【まねき大達磨】尊徳堂 ライカ北紀行 —函館— 第36回
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雨にも雪にも負けず犬小屋のそばに座っていた大達磨(だるま)が、夏の晴れたある日、屋根のうえに登った。うす汚れていた目元にピンクのアイシャドーが描かれ、ところを得たように夕日にかがやいている。道ゆく人も店のご主人・石井さんも、にこにこ顔で見あげている。
僕の自宅ちかくに古物商「尊徳堂」が開業して40年あまり。地元の造船会社・函館どつくに籍を置いていたが、造船不況となりタクシー稼業へ。さらに、“がらくたも時には価値あり”と教えられ、未知なる骨董の世界へ飛びこんだという。
店をひらいてほどなく、旧家の物置で福沢諭吉が函館商人と交わした手紙の大きな束と出会った。「買い取りたい」「図書館に寄付してくれ」などと大騒ぎの末、市内の古本屋の手にわたった。
達磨が屋根に登ってから、お客さんがふえ、辺りも明るい雰囲気となった。まねき達磨はしあわせを呼んでいる。
●道案内
尊徳堂 市電「深堀町」下車、徒歩2分(地図へ)