【朝イカ】漁火通り ライカ北紀行 —函館— 第28回
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「ちっこいけど、けるよ」
浜言葉を分かりやすく訳せば、“小さいが、あげるから持っていけ”。
早朝、函館山の麓の漁港。漁から戻ってきたばかりの船の生け簀から、漁師のおかみさんが、イカをどっさりとポリ袋に入れてくれた。そのなかでキュキュと鳴き、ドンドンと暴れた。
とつぜん現れた朝イカにびっくり顔の女房が、小さくて皮をむくのが面倒だわ、とつぶやきながら、刺身にさばいた。あめ色にすきとおりこりこり感がたまらない。しょうが、うす醤油、ほかほかの白いご飯をおともに、しあわせの一言につきる。
イカ漁が解禁する6月初めからしばらくは、姿は小さく身もうすい。そのあと大きく厚く育ち、イカ刺しの旬は7月なかごろまで。魚は小ぶりがおいしい、大柄ほど大味とは、勝手な思いだが。
日本海側の松前冲あたりにいるイカの群れは、やがて津軽海峡のまんなかに移ってくる。海峡が漁火で輝くころ、イカやイワシを本マグロが追って来る。旬の味わいも変わりゆく。
●道案内
漁火通り 函館バス「啄木小公園前」下車すぐ(地図へ)