【函館朝市】 ライカ北紀行 —函館— 第34回

西野 鷹志 【Profile】

第2次大戦が終わり食糧難のころ、近郊の農家のひとが函館駅前、青函連絡船桟橋のそばで、野菜を立ち売りして始まった朝市。はじめはヤミ市であったが、魚屋、さらに青森から連絡船で通う米の担ぎ屋も現われて市民の台所となり、やがてメロン、カニも商って観光客が加わった。

朝市食堂街(1994)
朝市食堂街(1994)

朝早く収穫した新鮮な野菜を地べたで売る風情は、朝市そのものだ。男爵いもを茹でるたびに、白い手ぬぐいで頬かぶりしたお爺ちゃんが売ってくれた、美味かったじゃがいもを思い出す。

じゃがいも売り(1995)
じゃがいも売り(1995)

今、朝市には、およそ250の店が軒を連ねる。どんぶり横丁では、イクラやカニ、エビ、ホタテなどの新鮮なネタをのせた海鮮丼が客をひきつける。

英国留学帰りの異色の店主がコーヒーをいれる「十字屋珈琲店」には、国内外からの客が集う。カウンターだけのカフェだが、3日間通ってくれた英国からの親子連れもいた。英語が通じ、味も良く、店主は丸一日、英語だけの日もあるとか。 

英国からの親子連れ(2018)
英国からの親子連れ(2018)

●道案内

函館朝市 函館駅前(地図へ

「ライカ北紀行 —函館—」作品一覧はこちら

    この記事につけられたキーワード

    観光 北海道 函館市 グルメ ライカ北紀行 写真 コーヒー 市場

    西野 鷹志NISHINO Takashi経歴・執筆一覧を見る

    1941年東京生まれ。エッセイスト・写真家。函館中部高校を経て慶応義塾大学経済学部卒。30代半ばで郷里に戻り、函館山ロープウェイを経営する傍ら、日本初のコミュニティFM放送「FMいるか」を創設。北海道教育委員や女子高の理事長、函館のタウン誌「街」の発行人もつとめるなどその活躍は多彩。愛用のカメラ、ライカを肩に北の港街をモノクロで撮り続けて30年。『ウイスキー・ボンボン』『風のcafé 函館の時間』など多くの著書がある。

    このシリーズの他の記事