上流に目を向けています」
そう語るのは、徳島県上勝町のNPO法人「ゼロ・ウェイストアカデミー」で理事長を務める坂野晶さん。
上勝町は2003年、全国に先駆けて「ごみゼロ(ゼロ・ウェイスト)宣言」をした町。現在は全町民がごみを13品目45分別しており、2016年度にはリサイクル率81%(※1)に達している。坂野さんたちは、今後のゼロ・ウェイスト運動は、リサイクルとごみの発生抑制の両輪で進める必要があると言う。
上勝町では、町民が「日比ヶ谷ごみステーション」に自らごみを運び込み、常駐スタッフのサポートを受けながら分別を行う。その際、「まだ使えるもの」「欲しい人がいると思われるもの」は、併設するリユースショップ「くるくるショップ」に移される。
くるくるショップは、まだ使えるものを町内外で循環させるための仕組みだ。持ち込みは上勝町民限定だが、持ち帰りは誰でも可。年間約15トン(2016年度統計)の「もったいないもの」が、くるくるショップを出入りする。
地元の祭りの廃品をリメイクして人気商品に
ゼロ・ウェイストアカデミーが事務所を構える「介護予防センターひだまり」内には、古布や古着、再生綿を使ったリメイク商品の制作と販売を行う「くるくる工房」もある。
鯉のぼり生地のウィンドブレイカーやぬいぐるみ、着物地のバッグなど、モダンで斬新なデザインの商品が並ぶ。鯉のぼり生地は、端午の時期に上勝町・月ヶ谷温泉前で開催される「彩 恋こい鯉まつり(いろどりこいこいこいまつり)」に合わせて勝浦川に飾られる大量の鯉のぼりの廃品。以前は、使えなくなると焼却していた鯉のぼりを有効活用しているのだ。
「くるくる工房は、ものづくりが得意な町内のおじいちゃん、おばあちゃんに声を掛けて始まりました。作り手さんは20人くらいいて、それぞれが得意分野を活かして作った商品を持ってきてくれます」(坂野さん)
(※1) ^ 「平成28年度一般廃棄物実態調査」環境省
ごみを出さない店舗を増やす認証制度
2017年、さらに民間からゼロ・ウェイスト推進を広げていこうと、ゼロ・ウェイストアカデミーは「ゼロ・ウェイスト認証制度」を設立。独自の基準に則って、ゼロ・ウェイストに取り組む飲食店などの事業所を、公的に認定する取り組みを始めた。
各事業所はまず、「従業員がゼロ・ウェイストの研修を受けていること」「自治体の制度に則り、適切な分別・リサイクルに取り組んでいること」「ゼロ・ウェイスト活動に目標を設定して計画的に取り組むこと」の3条件をクリアすることが求められる。
その上で、以下の6項目において審査を行い、項目ごとに認証する。認証しなかった項目については、「どうすれば認証できるか」を具体的にアドバイスしているそうだ。ここでは、リデュースにつながる項目が多く設定されていることに気付く。
- LOCAL FOOD:地産地消に努め、ごみの発生抑制に取り組む
- RETURNABLE:食材や資材の調達において、容器・包装などのごみを削減
- IDEA:おしぼりや砂糖などの無料サービスにおいて使い捨て製品を使わない
- OPEN for ACTION:利用者がごみの削減・分別に参加できる工夫をする
- BYO:「Bring Your Own」。マイボトル持参割引など、ごみの発生抑制に利用者が参加できる仕組みを導入・周知する
- LOCAL REUSE:古民家や建具など、地域資源を活用
2017年4月には、上勝町内の飲食店6店舗が初めての「ゼロ・ウェイスト認証店」として認定された(現在は7店舗)。ゼロ・ウェイストアカデミーでは、認証した店舗のゼロ・ウェイストへの取り組みをサポートすると同時に、メディア取材の紹介など広報活動にも協力している。
2017年7月には全国公募を行い、長崎県雲仙市のカフェ「刈水庵(かりみずあん)」を町外では初めて認証。この制度を通じて、町外にもゼロ・ウェイストを働きかけたい考えだ。
今、世界がごみ問題に関心を高めている
近年、海外から上勝町への視察が増えているという。その背景には、2017年に中国が世界貿易機関(WTO)に対して行った「廃プラスチックなどの輸入停止通告」や、2018年にEUが打ち出した「2030年までに使い捨てプラスチックの使用をなくす方針」などがある。リデュースやリユースが、世界共通の課題となった今、ふたたび上勝町への関心が高まっているのだ。
「海外から視察に来られるみなさんが、一番関心を持たれるのは『住民は正確に分別しているのか?』『どのように、回収や分別の大切さを認識してもらうのか』などです。でも、人の意識を変えるのは難しいこと。ごみを減らしたいなら、やはりごみの発生源を抑制する必要があると思います」(坂野さん)
例えば「ごみが出ない商品パッケージ」が主流になれば、ごみは確実に減るだろう。しかし、それ以前に、私たちの暮らしに潜む膨大なごみと資源に向き合う必要がありそうだ。
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取材・文=杉本 恭子
写真=生津 勝隆