300年の歴史を持つ大阪・堺「糀屋 雨風」で自家製みそ作りに挑戦

・ 全国でも珍しい、「みそ作り教室」を1年中開催している店
・ みそ作りの方法やコツを丁寧に教えてもらえる
・ 発酵に欠かせない「こうじ」は縁の下の力持ち

「手前みそ」昔は家庭で作るのが定番だった

大豆から作られる日本の伝統的な発酵食品で、調味料でもある「みそ」。江戸時代からの言い伝えに「みそは医者いらず」「朝のみそ汁は毒消し」とあるくらい、貴重な栄養源として親しまれてきた。

1689(元禄2)年創業の大阪府堺市にある「糀屋 雨風(こうじや あめかぜ)」では、1年を通して予約制で「みそ作り教室」を開催している。近年は、美容や健康維持の面から発酵食品が空前のブームで、手作りみそも人気となっているそうだ。

雨風15代目の豊田実さん(右)、宣広さん親子。家族で蔵を切り盛りする

「自画自賛を意味する“手前みそ”という言葉は、元は自家製の “手作りみそ”の意味。昔は各家庭で仕込むみその味が、家庭の味の象徴でした」と雨風16代目の豊田宣広さんは言う。現在も、堺市がある大阪南西部の泉州地方では、秋になると各家庭で新物の大豆や米でみそを仕込み、正月を迎える慣習が残っているという。

雨風の店内。自家製のこうじで作るみそやしょうゆ、甘酒などが並ぶ

宣広さんは、「手作りみそは生きている」とも話す。市販みその多くは、出荷前に加熱殺菌されるので発酵が止まってしまう。一方、手作りみそは常に発酵を続けるため、体に良い成分が失われることなく、熟成過程ごとの味の違いも楽しむことができる。

発酵の要となる「こうじ」とは?

「安心・安全なみそを届けたい」と材料はすべて国産

一般的な米みその材料は、大豆と米こうじ、塩の3つのみ。伝統的な堺みそでは、大豆と米こうじの比率を「2:1」にしているそうだ。

大豆は北海道産ツルムスメ。大粒で甘みが豊か

発酵に欠かせないこうじは、蒸した米や麦などの穀物に「コウジ菌」という、日本固有のカビを繁殖させたもの。

「カビといっても人間に害はなく、味覚的にも栄養的にも良い効果をたくさんもたらしてくれるんです」(宣広さん)

雨風は、この「こうじ作り」の老舗。創業から300年以上、昔ながらの木製の道具を使い、丸2日間をかけて手仕事でこうじを作り上げている。

蒸した米でコウジ菌を繁殖させた米こうじ。フワフワとした白い菌糸が米の表面を覆っている

こうじは、日本酒やお酢、しょうゆ作りにも欠かせない存在

発酵によってこうじから生まれる酵素は、大豆や米のタンパク質やデンプンを「うまみ成分」であるアミノ酸と「甘み」である糖に分解する。これがみそのおいしさの秘密。さらに老化防止やがん、生活習慣病のリスクを抑える成分も生み出すというから、いいことずくめなのである。

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