栄養抜群のスーパーフード「乾燥湯葉」の魅力:京都「千丸屋」
Guideto Japan
・お手軽鍋ランチで、乾燥湯葉をおいしく味わう
・アイデア次第で、乾燥湯葉の可能性は無限大
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大豆の栄養素を巧みに凝縮させた“先人の知恵”
「ヘルシーでおいしく、見た目も美しい」と、世界で注目されている和食。各国のスーパーでも、しょうゆなどの発酵調味料、豆腐やしらたき(ゼンパスタ)が並ぶようになった今、新たに注目が高まっているのが、豆腐と同じ大豆を原料とする湯葉である。
「湯葉は、中国生まれの伝統的な大豆の加工食品です。大豆を濾(こ)してすりつぶして作る『呉汁(ごじる・豆乳のこと)』を加熱した際に、表面にできる皮膜をすくい取って味わうものです。牛乳を温めると表面に膜が張りますが、原理はそれと同じものになりますね」
こう教えてくれたのは、1804(文化元)年に創業した京都の湯葉専門店「千丸屋」8代目の越智忠弘さん。工房では、今も昔ながらの職人の手仕事で湯葉作りが行われている。
約800年前、中国の禅僧によって京都に伝えられた湯葉。以来、動物の殺生が禁じられた僧侶たちにとって、貴重なタンパク源として精進料理で重宝され、いつしか京の家庭料理にも欠かせない食材となった。
「同じ大豆由来でも、豆腐は豆乳を加熱した後に『にがり』という凝固剤を加えます。湯葉は自身のタンパク質と熱の力だけで固まるため、材料は大豆と水のみ。素材のおいしさや栄養がそのまま凝縮されるといっても過言ではありません」(越智さん)
「畑の肉」と呼ばれるほどタンパク質が豊富な大豆。湯葉も当然、高タンパク・低カロリーで、コレステロールはゼロ。
「美容効果が高い大豆イソフラボンを中心に、抗酸化作用のあるサポニン、さまざまなアミノ酸がバランスよく含まれており、アンチエイジングにもおすすめですよ」(越智さん)
手軽な鍋で乾燥湯葉の奥深さを知る
現在は生湯葉が圧倒的な人気を誇るが、越智さんが力を入れているのは「乾燥湯葉」。冷蔵技術がなかった昔は、当然こちらが主流だった。干すことで長期保存が利き、うまみや栄養素がぎゅっと凝縮されるため、独特の風味を味わうことができる。だしやスープの中にポンと入れるだけで、手早く簡単に調理できるのもうれしい。忙しい現代だからこそ、再評価されるべき万能食材なのだ。
「この魅力を若い世代や海外にも伝えたい」と、千丸屋は2017年からランチ限定で湯葉鍋の提供を店内でスタートした。
使う具材は乾燥湯葉の他、鶏肉やしめじ、白ネギ、水菜と、家庭で簡単にそろえられる食材ばかり。だしは、昆布を一晩水にひたしておいたものを注ぐだけ。このシンプルさは、良質な大豆と水で作り上げた湯葉の味に自信があるからこそ。
具材は、だし醤油やわさび、おろし生姜であっさりといただく。鶏肉や野菜のエキスをたっぷりと吸った湯葉をひと口かみしめると、大豆のうまみが口の中に広がっていき何とも美味。むっちりとした弾力感も心地よく、食べ応えも抜群だ。
「大豆100%の食材なので、イタリアンやエスニックとの相性もいいですよ」と越智さん。例えば、細麺のような「巻ゆば」をパスタに見立てたり、フラットな「大原木ゆば」で魚介や野菜を生春巻きのように巻いたりしてもおいしいと言う。素揚げしてチップスにすれば、お酒のアテにもぴったり。
実は現在、海外向けに乾燥湯葉を使った「和風シリアル」を開発中だという。「TOFU」のように、「YUBA」が世界を魅了する日も近いかもしれない。
【DATA】
千丸屋
- 住所:京都市中京区堺町通四条上ル
- TEL:075-221-0555
- アクセス:地下鉄四条駅より徒歩7分
- 営業時間:販売=午前10時〜午後6時、食事=午前10時〜午後3時ラストオーダー
- 定休日:水曜日
- 公式ホームページ:http://www.senmaruya.co.jp/
取材・文=山口 紀子
写真=山崎 純敬