カメラ片手に古都・鎌倉さんぽ

絶景!鎌倉の梅名所:有名寺社から富士山背景の穴場まで

文化 環境・自然・生物

平安初期まで花見といえば梅の花だった。こんにちの鎌倉(神奈川県)でも早春を紅白に彩り、散策の楽しみとなっている。古都写真家がお薦めの観梅スポットを紹介する。

早春を彩り日本情緒を感じさせる花

日本を代表する花といえば桜だが、かつてはが春の代名詞だった。1500年ほど前に中国から伝わり、奈良時代にはすでに庭木としてめでられ、数々の和歌にも登場する。鎌倉時代には武士をはじめ、幅広い人々に親しまれるようになった。

鎌倉では1月下旬から3月中旬まで咲き競う。今も春を告げる花として愛され、散策する人の目を喜ばせている。

源頼朝旧邸の北東にある荏柄天神社(えがらてんじんしゃ)の拝殿前 写真=原田寛
源頼朝旧邸の北東にある荏柄天神社(えがらてんじんしゃ)の拝殿前 写真=原田寛

鎌倉の梅名所といえば、まず何といっても荏柄天神社。源頼朝が鎌倉幕府の鬼門の守り神として尊崇し、当時は太宰府天満宮(福岡県)、北野天満宮(京都市)と共に日本三天神に数えられた。

天神様とあがめられる菅原道真は平安中期の文人・政治家で、梅をこよなく愛したため、全国に約1万2000社ある天満宮や天神社には必ずといっていいほど植えられている。100本以上が咲き誇る荏柄天神社の中でも、拝殿前にある紅白一対の梅が特に印象的だ。見頃が受験シーズンと重なることから、学問の神・天神様に合格祈願する人が詰めかけ、社殿には数多くの絵馬が掲げられる。

梅シーズンの瑞泉寺 写真=原田寛
梅シーズンの瑞泉寺 写真=原田寛

寺院の梅名所としては、荏柄天神社から程近い瑞泉寺が代表格。最盛期に拝観受付の前に立つと、全山が梅に埋め尽くされたような景観を目の当たりにできる。種類が豊富なため、花が咲いている期間が長いのも特徴だ。

中でも貴重な品種が、江戸時代から本堂前に立ち、薄黄色のかれんな花を咲かせる黄梅(おうばい)。日本植物学の父と呼ばれる牧野富太郎が命名したことで知られる。

瑞泉寺の黄梅は鎌倉市の天然記念物 写真=原田寛
瑞泉寺の黄梅は鎌倉市の天然記念物 写真=原田寛

人気の梅は市内のあちこちに

鎌倉から東の横浜市金沢区へと続く古道、朝夷奈切通(あさいなきりどおし)の奥にある十二所(じゅうにそ)果樹園は、市内最大規模の梅林を持つ。梅や栗、ゆずを育てる農園だが、誰でも自由に壮観な白梅を一望できる。

鎌倉風致保存会のトラスト地で400本の梅の木がある十二所果樹園 写真=原田寛
鎌倉風致保存会のトラスト地で400本の梅の木がある十二所果樹園 写真=原田寛

あまり知られていない場所では、市内南東部にある名越(なごえ)切通の梅も絶品。JR横須賀線の名越坂踏切近くの細い山道を数分登って振り返ると、白梅の背景に長勝寺本堂の大屋根と名峰富士山が望める。壮大な風景を独り占めできる穴場だ。

名越切通からの眺め 写真=原田寛
名越切通からの眺め 写真=原田寛

最後に紹介するのは高徳院鎌倉大仏から程近い長谷寺。品種もさまざまな約40本が境内を彩り、例年2月上旬から3月上旬の梅まつり期間は、鎌倉の寺社で唯一の夜間ライトアップを楽しめる。闇に照らし出された花は幻想的で美しい。

長谷寺は貴重な夜の観梅スポット 写真=原田寛
長谷寺は貴重な夜の観梅スポット 写真=原田寛

写真・文=原田寛

バナー写真:長谷寺のしだれ梅

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