写真で楽しむ東北の国立公園:神宿る山々と清らかな水、深い雪が生み出す雄大な風景

内陸部の火山地帯は険しい峰が連なり、深い森や花咲く高原、澄んだ水をたたえた湖沼が壮大な景色を織りなす。波に削られた海岸線には断崖や奇岩が並び、荒々しくも風情がある。新緑に紅葉、銀世界と四季折々の表情を見せる東北の国立公園を、絶景写真で紹介していく。

十和田八幡平国立公園(青森県、秋田県、岩手県)

透明度の高い十和田湖の水が流れる奥入瀬(おいらせ)渓流。特に紅葉シーズンはにぎわう 写真提供:青森県観光連盟
透明度の高い十和田湖の水が流れる奥入瀬(おいらせ)渓流。特に紅葉シーズンは人気が高い 写真提供:青森県観光連盟

十和田八幡平国立公園は、大部分が青森に属する十和田・八甲田地域と、岩手と秋田の県境に広がる八幡平地域で構成され、緑豊かな山々と清らかな水をたたえる湖沼や渓流が美しい風景を生み、冬には雪と樹氷がアクセントを加える。

八甲田山は火山群で、大岳(標高1585m)を主峰とする北八甲田連峰と、櫛ヶ峰(標高1517m)などの南八甲田連峰に分かれる。北八甲田は登山道が整備され、田茂萢岳(たもやちだけ、標高1324m)には八甲田ロープウェーもあるので、気軽にハイキングやスキーが楽しめる。手付かずの場所も多い南八甲田は、経験豊富な登山者向きだ。

八甲田山の大岳と薬師神社の鳥居  写真提供:青森県観光連盟
八甲田山の大岳と薬師神社の鳥居  写真提供:青森県観光連盟

樹氷の上を通過する八甲田ロープウェー 写真提供:東北観光推進機構
樹氷の上を通過する八甲田ロープウェー 写真提供:東北観光推進機構

青森県と秋田県にまたがる十和田湖は、標高400メートル地点にある周囲46キロのカルデラ湖。透明度が高く、最深部は327メートルもあるため、神秘的な藍色をたたえる。そこから流れ出す長さ約14キロの奥入瀬渓流と共に、国の「特別名勝および天然記念物」に指定される日本有数の景勝地だ。

十和田湖畔には遊歩道があり、遊覧船も運航している 写真提供:青森県観光連盟
十和田湖畔には遊歩道があり、遊覧船も運航している 写真提供:青森県観光連盟

涼し気な新緑シーズンの奥入瀬渓流 写真提供:青森県観光連盟
涼し気な新緑シーズンの奥入瀬渓流 写真提供:青森県観光連盟

最大標高1614メートルの高原台地・八幡平には、八幡沼をはじめ湖沼や湿原が点在し、多様な生態系が見られるトレッキングスポット。冬は雪深く、早春に開通する観光道路・八幡平アスピーテラインなどの「雪の回廊」は名高い。八幡平地域の最南部は高原植物の宝庫として知られる秋田駒ケ岳で、東は岩手県最高峰の岩手山(標高2038m)まで含まれる。

火山性高原・八幡平の雄大な風景。中央の八幡沼周辺には遊歩道や展望台が整備されている 写真提供:岩手県観光協会
火山性高原・八幡平の雄大な風景。中央の八幡沼周辺には遊歩道や展望台が整備されている 写真提供:岩手県観光協会

秋田駒ケ岳の登山道沿いに咲く高山植物・ノウゴウイチゴ 写真提供:秋田県観光連盟
秋田駒ケ岳の登山道沿いに咲く高山植物・ノウゴウイチゴ 写真提供:秋田県観光連盟

高さ8メートルになることもある八幡平アスピーテラインの「雪の回廊」 写真:PIXTA
高さ8メートルになることもある八幡平アスピーテラインの「雪の回廊」 写真:PIXTA

八甲田・大岳西麓にある混浴大浴場「ヒバ千人風呂」の酸ヶ湯(すかゆ)温泉、渓流沿いに一軒宿が点在する秋田県仙北市の乳頭温泉郷など両地域ともに温泉に恵まれ、観光客は登山やハイキングと一緒に湯巡りも楽しんでいる。

(指定:1936年2月1日、面積:8万5534 ha)

長期滞在する湯治客も多い酸ヶ湯温泉の千人風呂 写真提供:青森県観光連盟
長期滞在する湯治客も多い酸ヶ湯温泉の千人風呂 写真提供:青森県観光連盟

三陸復興国立公園(青森県、岩手県、宮城県)

切り立った海食崖に松の緑が美しい岩手・浄土ヶ浜 写真提供:東北観光推進機構
切り立った海食崖に松の緑が美しい岩手・浄土ヶ浜 写真提供:東北観光推進機構

1955(昭和30)年に指定された陸中海岸国立公園に、東日本大震災からの復興の一助とするために、2013(平成25)年に青森の種差海岸階上岳県立自然公園、2015(平成27)年に宮城の南三陸金華山国定公園を編入。太平洋沿岸の約250キロにわたる三陸復興国立公園が誕生した。

ウミネコの繁殖地で国の天然記念物に指定される蕪島(かぶしま、青森県八戸市)が最北部で、その南には海食崖や奇岩など変化に富んだ地形の種差海岸、太平洋が一望できる階上岳(標高740m)がある。

ウミネコが飛び交う蕪島神社はパワースポットとして人気  写真提供:青森県観光連盟
ウミネコが飛び交う蕪島神社はパワースポットとして人気  写真提供:青森県観光連盟

北限の海女として有名な岩手の久慈から、魚介の宝庫・宮古湾までの旧陸中海岸国立公園の北部エリアには、50~200メートルの断崖が連なり、「海のアルプス」とも称される。宮古の南には入り組んだリアス式海岸が続き、変化に富んだ景色を生み出すと同時に、内湾部には釜石や大船渡、気仙沼など日本有数の水揚げを誇る漁港を擁する。

釣鐘洞(写真)など奇岩や岩礁の連なる小袖海岸 写真:PIXTA
釣鐘洞(写真)や兜岩など奇岩や岩礁の連なる久慈の小袖海岸 写真:PIXTA

岩手・北山崎の断崖は、高さは最大で200メートルに達する 写真:PIXTA
岩手・北山崎の断崖は、高さは最大で200メートルに達する 写真:PIXTA

緑豊かな離島・気仙沼大島。鳴き砂で知られる国の天然記念物・十八鳴浜(くぐなりはま)や人気海水浴場・小田の浜、標高325メートルの亀山がある 写真提供:宮城県観光プロモーション推進室
車でアクセス可能な離島・気仙沼大島。鳴き砂で知られる国の天然記念物・十八鳴浜(くぐなりはま)や人気海水浴場・小田の浜、標高325メートルの亀山など人気スポットが多い 写真提供:宮城県観光プロモーション推進室

最南部の牡鹿半島からは女川湾を一望でき、その南東に浮かぶ島・金華山は恐山、出羽三山と並ぶ奥州三霊場で手付かずの自然が残る。気仙沼陸前高田など、各地には津波の脅威を物語る震災遺構があり、祈念公園や震災伝承館も造られている。雄大な景色を眺め、海の恵みを味わいつつ、震災からの復興の歩みや防災意識の大切さも実感できる貴重な国立公園だ。

(指定:1955年5月2日、※2013年5月24日の区域拡張に伴い、現名称に変更 面積:2万8539 ha)

牡鹿(おじか)半島・御番所公園からの眺望。右に浮かぶのが金華山 写真:PIXTA
牡鹿(おじか)半島・御番所公園からの眺望。右に浮かぶのが金華山 写真:PIXTA

「奇跡の一本松」と津波に飲み込まれた陸前高田ユースホステルの遺構 写真:ニッポンドットコム
奇跡の一本松と津波に飲み込まれた陸前高田ユースホステルの遺構 写真:ニッポンドットコム

磐梯朝日国立公園(山形県、福島県、新潟県)

羽黒山の大鳥居越しに月山を望む 写真:PIXTA
羽黒山の大鳥居越しに月山を望む 写真:PIXTA

磐梯朝日国立公園は、山岳信仰の地・出羽三山から南へ、多様な動植物が魅力の朝日連峰や飯豊(いいで)連峰、レジャー客に人気の吾妻連峰や磐梯山(標高1816m)、猪苗代湖までおよぶ広大な国立公園。

出羽三山は、月山(がっさん、標高1984m)頂上にある月山神社、羽黒山(標高414m)頂上の出羽(いでは)神社、湯殿山(ゆどのさん)中腹の湯殿山神社の総称で、修験道の聖地として名高い。参拝や史跡巡りに加え、月山北面の溶岩台地・弥陀ヶ原など見どころが多い。

国宝の羽黒山五重塔と樹齢1000年とされる爺杉(じじすぎ) 写真提供:山形県観光物産協会
国宝の羽黒山五重塔と樹齢1000年とされる爺杉(じじすぎ) 写真提供:山形県観光物産協会

湯殿山の大鳥居 写真提供:山形県観光物産協会
湯殿山の大鳥居 写真提供:山形県観光物産協会

月山の8合目に広がる弥陀ヶ原湿原 写真:PIXTA
月山の8合目に広がる弥陀ヶ原湿原 写真:PIXTA

朝日・飯豊連峰は、ブナ原生林など原始的な景観が残り、高地の湿原や草原には厳しい環境を生き抜く希少な植物や昆虫が生息する。

福島県のシンボル・磐梯山と猪苗代湖、火口壁を周遊できる吾妻小富士(標高1707m)や最高峰・西吾妻山(標高2035m)が連なる吾妻連峰は、首都圏からのアクセスが良く、観光客でにぎわう。周辺には裏磐梯の五色沼や安達太良山、土湯・高湯温泉郷などの人気スポットも点在している。

(指定:1950年9月5日、面積:18万6389 ha)

中央が朝日連峰の主峰・大朝日岳(標高1871m)  写真提供:山形県観光物産協会
中央が朝日連峰の主峰・大朝日岳(標高1871m) 写真提供:山形県観光物産協会

飯豊連峰の麓にあるブナの森・温身平(ぬくみだいら) 写真:PIXTA
飯豊連峰の麓にあるブナの森・温身平(ぬくみだいら) 写真:PIXTA

雄大な猪苗代湖と雪化粧した磐梯山 写真提供:福島県観光物産交流協会
雄大な猪苗代湖と雪化粧した磐梯山 写真提供:福島県観光物産交流協会

秋色に染まる安達太良山。ロープウェーで山頂まで行くことができる 写真:PIXTA
秋色に染まる安達太良山。ロープウェーで山頂まで行くことができる 写真:PIXTA

バナー写真:五色沼湖沼群・るり沼から磐梯山を望む 写真:PIXTA

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