鹿児島「西郷どん」ゆかりの地を訪ねる

2018年は明治維新150周年。日本最南端に位置した薩摩藩は、大久保利通や大山巌、東郷平八郎など、幕末維新に多くの逸材を輩出。中でも江戸城の無血開城や明治新政府の樹立などに尽力し、“維新の三傑”にも数えられる西郷隆盛は、今なお全国で敬愛されている。「西郷どん」が誕生し、最期を迎えた地である鹿児島市には、ゆかりの史跡や施設が点在。それらを巡りながら、激動の時代を駆け抜けた英傑の足跡をたどる。

薩摩の偉人たちが生まれ育った加治屋町

1828(文政11)年、鹿児島市加治屋町で下級武士の長男として誕生した西郷隆盛。彼が生まれ育った「西郷隆盛誕生地」は、公園として整備され、石碑が立っている。この辺りは下級藩士が暮らした加治屋町で、西郷をはじめ、大久保利通や大山巌、東郷平八郎、山本権兵衛(ごんのひょうえ)ら幕末維新に活躍した偉人を数多く輩出している。

甲突(こうつき)川近くにある西郷隆盛誕生地

「西郷隆盛誕生地」

  • 住所:鹿児島県鹿児島市加治屋町5
  • アクセス:JR「鹿児島中央駅」から徒歩約10分、カゴシマシティビュー「維新ふるさと館前」から徒歩約1分 

西郷隆盛誕生地から徒歩1分の甲突川沿いにある「鹿児島市維新ふるさと館」は、明治維新をテーマにした歴史ミュージアム。幕末維新期の薩摩の姿や明治維新で活躍した偉人について、ジオラマや映像など、ハイテク技術を駆使した展示や演出で分かりやすく紹介している。

西郷や大久保利通のふるさと、鹿児島市加治屋町にある維新ふるさと館

館内は20181月にリニューアルオープン。薩摩独自の青少年教育システム「郷中(ごじゅう)教育」を紹介するゾーンが、体験型展示に生まれ変わるなど魅力が増した。川遊びや押し相撲、武者カルタ、薩摩藩に伝わる古代剣術・示現(じげん)流など、幼少期から青年期にかけて西郷たちが体験した遊びや教えをゲーム感覚で学ぶことができる。

体験型の郷中教育ゾーンは子どもから大人まで楽しく学べる

英傑たちの偉業や歴史などを紹介するコーナー

 維新ふるさと館の目玉が、リアルなロボットと映像を駆使した「維新体感ホール」。幕末から明治にかけての歴史を解説する「維新への道」と、薩摩藩が英国へ留学生を派遣した様子を再現した「薩摩スチューデント、西へ」の2本のドラマが交互に上映されている。その臨場感あふれる舞台は必見だ。

精巧なロボットたちが幕末維新のドラマを繰り広げる

 「維新ふるさと館」

  • 住所:鹿児島県鹿児島市加治屋町231
  • アクセス:JR「鹿児島中央駅」から徒歩約8分、カゴシマシティビュー「維新ふるさと館前」下車
  • TEL099-239-7700
  • 営業時間:午前9時~午後5時(入館は午後430分まで) ※時期により時間延長有り
  • 休館日:年中無休
  • 料金:高校生以上300円、小・中学生150円 団体割引有り

西郷隆盛が最期を遂げた城山へ

標高107メートルの「城山」は、鹿児島市の中心部にある緑豊かな小高い丘。1877(明治10)年に勃発した西南戦争では薩軍の本陣が置かれ、最後の激戦地となった。現在、一帯は公園として整備され、憩いの場として鹿児島市民に親しまれている。

城山は鹿児島市街や錦江湾、桜島を一望できるビュースポット

城山の中腹にひっそりたたずむのが「西郷隆盛洞窟」。西南戦争の際、官軍の総攻撃を受けて追い詰められた西郷が、桐野利秋や村田新八、別府晋介ら薩軍幹部とともに最期の5日間を過ごしたといわれる洞窟だ。この洞窟を出た後、西郷は銃弾を受けて負傷し、自刃したと伝わる。

間口約3メートル、奥行き約4メートルの洞窟が残る西郷隆盛洞窟

西南戦争の舞台となった城山の麓には、台座を含む高さ約7mの「西郷隆盛銅像」が立つ。西郷の没後50年を記念し、渋谷の「忠犬ハチ公」を手がけた鹿児島出身の彫刻家・安藤照氏によって8年の歳月をかけて制作された。陸軍大将の軍服を着たその像は、鹿児島の町を今も見守り続けているようだ。

「西郷銅像前 撮影ひろば」では、銅像や西郷の愛犬・ツンをほうふつとさせる犬の置物と一緒に記念撮影ができる

「城山」

  • 住所:鹿児島県鹿児島市城山町
  • アクセス:JR「鹿児島中央駅」から自動車で約15分、カゴシマシティビュー・まち巡りバス「城山」下車

西郷ら薩摩志士が眠る「南洲墓地」

城山から車で約10分。西郷の没後100年を記念し、昭和53年に建設された「鹿児島市立西郷南洲顕彰館」へ。「南洲」とは西郷の号。ジオラマや映像を交え、西郷の生涯や思想、功績を分かりやすく伝える展示がそろう。

西郷が江戸城を無血開城に導いた功績にちなみ、建物のコンセプトは“城壁を開く”。正面から見ると漢字の「開」の形をしていることに気づく

玄関から入ると、正面に西郷の肖像画が出迎えてくれる

館内には西郷直筆の書や手紙、衣服、西南戦争に関する資料などが展示されている。中でも注目したいのが、鹿児島県指定文化財である西郷自筆の書「敬天愛人」。西郷の座右の銘で、好んで揮毫(きごう)したということはよく知られている。「敬天愛人(天を敬い、人を愛する)」とは、どんな人にも誠意を持って分け隔てなく接し、人々のために尽くすということ。情を重んじ、仲間を大切にした西郷の生きざまがよく表れている。

西郷自筆の書「敬天愛人」を所蔵。特別展などの際に公開される

陸軍元帥だった頃のマントなど、西郷の貴重な遺品も展示されている

西南戦争で薩軍と官軍が使用した銃や小銃弾などの史料も充実

西郷南洲顕彰館と同じ敷地に、西郷をはじめ西南戦争で亡くなった薩軍志士2023名が埋葬されている「南洲墓地」がある。西郷の墓を取り囲むように、篠原国幹や桐野利秋、村田新八、別府晋介ら薩軍幹部の墓が並ぶ。今も多くの人が墓前に手をあわせる姿が見られ、西郷の人気の高さをうかがわせる。

南洲墓地から眺める桜島。西郷を祀(まつ)る「南洲神社」が隣接している

中央が西郷の墓。右側に篠原国幹、左側に桐野利秋の墓がある

「西郷南洲顕彰館」

  • 住所:鹿児島県鹿児島市上竜尾町2-1
  • アクセス:JR「鹿児島中央駅」から自動車で約17分、カゴシマシティビュー「西郷南洲顕彰館(南洲公園)前」から徒歩約1分、まち巡りバス「南洲公園入口」から徒歩約6
  • TEL:099-247-1100
  • 開館時間:午前9  午後5
  • 休館日:月曜日、1229日~11日 ※平成302  平成313月は年中無休
  • 入館料:高校生以上200円、小中学生100円 ※団体割引有り

取材・文=佐藤 史(ポルト)
写真=草野 清一郎

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