【幻の岩海苔】松前 ライカ北紀行 —函館— 第54回
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一口食べると磯の香がひろがる。さらに二段重ねて口にいれると美味い! 箸がすすむ、すすむ。ついに弁当ひとつ、一気に食べてしまった。松前「海苔だんだん弁当」。
函館から車で西へ2時間ほどの津軽海峡の町・松前。冬、寒風の下、漁師のおかみさんたちが、荒波に洗われた岩場で岩海苔を一つ一つ手で摘み、すだれで天日干しに。量が少なく、地元で食べられてしまうので、“幻の岩海苔”といわれる。そのなかでも1~2月に採れる海苔は味がよく、“寒海苔”として珍重される。
老舗・温泉旅館「矢野」のレストラン。この幻の岩海苔を二段に敷いた「海苔だんだん弁当」と出会い、素朴なのに超高級な贅沢を味わった。
松前といえば、お城と桜といわれる。だが、夏ともなれば、紫陽花がお城のあちこちで咲き乱れる。150年あまりまえ、旧幕府軍は蝦夷地に上陸し五稜郭を占領した。そのあと、新選組副長・土方歳三は700人ほどを率いて、巧みな采配により、鉄壁の守りの松前城をわずか数時間で攻め落している。
松前で空砲に終わったことが二つある。矢野旅館の名物若女将・杉本夏子さんの姿をチラリとも見かけず、空砲。さらに、岩海苔の一帖でもと町中をめぐったが、やはり幻であった。来春も、松前へいざ行かん。
●道案内
松前 函館から車で約2時間(地図へ)