「のと里山里海号」で晩秋&冬の奥能登へ
Guideto Japan
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日本列島のほぼ真ん中に位置し、日本海に向かって、曲げた左親指のように突き出した能登半島。西岸と東岸では景観が異なり、奇岩・絶壁が連続する西岸とは対照的に、内浦の東岸は穏やかな海岸線が続く。
のと里山里海号はそんな東岸の中でも、沖合に浮かぶ能登島が“ふた”となって湖のように波静かな七尾湾に沿ってのんびり走る。七尾駅から穴水駅までの所要時間は約1時間。各駅停車の普通列車より20分ほど時間をかけて進む。
外観は日本海の深い青色をイメージしているが、車内にも“能登らしさ”が漂う。例えば座席の間仕切り。七尾市田鶴浜(たつるはま)町に江戸時代初期から伝わる、田鶴浜建具の組子細工でできており、輪島塗のパネルが組み込まれている。
列車は能登中島駅で15分ほど停車する。保線車両の引き込み線には、1986年まで現役で活躍していた鉄道郵便車「オユ10」が保存されており、のと里山里海号の乗客は自由に車内を見学できる。
能登中島駅を出て里山を抜けると、車窓一面に七尾湾が広がった。ここから穴水駅まで海景色が続き、途中3カ所の“絶景ポイント”で一時停車する。
こうしてのどかな車窓を眺めながらウトウトしかけたところで終点の穴水駅に到着する。
同駅の“冬の名物”は、構内にある牡蠣食堂「あつあつ亭」。のと鉄道の直営で、鉄道会社らしく、ホーム横とプラットホームをつなぐ「跨線橋(こせんきょう)」上にある。その名の通り、炭火で焼いたアツアツの牡蠣をお得に味わえると評判だ。
養殖牡蠣は通常、収穫まで2~3年かかるが、エサとなるプランクトンが豊富な七尾湾の牡蠣は成長が早く1年で出荷される。2年もの、3年ものに比べると小粒だが、その分、肉厚で甘みがあるという。
旅程としては例えば、七尾駅や和倉温泉から穴水駅まで観光列車で行き、穴水駅からバスで輪島に向かい1泊、翌日バスで穴水に戻り、七尾駅まで普通列車に揺られて帰る―といったプランがお勧め。のと鉄道、奥能登路線バス2日間乗り降り自由の「奥能登まるごとフリーきっぷ」(3000円)が便利だ。
輪島市は輪島塗や朝市で知られるが、輪島駅前から路線バスで20分ほどの「白米千枚田」にもぜひ足を運びたい。
日本海になだれ込むように小さな田が重なり、黄金色の稲穂が揺れる秋、雪模様に覆われる冬と、四季ごとの景観が楽しめる。幾何学模様を描く絶景は、2011年、日本で初めて世界農業遺産に認定された「能登の里山里海」のシンボル的存在だ。
輪島からの帰途、夕暮れの七尾湾を見たくなり、七尾駅の一つ手前の和倉温泉駅で下車。温泉街に向かって20分ほど歩くと、海辺の公園「湯っ足りパーク」内に無料の足湯「 妻恋舟の湯」がある。松林の先に横たわる能戸島、茜色に染まる温泉街をただぼんやり眺めて過ごす。旅の疲れも癒される至福のひと時だ。
バナー写真:日本の原風景が広がる奥能登を走る観光列車「のと里山里海号」。濃紺の外観は日本海の深い青を表現し、能登地方に伝わる黒瓦(能登瓦)のように美しく輝く鏡面仕上げ
画像提供:のと鉄道